アンプ大名鑑(フェンダー編)

2014-09-15 17:24:56 | Music Life


ギターアンプというと、日本では住宅事情のせいで「置き場所がない」とか「大きな音が出せない」とか、ついそういった話になりがちだし、VOXのAmplugみたいなヘッドフォン・アンプが進化しているということもあって、今となっては「無用の長物」的な扱いを受けたりもするが、こうした事情はどこかに置いて、せめて本の中だけでも、心ゆくまでレオ・フェンダーが残したギターアンプの素晴らしさを堪能したいもの。

この本はトム・ウィーラーが著した「The Soul of Tone : Celebrating 60 years of Fender Amps」の邦訳で、スペースシャワーブックスが限定2000部で出したもの。「アンプ大名鑑(フェンダー編)」という邦題になったのは、少し前に出した「フェンダー大名鑑」にあわせたのだろう。両者とも網羅的な内容なので、それはそれで「大名鑑」と呼ぶにふさわしいものではあるが、姉妹編とすることでクロスセルを狙った販売戦略という面もあるわけ。

それはともかくとして、ギターアンプの本を構成する要素には、一般的にいって1.回路図、2.スペック、3.ヴィジュアルなどがあり、これらの諸要素のうちどれを重視するかによって、その本が自作マニア向けなのか、フルオリ志向のコレクター向けなのか、あるいはギターアンプの機能美を鑑賞するのが趣味の好事家向けなのかが決まってくる。

それでは「アンプ大名鑑」はどこをターゲットとしているかというと、先述の3要素でいえば、回路図は掲載されていないので自作マニア向けの本でないことは明らかである。その意味ではコレクターや好事家向けではあるのだが、ソリッドステートよりもチューブ、プリント基板よりもP to P配線、現行品よりもヴィンテージがよいと思っていたり、あるいは全体を見ないでコンデンサのようなパーツにだけ異常なこだわりを見せたりするようなコレクターに対しては批判的である。

実のところこの本はフェンダーの60年におよぶアンプ開発史に加え、そのアンプから放たれた音にどれだけの人が魅了されてきたかを物語るものであり、それらを開発に携わった人々の証言やフェンダーのアンプを愛用しているミュージシャンたちのコメントを数多く集めることによって語らせたところに最大の特徴があると言えるだろう。そのぶん分厚くなっているが、興味深い話が多いので楽しく読むことができる。
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