前案375報よりさらに古い1977年の症例をご紹介します。患者の職業は奇しくも前案と同じ党幹部です。方薬には石葦(利水通淋、止咳 涼血止血)車前草(清熱解毒)が配伍されています。<o:p></o:p>
患者:李某 54歳 男性 党幹部 初診年月日:1977年6月10日<o:p></o:p>
病歴:平素健康、1997年新年会で突然右腰から右下腹部にかけて引っ張られるような激痛が生じた。耐え難いような激痛発作は毎回20分ほど続き、排尿困難もあった。当時の尿検査では赤血球(RBC)満視野/HP。ハルピン市某病院でのレントゲン撮影で、右腎盂に2.0mmx3.5mmの結石陰影があった。患者は手術に同意せず、張琪氏外来を受診した。<o:p></o:p>
初診時所見:患者の体質は比較的健康、高血圧やその他の疾患の病歴無し。舌質淡紅苔薄苔、脈象沈滑。<o:p></o:p>
中医弁証:湿熱薀積下焦、尿液を灼焼し、凝結成石<o:p></o:p>
西医診断:左腎盂結石<o:p></o:p>
治法:清熱利湿、消堅排石法<o:p></o:p>
方薬:金銭草(清熱解毒利尿排石、活血散瘀)75g 萹蓄(利水通淋)20g 瞿麦(活血利水通淋)20g 石葦(利水通淋、止咳 涼血止血)20g 車前草(清熱解毒)15g 滑石(清熱利湿 下焦湿熱の要薬)20g赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)20g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 甘草(調和諸薬)10g 以上 水煎、毎日2回に分服<o:p></o:p>
二診:6月25日。服薬15剤で、著明な症状は無かった。6月の初発から今まで腎区の絞痛の発生は無く、小便は平時やや量が増加し、絞痛発作が無いために仕事に復帰して休息は取らなかった。前方を継続服用。<o:p></o:p>
三診:7月20日。さらに服薬20剤で、腎区の周囲の絞痛発作があり、小便に砂石の小塊が数個排出し、疼痛消失、小便通利となった。レントゲン検査で結石陰影は消失、停薬するように言った。当年11月7日再診したが、再発は無し。<o:p></o:p>
ドクター康仁の印象<o:p></o:p>
前報(375報)と比較してみると、体質的に問題が少ないこともありますが、使用生薬数が少なく、9生薬となっています。372報(2001年)の消堅排石湯:金銭草50g 三棱15g 莪朮15g 鶏内金15g 丹参20g 赤芍15g 紅花15g 牡丹皮15g 瞿麦20g 萹蓄20g 滑石20g 車前子15g 桃仁15gの14生薬(甘草を加えて)に比較すれば、年代が近年に近づくにつれ生薬数が多くなっていますね。本案では鶏内金 三棱 莪朮 丹参 牡丹皮の配伍がありません。単純明快な処方ですね。<o:p></o:p>
石葦(利水通淋、止咳 涼血止血)は氏が消堅排石湯と銘打っている自創方には配伍されていないようです。しかし、本案(376報)にも前案(371報 373報)にも配伍されていますので、加減の範囲なのでしょう。<o:p></o:p>
本案では車前子(清熱利水通淋)ではなく車前草(清熱解毒 利水滲湿薬に分類)15gが配伍されていますね。オオバコの成熟種子が車前子、全草が車前草です。氏の消堅排石湯は当初は車前草で、後に車前子に進化したのかと思いました。<o:p></o:p>
しかし、つじつまが合わないことには、中国語で「按」と表記される「小解説」には車前草ならず車前子とあるのです。どちらを信用すればいいのでしょうね。<o:p></o:p>
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2014年6月4日(水)<o:p></o:p>