小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

完全なる飼育(下)

2019-04-03 04:29:25 | 小説
翌日、京子は、友達の、順子に会いに、順子の家に行った。
順子からの、メールは、哲也、立ち合いで、返信メールを送っていたが、実際に、会って、長く、家を空けているけれど、ちゃんと居る、という、アリバイを、作っておきたかったからである。
「やあ。順子。久しぶり」
「京子。この頃、あんまり、見かけないけれど、どうしたの?」
「へへへ。それは、ちょっと秘密。ちょっと、用事が会って、大阪の、友達の家に、いるの。今日、またすぐ、大阪にもどらなければならないの」
「そうなの。それを聞いて、安心したわ」
そして、京子は、少し、雑談して、順子のアパートを出た。
そして、なじみの、スーパー、にも、行って、買い物をして、京子の、高校時代の同級生で、レジで、パートで働いている店員の美津子に、ニコッ、と、会釈した。
「あら。京子。久しぶり。この頃、あんまり、見かけないけれど、どうしたの?」
「へへへ。それは、ちょっと秘密。ちょっと、用事があって、大阪の、友達の家に、いるの。ちょっと、必要な物をとりに、もどって来たの。また、すぐ、大阪にもどらなくてはならないの」
「そうなの。このごろ、あんまり、見かけないものだから、どうしたのな、と、少し、心配していたわ。それを聞いて安心したわ」
店員の美津子は言った。
京子は、スーパーを出た。
そして、家に帰った。
(やった。これで、完全なアリバイが出来たわ。これで、いつ、哲也くんに呼ばれても、大丈夫だわ)
そして、京子は、考えなおした。
やはり、また、哲也に呼ばれて、監禁されたら、また、解放されるという、保証はない。
それは、やはり、こわい。
それで、哲也も、傷つけない方法を考えた。
京子は、便箋を取り出して、こう書いた。
「佐藤京子です。もし、私が、いなくなって、一カ月、以上、経っても、連絡がなくなったら。その時は、警察が私の家に、失踪者として、家宅捜査するかもしれません。私は、××町××丁目の、高校時代の教え子の、山野哲也くんの、家に監禁されています。家には、大きな地下室がありますので、その中に、私は、監禁されています。なので、もし、私が、一カ月、以上、音沙汰が無くなったら、山野哲也くん、の家の地下室に監禁されています。ただし、これは、私と哲也くん、が、同意し合ったうえでの、映画、「完全なる飼育」、を真似た、遊びなので、決して、犯罪では、ありません。×月×日。佐藤京子」
これは、親告罪だから、刑事事件じゃないし、私が、警察に訴えなければ、哲也くん、は、犯罪者にならないわ。
京子は、
(そうだわ。最初の時、こう、書いておけばよかったんだわ)
と、京子は、得意になった。
その夜、哲也から、メールが来た。
それには、こう書かれてあった。
「先生。僕の家に来て下さい。来なかったら、先生の、恥ずかしい写真を、ネットにばらしますよ」
京子は、すぐに、
「はい。わかりました。行きます。ですから、お願いですから、私の、恥ずかしい、写真は、ネットに、出さないで下さい」
そう書いて、京子は、返信メールを哲也に送った。
京子は、マスクをして、メガネをかけて、夜中、タクシーで、哲也の家の近くに行った。
そして、哲也の家に入った。
哲也の家に入ると、哲也は、
「ふふふ。あの、恥ずかしい写真を、僕が持っている限り、先生は、僕の言うことに逆らえないんですよ」
と、勝ち誇ったように、言った。
「そうね。お願い。哲也くん。あの写真、や、動画、だけは、世間に公表しないで下さい」
と、京子は、哀願した。
「ええ。先生が、僕の言うことを聞いていれば、公表しませんよ」
哲也は、ふてぶてしい、口調で言った。
「さあ。先生。地下室に入って下さい」
と、言って、哲也は、京子を地下室に入れた。
そして、地下室の、内側の、ナンバーロック鍵を閉めた。
「さあ。先生。上着を脱いで、ブラジャーと、パンティー、だけになって下さい」
哲也が言った。
「は、はい」
京子は、哲也の命令に従って、上着を脱いで、ブラジャーと、パンティー、だけになった。
そして、哲也は、京子を後ろ手に縛った。
