消堅排石湯は張琪氏の自創方であり、組成は金銭草(甘淡/平 利水通淋、除湿退黄、解毒消腫)50~70g 三棱(活血化瘀)15g 莪朮(活血化瘀)15g 鶏内金(破積軟堅行気)15g 丹参(活血化瘀)20g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)15g 紅花(温経活血)15g 牡丹皮(清熱活血涼血 退虚熱)15g 瞿麦(活血利水通淋)20g 萹蓄(利水通淋)20g 滑石(清熱利湿 下焦湿熱の要薬)20g 車前子(清熱利水)15g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15gから成ります。それでは、医案に進みましょう。<o:p></o:p>
患者:趙某 初診年月日:2001年4月24日<o:p></o:p>
病歴:三ヶ月前、明らかな誘因もなく、突然腰痛が出現、痛みに耐えかねず、某医院受診、超音波検査にて左側腎盂内に直径6.2mm、6.6mmの2個の結石、右側腎盂内に直径4.8mmの結石が発見された。平滑筋弛緩薬、止痛薬、抗生物質、ウラリット等治療を受け、絞痛発作はおさまったが、結石そのものに変化無く、遂に張氏の病院を受診。<o:p></o:p>
初診時所見:患者腰酸痛、尿黄便干、舌苔黄、脈滑数<o:p></o:p>
中医診断:湿熱蘊結下焦 西医診断:双腎結石<o:p></o:p>
治法:清利湿熱 行気活血 軟堅化石<o:p></o:p>
方薬:消堅排石湯:金銭草50g 三棱15g 莪朮15g 鶏内金15g 丹参20g 赤芍15g 紅花15g 牡丹皮15g 瞿麦20g 萹蓄20g 滑石20g 車前子15g 桃仁15g 以上水煎服用 1日2回に分服<o:p></o:p>
二診:2001年5月8日。上方12剤服用にて、二塊の結石が排出された。尿RBC5~7個/HP、超音波検査にて左側腎盂にはまだ直径5mmの結石が残存しており、腰酸痛、舌苔黄、脈滑数。前方を継続する。<o:p></o:p>
三診:2001年5月23日。服薬14剤で腰酸痛減軽、超音波検査で腎盂結石は消失しており、尿RBC1~3個/HP、停薬した。日常水分を多く飲むように言い、10月再度超音波検査施行、結石の再発は無し。<o:p></o:p>
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ドクター康仁の印象<o:p></o:p>
消堅排石湯の主薬は金銭草ですが、文献上はじめて記載されたのが「本草綱目拾遺」であり、性は微寒とされますので金銭草と色分けしなくてはなりませんが、近年の清書では平とされていますのでグリーンに表記してきました。「本草綱目拾遺」では「祛風治湿熱」「治白濁熱淋玉茎腫痛」と効能が記載されており、「清熱解毒利尿排石、活血散瘀」の尿路結石治療効果が確認されたのは近代になってからです。<o:p></o:p>
私個人では58歳男性の「白濁熱淋玉茎腫痛」に著効した経験があります。<o:p></o:p>
三棱 莪朮 鶏内金は軟堅行気に、赤芍 牡丹皮 丹参 紅花は化瘀散痛消腫に、萹蓄 瞿麦 滑石 車前子は清熱利湿に作用し、協調し溶石、排石の効果をもたらします。<o:p></o:p>
結石が大きく排出困難な場合には、穿山甲 皂角刺を加味し、病程が長く、腎陰虚の証を合併すれば、熟地黄 枸杞子 山茱萸等を、腎陽不足には肉桂 附子 茴香を、気虚には黄耆 党参を加味すると排石が可能になる場合があります。<o:p></o:p>
病程が長く、反復感染を起こすものは、多くは腎陽不足、気化効能不足、湿熱毒邪薀蓄不除によるものであり、消堅排石湯を基礎にして、附子 桂枝 肉桂を加味し温陽を以って気化を助け、薏苡仁 敗醤草 金銀花 連翹等の利湿清熱解毒の剤を加味すると良い結果が得られると張琪氏は述べています。<o:p></o:p>
「清熱利湿」「活血行気」「軟堅化石」は結石の基本治療と言えるでしょう。本案は基本に忠実な典型例です。<o:p></o:p>
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2014年5月31日(土)<o:p></o:p>
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