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慢性腎炎の漢方治療 第104報 慢性腎不全の漢方治療 医案12

2013-04-18 00:15:00 | ブログ

劉茂甫氏医案 脾虚湿盛 水湿泛胃案

急即治標 緩即治本とは?

?西省名老中医経験?萃より)

患者:李某 62歳 男性

病歴

1983年11月26日全身疼痛、発熱(38.3℃) 尿蛋白(2+)(診断までの経過は記載されていませんが)流行性出血熱の疑いで李氏の病院の伝染病科に入院した。入院後は抗感染治療にて、解熱して体温は基本的に正常になり、その後の検査で、出血熱は除外診断されたが、下肢の浮腫、腹水、尿蛋白の増加(3+)、腎もまた受損、125日中医科と内科が会診し、(その結果)中医科治療に転ずることになった。

中医内科転科後の経過

両側下肢の浮腫が加重、腹水は継続的に増加、尿蛋白(4+)、尿中には白血球、赤血球、顆粒円柱が均しく出現していた。白血球12500と増加、好中球82%;C02CP55.8容積%、BUN 56.5mg/dl

患者には腎炎の病歴があることから、慢性腎炎高窒素血症と診断。転科後、尿量は継続的に減少、腹張加重、悪心嘔吐が出現して、抗感染と利尿剤の治療のほかに、中薬を服用、大黄牡蠣の灌腸治療を受けた。

その後氏の病院の党幹部専用の特別病棟に移り治療を受けることになった。白血球は減少して6400、血清総蛋白は4g/dl 尿蛋白(3~4+)とやや増加、BUNは減少せず、56.5mg/dlのまま、そこで劉氏の会診を請うた。

劉氏会診時中医診断

氏は腹張、納差、尿少、欲嘔、脈象沈渋、舌淡無苔を根拠にして、脾虚湿盛 水湿泛胃に到ったものと診断した。

治則:燥湿和胃 兼 淡滲利水

方薬平胃散 加味

蒼朮14g 陳皮12g 川厚朴12g 莱菔子14g 佛手12g 枳殻14g 木黄6g 生山楂14g 雲(南茯)苓14g 澤瀉12g 車前子14g(布包) 通草6g

コメント平胃散((太平恵民和剤局方):蒼朮 厚朴 陳皮 炙甘草

経過

上方を3剤服用したところ、腹水は著明に減軽、精神 胃納(食欲と食べる量)が好転。尿量は増加し始めた。その後7回会診し、2ヶ月後上方の加減を行った。この期間には、西洋薬はビタミン剤と力勃隆コメント:中成薬の一つで、主として鉄欠乏性貧血に用いられる)のほかには、特殊な薬剤を与えなかった。

劉氏再会診時所見1984年2月21日

患者の飲食、二便はともに改善していた。まだ、倦怠感、腰のだるさがあったが、その他の特殊な自覚症状は無く、腹水と両下肢の浮腫は消失していた。

治則:補腎を以って治療する。

方薬:六味地黄湯 加味

熟地12g 山茱萸14g 山薬14g 雲南茯苓15g 牡丹皮14g 澤瀉12g(に加えること)女貞子14g 枸杞子14g 生山楂12g 益母草20g 地骨皮15g 生甘草6g

経過

上方を基礎として加減服用2ヶ月、尿蛋白陰性になり、BUN 21.2mg/dl、明らかな自覚症状が無くなり、全快退院となった。

評析

一般論では、慢性腎炎を治療する際、健脾益気補腎の方法が常用であるが、劉氏は本案を詳しく分析しつくして、虚中の実証であると認識し、病情が急である場合には、急即治標の原則を遵守し、緩即治本の原則にのっとり、燥湿和胃、淡滲利水を以って治標を始め、病情が安定した後に、補腎利水、滋陰活血を治本として用いた。処置は素晴らしく、良効を収めたのである。

ドクター康仁のコメント

劉氏も生粋の中医であり、本案の治療内容を読むと、弁証論治そのものです。

強い囲碁棋士のように、見える、読める、実戦に強いのです。

この類の医案は、多少は誇張があるかもしれませんが、大方は事実であろうと私は思います。クレアチニンの数値記載が無いのが少し不満を感じます。

「急即治標の原則を遵守し、緩即治本の原則にのっとり」とは、現代の町~病院の医者はその意味を間違えているようです。

膝が痛いと言って整形外科に行けば、何枚もレントゲンをとり、NSAIDと胃粘膜保護剤の決まりきった処方。胃が痛くなったと患者が訴えれば、プロトンインヒビッターの追加処方をする。 なんの診察も無しにです。急即治標のみ。

慢性腎炎の治療にしても、先ずは血小板凝集抑制剤、症状が悪化してきたら、ステロイド、或いは免疫抑制剤、或いは三者併用、浮腫んできたら利尿剤、貧血が進んだらエリスロポイエチンの注射の指示、漫然と活性炭を飲ませ、いよいよ透析に入る準備ですねと、“最初診察したきりで、あとはパソコンの画面ばかり見ている医師”のつぶやき、さんざん待たされた結果、「今度の検査結果は1ヵ月後に説明します」のみ。長蛇の列に並んで、薬を貰ってくるだけ。注射の日は診察無し。看護師が注射するだけ。具合が悪くなっても、主治医は代わりましたと一方的な通告に患者はオロオロして、他科併診し、午前中は眼科、翌日の午前中は循環器科、その翌日は血管外科、さらに翌日は脳神経外科で脳のMRI、その翌日は糖尿病外来。無愛想で、機械的な外来受診で、患者の生活の時間は、ただただ浪費されていく。どの先生に、症状を訴えたらいいのか、患者はわからない。緩即治本無し。

食うほどの大量の心療内科の薬剤を持ってくる患者さん。

見えない、読めない、覚えない、覚えていない、の漢方処方を漫然と続ける医師。脈も舌は勿論診ず、その他の診察もしないで、業者の漢方薬一覧表のパンフレットから、あてずっぽうに処方する医師。

支払い基金のレセプトチェックの医師の非常に多い支払い拒否例:

「~の配合の意味がわかりません。」

知らない、解らないのは「貴方の方でしょう」と言いたいが、時間がもったいないので、クレームやコメントは添付しないことにしています。幼子に説法しても始まらないのです。

「おじちゃんはネ、疏肝解鬱和胃降逆泄濁化湿補肝腎という意味で、知らないよね、簡単に説明できないから ごめんね」 時間とエネルギーの浪費、馬鹿馬鹿しくてやっていられません。

数学的に考えれば、たとえば200種類の生薬から15剤を選ぶには、200C15の組み合わせ数になるのです。各薬剤の量の加減を計算に入れれば、ほぼ無数に近い組み合わせになります。レセプトチェックの医師の脳みそは正に、極小に近い状態なのです。点数を減点して点数を稼いでノルマ達成に近いですね。

基本的な弁証をいつも私が強調する理由は、単語も知らない、文法も知らないのでは、挨拶程度は出来るでしょうが、それ以上の会話には絶対に発展しないからです。おっさんのスラング程度にしかなりません。

同じことで、ほぼ無数に近い組み合わせから出鱈目に処方するという(旧日活東宝的喜劇からギリシャ~シェークスピア的)悲劇へと発展し、(医者になれないから)無学文盲はまだ許せますが、診察も無しに無知蒙昧の頭で、生薬治療されたのでは、患者は迷惑至極ということになるのです。

それにしても、「人間は生まれながらにして平等である」ということが、どんなに薄っぺらな「戯言」ことであるかを痛感させられますね。

2013年4月18日(木) 記