?毓民氏医案 熱毒内蘊 経脈瘀阻案
(遼寧中医1998年第2期より)
患者:王某 8歳 女児
病歴:
皮疹11日、便血2日で(小児科に)入院、四肢と臀部に皮疹がやや多く、出血性の斑点はやや皮膚から盛り上がっていた。?化可松(ハイドロコーチゾン)、?生素C(ビタミンC アスコルビン酸)、青霉素(ペニシリン)、?大霉素(ゲンタマイシン)消炎鎮痛剤などの治療にて、皮疹は漸退し消失したが、尿蛋白(2+)赤血球(30~40)/HP、白血球(4~6)/HP、同病院の中医である?氏の診察を求めた。
?氏診察:
目下、証は同じで、舌紅 苔薄 脈弦細。
中医診断と治療原則:
証は熱毒内蘊 経脈瘀阻に属する。
清熱解毒 活血化瘀
薬用:
金銀花 連翹 大小薊各9g 益母草 白茅根各20g 丹参15g 蝉衣5g 琥珀5g(頓服 甘平 鎮驚安神、活血散瘀、利尿通淋)。
経過:
連続服用2週で、尿蛋白(-)尿赤血球(0~2)/HP、
健脾益気 活血補腎にて治療効果を固めた。
薬用:
生黄耆 生地各15g 益母草 白茅根各30g 五味子3g 丹参 補骨脂各9g
山薬12g
経過:
追跡6年間、最初の6ヶ月間は六味地黄丸を服用し、以後は一切の中西薬物を服用せず、尿検査全て正常、再発無し。
評析
風熱病邪が血分に熱鬱し、瘀血が内阻し、肌膚に血が外溢し、臓腑を内傷し、損傷は腸胃、さらに腎に及ぶ。ただ脾腎を本とし、湿、熱、瘀を標とする。故に本案の治療は、清熱解毒を以ってする。益母草 丹参は活血化瘀に、白茅根 小薊 大薊は涼血止血に、牡丹皮 赤芍は涼血活血に、三七は活血止血(医案中に記載はないが)に働く。
琥珀は、「別録」には「瘀血を消し、通五淋に働く」と記載されている。
現代薬理学の研究によれば、清熱解毒薬はアレルギー反応の傷害を抑制し、活血化瘀薬は血小板凝集を抑制し、腎血流量を改善し、腎損傷の修復を促進し、フィブリン/フィブリンーゲンの繊維蛋白を吸収する。この両者の併用は、紫斑病性腎炎を治療するに当たって有効は配方である。
この他に、紫斑病性腎炎の後期の治療には、常に生命体の免疫力をアップさせ、気道感染を減少させ、再発を防止しなければならない。
コメント:ドクター康仁
コメントに「琥珀は五淋に通じ」と有りますので、淋証について、まとめておきます。
少し、長くなりますので、興味のある方はご覧下さい。
淋証(りんしょう)
淋証とは、小便短渋、排尿不暢、排尿刺痛、排尿後も尿意が絶えず(残尿感)、小腹拘急、或いは痛みが腰腹まで放射する病証を指します。
泌尿器系感染症、泌尿器系結石、泌尿器系腫瘍、前列腺疾患及び乳び尿症の治療には淋証を参照にするといいでしょう。
淋証の分類及び臨床特徴:五つあります。それで五淋といいます。
石淋:尿に砂や石を排出するのを特徴とします。
膏淋:小便は混濁し、米の研ぎ汁様、或いは滑膩で脂膏様を特徴とします。
血淋:血尿を特徴とします。
気淋:小腹脹満、或いは、少腹部下垂感を特徴とします。
労淋:反復発作、疲労時の再発発作を特徴とします。
(1)石淋(せきりん)
(症状)
時に尿中に、砂石が混じり、小便が出にくい、或いは排尿が突然中断され、尿道に疼痛が出現することもある。少腹拘急或いは腰腹部が絞りつけられるような、耐えられない痛みが出現し、肉眼的血尿が認められ、舌紅、苔薄黄、脈弦或いは数である。慢性化して、砂石が排出されなければ、顔色に艶がなく、精神不振、少気無力、舌淡、辺縁歯痕、脈細かつ弱、或いは腰腹隠痛、手掌、足底に熱感があり、舌紅少苔、脈細数などが見られる場合もある。