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慢性腎炎の漢方治療 第111報 慢性腎不全の漢方治療 医案19

2013-04-26 00:15:00 | ブログ

?中氏医案 気虚挟湿熱案

(中医腎病臨床?萃より)

Key Words:慢性腎炎 慢性腎不全 漢方治療 

患者邸某某 49歳 男性

病歴

198812月に疲労が累積した後に倦怠無力感、眩暈、悪心嘔吐が出現し、地元の吉林省延安市の病院を受診、血圧190/140mmHg Cre 5.22mg/dl BUN 33.05 mg/dl; 尿ルーチン検査で尿蛋白(2+)、腎シンチグラムで両側腎の高度機能傷害が発見され、慢性腎炎(高血圧型)、慢性腎不全と診断され、中西薬物治療を受けたが無効、19895

氏の病院に入院となった。

コメント:確かに腎不全は有りますが、悪心嘔吐 眩暈は腎不全によるものと、加えて、高血圧性脳症に近い機序で発生した可能性もあります。Cre,BUNがさほど高い症例でないからです。

入院時所見

患者は極度に無力、納呆、悪心嘔吐、煩熱、口干欲飲、大便は軟、夜尿多し。

倦怠感、面色萎黄、舌やや暗苔やや黄?,脈沈弦、中取大沈取。(脈診で中取が沈取よりも強い意味です)

検査所見

Cre3mg/dlBUN71.1mg/dl、血圧220/118mmHg 腎シンチグラムで両側腎重度の受損。

中医弁証:証は気虚挟湿熱に属する

治則健脾益気 清化湿熱

処方

党参15g 蒼朮白朮10g 茯苓30g 甘草6g 法半夏12g 皮陳皮10g

広木香10g 砂仁6g 竹茹10g 黄連3g 黄芩10g

経過

4剤服用後、悪心嘔吐消失、胃納は次第に改善。12剤後、1日の食事量は増加して60gまでになった。但しなお疲労感、眩暈、血圧160/110mmHg、脈中沈取弦滑やや数。

診断と治則

脾胃気虚、陰虚?在、脾虚即ち肝乗、故に平補脾胃気陰、平肝を持って助けとする法に改めた。

処方

西洋参10g(別に煎じて煎じ液を後で全体の煎じ液に混入させて服用)10g 白朮10g 茯苓30g 生甘草g蓮子肉15g 山薬15g 白扁豆15g 薏苡仁30g 砂仁6g 青陳皮10g 桔梗10g 大棗10g 漢防己15g 草决明(=决明子15g 青木香15g

 コメント:草决明(=决明子)は植物の種子、石决明はアワビの貝殻の粉末で鉱物

共に平肝熄風薬に分類されます。降圧剤と平たく考えてください。

経過

7剤服用後、眩暈、乏力は引き続き減少、血圧も次第に下降。以上の治療を継続し、夜間の尿がやや多いことを除いて、倦怠感、食欲不振、悪心嘔吐、煩熱、口干欲飲、軟便などの諸症は消失し、Cre 0.6mg/dl BUN 24mg/dl 血圧150/100mmHg,

二酸化炭素結合力は40.3容積%になり、慢性腎不全は最近寛解し、1989728日退院となった。

評析

本案の患者の弁証は気陰両虚に属し、脾虚は肝乗によることから、補脾と同時に平肝を補佐とする法となる。方薬は先ず、香砂六君子湯加竹茹 黄連 黄芩を以って健脾益気、清化湿熱し、悪心嘔吐が止むのを待って、納食が転佳した後に、参苓白朮散と平肝飲に改め、以って平補脾胃気陰、平肝を補佐とした。

本案は、まず、調理脾胃に着眼し、清化湿熱を以ってその標実を治療し、続いて、平補脾胃、調肝を補助としてその本虚を治療し、秩序ある思路は明晰である。

一点を挙げれば、方中の青木香、漢防己には均しく??酸(アリストロキア酸)を含む中薬であり、「現在既に証明されていることであるが」、大量長期投与により重い腎機能障害を惹起しうるので、臨床使用には十分な慎重さを要する。

ドクター康仁のコメント

??酸(アリストロキア酸)による腎傷害については、日本薬局方で承認確認されている生薬は問題がないのですが、個人輸入薬や「痩せ薬」の中に混入されている場合があります。木香 細辛 木通 防己などの含まれる薬品を個人輸入する場合には十分に注意してください。

日本の大手の漢方薬メーカーの上海製造工場に見学に行ったことが有ります。日本人の潔癖さは徹底していますので、委託栽培と品質管理は徹底しています。心配は要らないでしょうが、一般の中国市場には見分けのつきにくい生薬が多い、つまり、出目がわからないものも多いのが事実です。中国政府も改善に取り組んでいますが、混入は防ぎえません。

金の動くところには「裏稼業」が絶えない中薬センザンコウの密輸事件

フィリピン西部パラワン島沖合の世界遺産ツバタハ環礁で4月8日に座礁した中国漁船から、絶滅危惧種の珍獣センザンコウ約12トン分が、冷凍された状態で見つかりました。フィリピン沿岸警備隊が16日までに地元メディアに明らかにしたそうです。

センザンコウはうろこに覆われた哺乳類で、アリを食べます。ワシントン条約で取引が規制されていますが、(肉は食用)うろこは漢方薬として中国で需要があり、闇市場で1キロ1万1千円前後の卸値価格で売買されているといいます。

思うに、肉は富裕層のステイタスシンボルで、ウロコは薬用です。

センザンコウは今までの医案でも登場しました。船一艘で、闇市場で13000万、市中価格では4倍とすれば、5億円以上になります。需要がなければ売ることは成立しませんが、需要がある限り、密漁、密輸が絶えません。氷山の一角です。

禁酒法時代のアメリカを思い出して下さい。人間の性(さが)を禁じる法律の裏には、密造、密輸、売春産業、賭博業、麻薬産業などの抜け道裏稼業が必ず張り付いてきます。

医療メディアも同じことです。

生れ、老いて、病んで、死ぬ 4文字熟語で生老病死です。

生れた以上、老いず、病まず、死にたくないのが人間の業ともいえる欲です。

メディアを席捲している表稼業もありますね。

老いませんよ、治りますよ、死なないですよ と力(りき)んで囁いているではありませんか。

平肝飲については「多紀櫟窓」には以下の処方が記載されていますが、同じ平肝飲であるのかどうか?評析にも解説がありませんので確定は出来ませんが、以下に記載しておきます。
「柴胡 芍薬 香附子各4.0g 青皮 別甲 檳榔子 莪朮 呉茱萸 甘草各2.0g

案中の草决明(=决明子)が配合されていませんし、なによりも柴胡の配合が本案にはありませんので、別物でしょう。疏肝理気(行気)活血が主体の方剤です。平肝という名はふさわしくありません。

2013/04/26(金) 記