哲也が、京子を、ペッティングする時は、いつも、裸には、しないで、ブラジャーと、パンティー、を、履かせていた。
そして、女の体の、温もり、や、弾力、を楽しむように、体中を、弄った。
太腿にしがみついたり。
足の指を舐めたり。
そして、パンティーの上から、女の、盛り上がった、土手に、鼻を当て、クンクン嗅いだりした。
そして、「ああー。いいー」、と言って、自分で、オナニーして、射精したりした。
時には、哲也は、京子の、太腿にしがみついたまま、寝てしまうこともあった。
「ふふふ。先生。僕が寝てしまっている間に、僕を絞め殺しても、先生は、この地下室から、出られませんよ。だって、ナンバーロック鍵の、番号を知っているのは、僕だけなんですから。先生は、やがて、食事も食べられなくなり、餓死してしまうだけですからね」
と、哲也は言った。
「わ、わかっています。ですから、哲也くんには、逆らいません」
と、京子は、言った。
もちろん、それはそうだが、京子は、哲也を絞め殺す勇気など無かったのは、いうまでもない。
まがりなりにも、高校時代の、教え子なのだ。
哲也は、思うさま、京子の体をまさぐった後、地下室を出ていった。
京子は、地下室のベッドに、横になった。
(今日、書いた手紙を、机の中に、置いておいたから、私の身は安全だわ)
という、安心感を感じて。
アリバイも、ちゃんと、作っておいたから。
でも、今回は、哲也は、どのくらいの期間、私を、ここへ、監禁するのかしら?
それだけは、ちょっと、わからなかった。
そして、それだけは、少し、こわかった。
(ああ。かわいそうな私)
あの机の中の、手紙がある限り、自分は、安心たのだ。
と、思っても、哲也が、どのくらいの期間、自分を、ここへ、監禁するのかは、わからないのである。
(あーあ。順子に、あった時、一カ月したら、私の家の、引き出しを開けて)
と、言っておいた方が良かったわ。
と、京子は、後悔した。
そして、それを、思いつけなかった自分に後悔した。
京子は、本当に、自分が、「完全なる飼育」、の、ヒロインになったような気がした。
哲也は、人を殺す度胸なんてないだろうし。
まあ、私は、まず、殺されずに、すむわ。
今度、地下室から出た時は、哲也くんに、「もう、監禁ゴッコは、許してくれない」、と、頼んでみよう。
夏が終われば、また、学校も始まるし。
それに、哲也は、もう、緊縛写真も、あらゆる、恥ずかしいポーズの姿を撮って、最近では、縛らないでくれるし。
そもそも、映画、「コレクター」の、ミランダ、(サマンサ・エッガー)、にしても、「完全なる飼育」、シリーズのヒロインにしたって、美人ばかりだし。
美人だから、ネクラ男に惚れられて、監禁されるのだし。
哲也は、私をペットにしているのだわ。
(あーあ。美人って、つらいわね)
などと、京子は思っていた。
そんなことを、思っているうちに、京子は、眠りに就いた。
翌日。
哲也は、食事を持って、地下室に降りてきた。
トースト、と、ゆで卵、と、野菜ジュース、だった。
二人分で、哲也も一緒に食べた。
「先生。どうも有難う」
哲也が言った。
「いえ。いいのよ」
京子は、てっきり、昨日、一時的に、解放したけれど、もどってきたことに、対して、哲也は、礼を言ったんだ、と思った。
しかし、哲也は、手を振った。
「いえ。違うんです」
と、言って、哲也は、話し出した。
「京子さんは、昨日、きっと、自分は今、僕の家に監禁されている、という、内容を書いたワード文章の入ったUSBメモリーを、部屋の中に、いくつも、置いてきた、と思うんです。そして、友達に会って、今、どこか、遠い所へ出かけている、と、告げたんだと、思います。そうでしょう?」
京子は、図星を当てられて、たじろいだ。
「え、ええ。そうです。でも、どうして、それが、わかるんですか?昨日、私を尾行していたんですか?」
京子が聞き返した。
「いえ。尾行なんて、していませんよ。京子さんを尾行しているのを、人に見られたら、怪しまれますからね」
「じゃあ、何でわかるんですか?」
