?振声氏医案 湿熱久鬱不解 ?蒸痰濁 蒙蔽心包案
(江蘇中医雑誌 1986年 第9期より)
Key Words:慢性腎不全 高血圧症 尿毒症 漢方治療 菖蒲鬱金湯
患者:石某 46歳 男性
入院年月日:1983年2月28日
入院時所見:
眩暈、頭痛、精神疲弊、腰痛無力、悪心嘔吐、食欲不振、口が粘り甘みを感じる、口臭強し、口が渇くが飲みたがらない、大便粘り排便にて爽快感無し、小便は少なく灼熱痛がある、唇は乾燥し、舌は胖大、苔黄?、裂紋あり、脈弦滑やや数。
血圧26.6/15.2kPa(200/114mHg)、ヘモグロビン5.2g/dl
BUN 47.1mmol/L(283mg/dl)、Cre 1025.44μmol/L(11.6mg/dl)
二酸化炭素結合力17.96mmol/L
診断:
慢性腎炎 高血圧型 慢性腎不全 続発性(腎性)貧血
?氏中医治療に到るまでの経過:
入院後中薬湯服用、血液透析施行、酸塩基平衡是正、少量の新鮮血液輸血を行ったが、症状の改善は少なく、
3月17日に尿量は450mlに減少、
3月24日 発熱煩躁し、黄痰を吐く。
WBC14700、好中球0.80好酸球0.22リンパ球0.18 体温37.4℃
右肺に湿性ラ音を聴取、氨?青霉素(合成ペニシリンの一種アンピシリン)の点滴静脈注射を一週間行ったが、コントロール不良であり、
4月1日、尿量は継続して減少、患者は極度の煩躁状態になり、意識レベルが低下し、譫妄状態となり、喉には痰が絡み、甚だしくは循衣模床(空中に手をのばし物を掴むしぐさなど)となり、苔はなおも黄?であった。
コメント:
循衣模床は古くは傷寒論 陽明病の陽明腑実症の用語です。
日本はその頃「卑弥呼」の時代です。
大承気湯証:心下痞鞕、腹満して少しも軽減しない、臍周囲痛、大便燥結、便秘、熱結傍流のため時に排便する、
日晡潮熱、持続微汗、心煩懊悩、譫語 何かに取り付かれたように独り言を言う、意識混濁により人を識別できない、循衣模床、微喘直視、言語必乱、脈沈遅実大(脈証は典型的でない)、舌質紅、舌苔老燥、焦裂起刺
治療は通因通用にて急下存陰をはかる。
本案の場合には熱盛タイプの尿毒症による意識障害の表現として使用されています。
中医診断:
湿熱久鬱不解 ?蒸痰濁 蒙蔽心包の証である
治則:
菖蒲鬱金湯を用いて、清熱利湿し、豁痰開竅する。
処方:
石菖蒲 鬱金 山梔子 竹葉 牡丹皮 連翹 菊花 牛蒡子各10g 滑石15g 生姜3g
玉枢丹2g
コメント:
注目すべきは、上記の処方にはいわゆる補薬は一切有りません。
玉枢丹(百一選方):山慈姑 続随子 大戟 麝香 雄黄 朱砂 五倍子
効能:辟穢解濁、利気宣壅
山慈菇、雄黄、五倍子で辟穢解濁、麝香で通竅開閉、続随子、大戟で瀉下逐邪の効能を求めます。硫黄や天然水銀塩などは現代の日本人の感覚では受け入れられないでしょうね。現代中国でも製造禁止と聞き及んでいます。
山慈姑