?燕勤氏医案 脾虚湿濁蘊結案
早期尿毒症の治療例
(江蘇中医 1997年第3期より)
Key Words:慢性腎炎 慢性腎不全 尿毒症 漢方治療
患者:陳某 60歳 女性 農民
初診年月日:1996年6月24日
入院時診断:慢性腎炎 慢性腎不全(尿毒症早期)
検査所見:
神疲乏力 納差(食欲不振) 悪心嘔吐 大便1日1回、偏干、腰酸膝軟、下肢浮腫、舌淡紅紫気あり、苔黄?、脈細滑。
BUN 38mmol/L(=228mg/dl) Cre 459μmol/L(=5.2mg/dl)
中医弁証:
脾虚湿濁蘊結、日久化熱
治則:
化湿泄濁法
処方と経過:
蒼朮10g川厚朴10g 生薏苡仁10g 藿香10g 佩蘭10g 法半夏10g 陳皮10g
姜竹茹10g 蘇葉蘇梗各10g 車前子20g(包煎) 六月雪30g 丹参10g 制軍(大黄)5g
上記方薬を服薬と同時に「中薬保留灌腸」を行った。
5剤服用灌腸後に症状に改善の兆し有り、但し舌苔まだ厚?。
上方に以下を加える。
砂仁 白蔲仁(白豆蔲)各10g
継続服用7剤で諸症緩和、舌苔薄白、
再度、標本兼顧目的で、益気扶生 化湿泄濁とする
処方:太子参15g 連皮茯苓20g 蒼朮白朮各10g 枸杞子10g 川続断10g 桑寄生10g 半夏10g 陳皮10g 車前子12g(包煎) 澤瀉 沢蘭各20g 六月雪30g 白花蛇舌草30g
服用14剤後血液生化学検査:
BUN8.3mmol/L(=49.8mg/dl) Cre291μmol/L(=3.2)
病情は穏定し、以後は外来治療にするとして、退院となった。
評析
?氏は慢性腎不全治療で化湿泄濁法の運用を重視する。常用するのは、藿香 佩蘭 生薏苡仁 蒼朮、白朮、川厚朴、陳皮、砂仁、白蔲仁、半夏、白花蛇舌草等である。
臨床の随症加減:
湿鬱化熱者:黄連 竹茹で清化湿熱
悪心の酷いもの:炒子芩 蘇葉 蘇梗 竹茹
大便秘結のもの:制大黄を3gの少量から開始
或いは、大黄 牡蠣 蒲公英 六月雪等で保留灌腸の主方として通腑泄濁する。
久病入絡、腎絡瘀阻、舌に瘀斑、瘀点のある者:丹参 桃仁 赤芍 益母草を加え、活血和絡泄濁する。
浮腫:車前子 連皮茯苓 澤瀉 六月雪を以って滲利泄濁する。
ドクター康仁のコメント
ともかく外来治療できるまで改善させた経過です。
BUN 38mmol/L(=228mg/dl) Cre 459μmol/L(=5.2mg/dl)を
それぞれ49.8mg/dl 3.2mg/dlにまで下降させたのですから、立派な仕事です。
臨床の医師を職人と考えれば、技術を伝統として後輩を育てる「ものつくり」の職業です。
かつて「ものつくり大国」と尊敬された日本は「アウトソーシング」により、産業の空洞化が生じました。
医師の世界も同じことです。医師もアウトソーシングで安く手に入れば、医業は経営本意で中身は空洞化となるでしょう。
「急がば回れ」という言葉が日本には確かに存在していた頃が有りました。
ところが、
「聞いてるだけで~が出来るようになる」の類の教材が馬鹿売れし、
「貴方の知らない家庭の医学」などというマスコミが高視聴率をはじき出し、
「これで貴方は救われる」という浅はかな医学書もどきの本が馬鹿に売れ、
「マスコミ受け狙い」の粗製乱造の学者が出現し、
どこかの前教授のように欧米紙に発表した臨床論文を全面撤回するということはざらにあり、、。
職人の世界から、単に「受け狙い」のお笑い芸人のようになってきつつありますね。
一発芸で何年もメシが食えるほど芸能界も甘くはないのにです。
2013/04/29(月) 記