前案より1年後の1981年の症例をご紹介します。近年の消堅排石湯に配伍される鶏内金が登場してきます。丹参や紅花なども配伍されるようになり、より近年の消堅排石湯組成に近づいて来ています。<o:p></o:p>
患者:孫某 初診年月日:1981年7月15日<o:p></o:p>
病歴:患者は北京で在学中であったが、突然6月10日に左側腰部の激痛が生じ、某病院で検査をしたところ、腎盂に結石が一塊あり、中薬を20剤服用したが、結石は排出されなかった。ハルピン市に氏の治療を求め来院。小便黄を除いて他に異常所見無し。<o:p></o:p>
方薬:金銭草50g 三棱15g 莪朮15g 丹参20g 瞿麦20g 萹蓄20g 赤芍15g 鶏内金15g 紅花15g 牡丹皮15g 甘草10g 水煎、1日1剤2回に分服<o:p></o:p>
経過:連続して上方服用30剤で結石が一塊排出された。小豆大で表面は光滑であった。この後、治癒と判定した。<o:p></o:p>
ドクター康仁の印象<o:p></o:p>
短い医案でしたが、私が注目したのが、排出された結石の表面が滑らかで光沢があったという記載です。尿路結石は成分分析から、大まかに尿酸結石、シスチン結石、リン酸結石、シュウ酸結石などに分類されますが、小豆大で表面が、光沢があり滑らかな結石は稀です。自然排出された標本は数多く見てきたつもりですが、本案の医案の形状を示す結石はまず稀です。殆どが、表面が棘状になっているか、凸凹のある結石でした。本案では前医の処方も含め、計50剤の中薬治療が行われています。そこで、あくまで想像ですが、結石を溶解する成分が含まれていたのではないかと思います。375報には「小豆大の排石があり、尖端は既にバター状で、溶解を示していた」との記載があります。しかし375報の方薬には鶏内金の配伍はありません。375報(1978年の症例)の方薬は、金銭草(清熱解毒利尿排石、活血散瘀)50g 萹蓄(利水通淋)20g 瞿麦(活血利水通淋)20g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)20g 三棱(活血化瘀)15g 丹参(活血化瘀)20g 車前子(清熱利水)15g 川木通(苦/寒 泄熱利水通淋)15g 莪朮(活血化瘀)15g 牡丹皮(清熱活血涼血 退虚熱)15g 甘草(調和諸薬)10gであり、本案の方薬組成との違いは、本案には鶏内金、紅花の配合有り、木通 車前子の配合無しです。短絡的に、鶏内金には結石の溶解作用は無いとは言えないでしょうね。諸薬が体内で代謝され尿中に排泄されるのですから、もっと疫学的な統計処理が判断上欠かせませんね。<o:p></o:p>
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2014年6月6日(金)<o:p></o:p>