本日も消堅排石湯加減弁治を紹介します。高齢かつ水腎症を伴い、手術をためらい、2ヶ月余の中薬治療で遂に完治した症例です。それでは医案に進みましょう。<o:p></o:p>
患者:張某 71歳 男性 初診年月日:1996年8月17日<o:p></o:p>
病歴:患者は4年前、突然に腎絞痛が出現、西医の診断では、左腎と尿管中段に結石あり、左腎積液を伴う。患者は高齢で体虚の為に出術にむかないと判断、中医に治療を求め受診。<o:p></o:p>
初診時所見:患者腰酸痛、倦怠乏力、排尿時に排尿が中断する減少がある、尿検査:WBC8~12個/HP、RBC5~10個/HP、舌質淡苔白厚膩、脈沈にして無力;超音波検査:左腎盂結石一塊、直径3.5mm。左側尿管中上段に結石二塊:直径1.3mmと1.4mm。<o:p></o:p>
中医弁証:腎陽不足 正気虚衰 湿熱薀蓄 血絡瘀阻<o:p></o:p>
西医診断:左腎及び尿管上中段結石、左腎積液を合併。<o:p></o:p>
治法:温腎助陽気化、清熱解毒利湿、通絡排石<o:p></o:p>
方薬:<o:p></o:p>
烏薬(温腎散寒 行気止痛)20g 白芷(解表 祛風燥湿 消腫排膿 止痛)15g 三棱(活血化瘀)15g 莪朮(活血化瘀)15g 金銭草(清熱解毒利尿排石、活血散瘀)30g 海金沙(利水通淋)20g 鶏内金(破積軟堅行気)15g 車前子(清熱利水)30g 瞿麦(活血利水通淋)20g 萹蓄(利水通淋)20g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 威霊仙15g(袪風除湿、通絡止痛、消痰逐飲、軟堅散結) 桂枝(通陽)15g 附子(補火助陽 散寒止痛 回陽救逆)10g 甘草(調和諸薬)15g 以上水煎服用、1日1剤 2回に分服<o:p></o:p>
経過:患者は服薬70余剤、結石全部排出、超音波検査で積液消失。追跡調査1年余状態穏定再発なし。<o:p></o:p>
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ドクター康仁の印象<o:p></o:p>
見事な治療結果でした。白芷は恐らく今までの張琪氏の腎病医案では最初に登場ししたと思います。(風寒)頭痛によく効く生薬です。川芎茶調散は有名な白芷が配伍された方剤です。本案では「消腫排膿」の効能に着目したのでしょう。前報(373報)に続いて、威霊仙が再び出現しましたね。中国の民間療法では、硬い魚の骨が咽や食道に刺さった場合に威霊仙を煎じて飲むと骨が溶けるとされます。軟堅散結消腫作用は、特殊な腎病に対して、あるいは抗癌生薬として用いられています。鶏内金は鶏の砂嚢の内膜ですが、近年価格が高騰しています。当医院の趙博士のお話では、鶏内金は威霊仙と同じ発想で、抗癌生薬として注目され、抗癌製剤に多く配合される生薬の一つになったのが価格高騰の理由だとのことです。私は、焼き鳥の砂肝(すなぎも)人気のためかと漠然と勘違いをしていたのですから、世事に疎かった訳です。<o:p></o:p>
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2014年6月2日(月)<o:p></o:p>