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慢性腎炎の漢方治療 第96報 慢性腎不全の漢方治療 医案4

2013-04-10 00:15:00 | ブログ

任継学氏医案 気陽両虚重症水毒証 爵床(土)茯苓湯 治療案

BUN70mg/dl20mg/dlに改善させた重症尿毒症の漢方治療

(当代名医臨床秘訣より)

コメント

まず、爵床jué chuángについて説明します。

1年生草で、高さ1530cmに成長する爵床科 Acanthaceae植物で、茎が方形であり、表面に細く軟らかい毛があるのが特徴です。中国の山、浙江、江、江西、湖北などに自生するか、栽培されています。地上部分の全草を薬用とします。性味は微苦 寒で、清熱解毒、利水消腫が効能の主体で、上海では蛇食草との別称があります。抗菌作用も特徴的で、黄色ブドウ球菌に対しての抑菌、殺菌効能が判明しています。清熱解毒、利水消腫以外の効能と主治は、 感冒発熱 咽喉痛 小儿疳 痢疾 炎,炎水 泌尿系感染 乳糜尿などで、抗菌作用は皮膚の感染性疾患に外用されます。任継学氏お気に入りの生薬です。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130227

Photo

 爵床

患者:柳某 52歳 女性 党幹部 長春市人

初診年月日1987年 9

病歴

水腫陰水症を10余年、ここ2年来、病状が加重、眩暈、悪心嘔吐が反復して頻回に出現するようになり、腹が張り無力倦怠、尿量減少、浮腫は下肢に最も著しく、某病院で中西医の治療を受けたが無効で、任氏の医院を受診した。

初診時所見

顔面蒼黄虚浮、舌淡体肥(体肥とは舌体が胖大という意味です)、舌苔厚?、脈沈濡。血圧160/110mmHg、尿蛋白(3+)、BUN70mg/dl二氧化碳?合力40容積%、

 コメント二氧化碳?合力(CO2CP)参考値(正常域2030mmol/L或いは5070 Vol%)が若干の低下を示しています。一概には断定できませんが、代謝性アシドーシス(血液がやや酸性に傾くこと)の可能性があります。一般的には腎不全になると、腎からの酸の排泄が障害され、更にHCO3-イオンの腎での再吸収障害によるアニオンギャップが増加し、代謝性のアシドーシスが出現します。

以上から、次のような弁証をした。

弁証気陽両虚重症水毒証に属する

治則温陽益気 芳香化濁 解毒消腫

方剤爵床(土)茯苓湯

処方

爵床30g 土茯苓100g 白茅根50g 竹茹15g 車前子15g 澤瀉15g 仙茅15g 茜草15g 枇杷葉30g 藿香30g 附子5g 生甘草5g

経過

上方服用10剤後、病状は著明に好転し、尿量が増し、水腫が減軽、眩暈、悪心、嘔吐は皆消失し、舌色は正常に回復し、脈は沈緩となった。血圧150/100mmHg、BUN 30mg/dl二氧化碳?合力41容積%、さらに10剤を継続投与した。病状は大幅に好転し、諸症は消え、脈証舌色はすべて正常に回復した。BUN20mg/dl(下降してほぼ正常域となり)、二氧化碳?合力50容積%(上昇して正常域下限までアシドーシスが改善され)、病は癒えたのである。追跡調査1年半、病は再発せず、患者は正常な仕事を堅持している。

評析

爵床は清熱解毒、利湿消滞に働き主薬である。土茯苓を配伍し解毒除湿の効果を強める。白茅根は清熱利尿、涼血止血に、茜草を配伍して涼血化瘀止血、通経に作用する。澤瀉は利水滲湿、消腫瀉熱に、竹葉(医案中には竹茹とあります、医案と評析どちらが正しいのか、御一考ください 宿題です)枇杷葉は清熱化痰、除煩止咳に働き、藿香を配伍し芳香化湿止嘔の効果を求め、仙茅は腎に帰り、温腎壮陽、祛寒除湿、附子を配伍して温腎助陽に作用する;甘草は益気補中、清熱解毒、調和諸薬に作用する。

ドクター康仁のコメント

爵床、土茯苓となると任氏のお気に入りの生薬ですね。

枇杷葉は、評析にあるように「除煩止咳」の効能もあるでしょうが、「宣肺利尿」の考えが任氏にはあったのではないかと推測します。

藿香(かっこう)については、以前の「要薬考 附子」の中に「藿香」が補記して有りますので、

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121110

以上の記事をご覧下さい。

中国医案では甘草と記載されている場合は、生甘草を意味することが多いのです。

炙甘草 生甘草 甘草梢 色の変化に気がつきましたか?

竹茹は清化熱痰薬、清化熱痰、除煩止嘔(帰経:肺、胃、胆)

竹葉は清熱瀉火薬、清熱除煩、生津、利尿(帰経:心、肺、胃)

さあ宿題の解答はどちらなのでしょうか?

淡竹葉清熱除煩、利尿もありますよ。帰経:心、肺、小腸、膀胱)

基礎理論の久病挟(湿)痰からすると、やはり竹茹(清熱祛痰)が正解となりますね。

2013410日(水) 記