今回の医案は、生理痛と経血に血塊を伴う腰痛 頻尿 冷えを伴う症例です。無菌性膀胱炎の範疇に入ります。<o:p></o:p>
患者:張某 36歳 女性 初診年月日:1996年9月4日<o:p></o:p>
病歴:当該患者腰痛、時に尿漏れ、頻尿、下腹部下垂感を伴う冷え、月経時に下腹部疼痛、経血に黒い血塊が混じる。手足が冷え、舌淡紅、舌体大、脈沈。多数の尿検査陰性。<o:p></o:p>
中医弁証:冷淋合併胞宮寒湿証<o:p></o:p>
西医診断:尿道総合症<o:p></o:p>
方薬:橘核(行気散寒止痛)20g 益智仁(温脾開胃摂唾、温腎固精縮尿)20g 附子(補火助陽 散寒止痛 回陽救逆)10g 桂枝(通陽)15g 茯苓(健脾利水)15g 烏薬(温腎散寒 行気止痛)15g 茴香(理気和胃 散寒止痛)(桂枝 茴香は協調して温補腎陽、行気利水に作用)15g 当帰(養血活血)20g 補骨脂(辛苦大温 補腎壮陽 温脾止瀉 固精縮尿)15g 山薬(益気健脾養陰)20g 延胡索(活血行気止痛)15g 川芎(活血行気、祛風止痛)15g 艾葉(温通経脈、寒湿を除き、冷痛を止める作用があり、よく当帰、香附子などを配伍して使用する)10g 麦門冬(養陰)10g 天花粉(養陰清熱利咽)10g 甘草15g: 七剤、水煎服用<o:p></o:p>
(附子 桂枝で通陽温腎助陽、補骨脂で補腎助陽の他、橘核 茴香 延胡索 川芎 艾葉の温薬が目立ちます。温めて祛湿、止痛するという手法です。麦門冬、天花粉は温薬による傷陰の防止的な目的で配伍されたのでしょう)<o:p></o:p>
二診:1996年9月11日。<o:p></o:p>
上方服用後、腹部の下垂感、頻尿は顕著に減軽、まだ、下腹部の冷感あり、腰周りが冷える。前方加減した。<o:p></o:p>
方薬: 橘核20g 益智仁20g 附子10g 桂枝→肉桂10g 茯苓15g 烏薬15g 茴香15g 当帰20g 補骨脂15g 山薬20g 延胡索15g 川芎15g 艾葉10g 甘草15g 香附子(疏肝理気、調経止痛 婦人科の要薬)15g:七剤、水煎服用、毎日二回に分けて服用<o:p></o:p>
(桂枝を肉桂に変えて、より温裏効果を増強させました。香附子は婦人科の要薬です)<o:p></o:p>
三診:1997年9月18日。<o:p></o:p>
上方服用後、上述症状は顕著に好転、(しかし)月経に血塊あり、下腹部に索状物を触れ、触ると痛みがある。前方を基礎に加味した。<o:p></o:p>
方薬:橘核20g 益智仁20g 附子10g 肉桂10g 茯苓15g 烏薬15g 茴香15g 当帰10g 補骨脂15g 山薬20g 延胡索15g 川芎15g 艾葉10g 甘草15g 香附子15g 三棱15g 莪朮15g 紅花15g 桃仁15g 木香7g 川楝子20g 吴茱萸(頭痛や下腹部の冷痛に効果があります。散寒燥湿といい寒湿を除く作用があります。)10g:七剤、水煎服用、1日2回に分服。 遂に快癒した。<o:p></o:p>
(三棱15g 莪朮15g 紅花15g 桃仁15gは全て活血化瘀薬です。行気薬の木香7gや川楝子20gの配伍は延胡索を中心にして考えると分かりやすいのです。延胡索の性味は辛散、温通で、活血行気することもできます。良い鎮痛効果があるので、全身の疼痛に用います。気滞血瘀による消化管系の痛みには木香や川楝子を配合し(金鈴子散)、また冷えを伴う痛みには茴香を、生理痛には当帰、川芎、白芍、香附子などを配伍氏、側胸痛には栝萋、薤白、鬱金、烏薬などを、全身の血滞による疼痛には、当帰、桂枝、赤芍などを、配伍して使用します。)<o:p></o:p>
ドクター康仁の印象<o:p></o:p>
徹底的に温薬を配伍していますね。寒薬は川楝子のみです。三棱 莪朮 紅花 桃仁を婦人科系に使用すると過多月経がくると警鐘する物書き屋の日本の漢方医がいますが、私はそのような経験はありません。<o:p></o:p>
温腎助陽、温経活血、温裏行気等と、あらゆる温薬のオンパレードですね。やはり、温薬は効き易い印象です。<o:p></o:p>
<o:p> </o:p>
2014年5月27日(火)<o:p></o:p>
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます