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慢性腎炎の漢方治療 第102報 慢性腎不全の漢方治療 医案10

2013-04-16 00:15:00 | ブログ

杜雨茂氏医案 脾腎両虚 濁邪上干(?

透析治療から離脱できた症例

(奇難病症指南より)

先ず、タイトルの上干はわかりにくい漢字ですので上溢あるいは上犯と日本の漢字になりますが、中国の簡体文字では?が適します。

患者38歳 男性 農民 ?西省岐山県?祝家の人

初診年月日1990318

病歴

口渇多飲、夜間尿量多7年続いた。倦怠感と悪心がここ2年続き、患者は1983年突然に全身の冷感を覚え、口渇多飲、小便の量が多く、下肢には軽度の浮腫。某衛医院受診し、腎炎と診断され、入院3ヶ月、中西薬の治療を受けたが効果は明らかでなく、田舎に帰って、自分で中薬を服用していたこと5年間、感冒にかかるたびに病状は加重した。

ここ2年、諸症が悪化し、先ず、岐山?の地元の病院に入院して、慢性腎不全 高窒素血症期と診断され治療を受けたが効果は乏しかった。

1990年3月来、上記症状が突然加重。3月初め、西安某医科大学付属病院受診。

BUN54mg/dl Cre 3.9mg/dl 腎シンチグラムでは両側腎の取り込み不足、著明な貧血があり、血色素4.9g/dl1であり、慢性腎不全と診断された。2週間入院し、透析療方を受けたが、症状の改善は無く、患者は退院して瀋陽に来て杜氏の治療を求めた。

初診時所見

口渇多飲 夜間尿が多く(毎晩2000ml)、全身倦怠、眩暈悪心、ザーザーと潮の満ち引きのような耳鳴り、午後潮熱、皮膚掻痒、両下肢と眼瞼に軽度の浮腫、体動後の動悸息切れ、両側腿部の筋肉痛があり、飲食不良、大便の質は軟、便通は1日2回、面色萎黄、舌質淡胖、苔厚?にして黄、辺には剥脱有、脈細にして無力、右寸が甚だしい。

コメント寸関尺の脈診については以前に略記したことがありますが、解釈が難しいので今  回 は解説を省きます。

中医診断

脾腎両虚 濁邪上干の関格の証に属する

コメント:一般の中医用語で関は二便不暢という意味で、尿量少ない、便は偏干で、「少ない、出ない」という意味での使い方をしますが、杜氏は尿量多、下痢を「関」としていますので、その点を補記しておきます。)

治則

健脾益腎 降濁和

処方

西洋参g 茯苓15g 澤瀉15g 虎杖10g(苦寒 活血定痛、清熱利湿、解毒、化痰止咳) 白朮12g 女貞子12g 懐牛膝12g 牡丹皮10g 銀柴胡10g 蘇梗10g 胡黄連g/寒 退虚熱、除疳熱、清燥熱)沙苑子15g(甘温 補腎固精、養肝明目)水煎服用 毎日1剤。

コメント

六味地黄丸の「三瀉」の茯苓 澤瀉 牡丹皮が配合されていますね。

「三補」は覚えていますか? 熟地黄 山薬 山茱萸です。

同じ紫蘇でも、部位により効能が異なってきます。

蘇葉(紫蘇の葉 発表散寒、行気寛中、解魚蟹毒) 蘇子(紫蘇の種 下気消痰、止咳平喘、寛腸潤燥) 蘇梗(紫蘇の茎 寛胸利膈、順気安胎

蘇子降気湯については過去の記事をご覧下さい。

パニック症候群での自験例

http://kojindou.no-blog.jp/happykanpo/cat6868391/

蘇子降気湯と他剤との比較

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121107

虎杖に関しては過去の記事をご覧下さい。

金銭草と虎杖根の比較

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121102

虎杖根の臨床

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20080617

銀柴胡と胡黄連の組み合わせは「清骨散」の発想です。

以前の「虚熱論」をご覧下さい。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20080826