「それは、京子さんの性格からです。京子さんは、僕を犯罪者には、出来ない、優しい性格ですから。しかし、万が一の時のために、身の安全を、担保する仕掛けは、しておいたと確信していました。僕が、それを探しに行っても、家中、探さなければ、ならないし。それを、全部は、見つけるのは、困難だと思ったんです。そして、友達にも会って、アリバイを作っていて、くれていたとも、確信していました。僕が、アリバイを作るより、京子さん自身にアリバイを作らせた方が、確実です。それで、昨日、外出することを許可したんです」
「その通りだわ」
京子が言った。
「(先生。僕の家に来て下さい。来なかったら、先生の、恥ずかしい写真を、ネットにばらしますよ)、と、僕が、さかんに、脅しましたが、あれは、お芝居です。ネットに、ばらされる恥ずかしさ、より、一生、この地下室で監禁されかねない、死の恐怖に比べたら、ネットで、恥ずかしい写真をばらされるのなんて、たいしたことじゃありませんからね。それで、僕は、バカな人間を演じていたんです。京子さんを、油断させるために」
哲也が言った。
「負けたわ。私も、それに、対して、おびえる演技をしていたけれど、完全に、哲也くんに、心を読まれていたのね」
京子は、はー、と、ため息をついた。
「それでは、具体的に、どういう、内容の文章を書いたんですか?よかったら、教えて下さい」
哲也が言った。
京子は、もう、全て、洗いざらい、本当のことを言おうと決めた。
それで、話し出した。
「最初は。(もし、私が、いなくなって、一カ月、以上、経っても、連絡がなくなったら。その時は、警察が私の家に、失踪者として、家宅捜査するでしょう。私は、××町××丁目の、高校時代の教え子の、山野哲也くんの、家に監禁されています。家には、大きな地下室がありますので、その中に、私は、監禁されています。なので、もし、私が、一カ月、以上、音沙汰が無くなったら、山野哲也くん、の家の地下室に監禁されていますので、助けて下さい。×月×日)と、書いたわ。でも、万が一、それが、見つかったら、哲也くんが犯罪者になってしまうでしょ。それで。昨日。(もし、私が、いなくなって、一カ月、以上、経っても、連絡がなくなったら。その時は、警察が私の家に、失踪者として、家宅捜査するかもしれません。私は、××町××丁目の、高校時代の教え子の、山野哲也くんの、家に監禁されています。家には、大きな地下室がありますので、その中に、私は、監禁されています。なので、もし、私が、一カ月、以上、音沙汰が無くなったら、山野哲也くん、の家の地下室に監禁されています。ただし、これは、私と哲也くん、が、同意し合ったうえでの、映画、「完全なる飼育」、を真似た、遊びなので、決して、犯罪では、ありません。×月×日)、と、合意し合った上での、遊びであることを、付け足したの。それと、よく行くスーパーの友達に、会って、ちょっと、事情があって、大阪に行っている、とも、言ったわ」
京子は、言った。
「そうだったんですか。どうも、有難うございます」
と、哲也は、深々と頭を下げて、京子にお礼を言った。
「それと。京子さんも、SMプレイをされたり、緊縛写真を撮られているうちに、だんだん、被虐の快感を覚えるように、なるとも、思っていました。女は、みんな、ナルシストですからね。特に、先生のように、綺麗な人は、その度合いが強いと、確信していました。そして、ナルシストに、恥ずかしい目にあわせていれば、必ず、悲劇のヒロインになった、快感を楽しむように、なるとも、確信していました」
哲也が言った。
「そ、その通りだわ。私の心は、全て、哲也くんに、読まれていたのね」
京子は、顔を赤らめて言った。
「でも。こうやって、種明かし、してしまった以上、もう、本気の、監禁、や、SMプレイの、スリルは無くなってしまいますね。まあ、出来ないことも、ないですけど、本当の恐怖は、味わえないでしょう」
哲也が言った。
「いえ。そんなこと、ありませんわ。哲也くん、が、私を、逃がしてくれるか、どうかは、わかりませんもの。いつまで、監禁するのかは、私には、わかりせんもの。哲也くん、の言う通り、私は、マゾの喜びに目覚めてしまったのです。哲也くん。どうか、私を、恥ずかしい格好にして、いじめて下さい」
京子は、あられもないことを、堂々と言った。
「わかりました」
哲也は、京子に、股間の、縄の綱渡り、をさせた。
京子を後ろ手に縛り、ピンと、張った縄をまたがせた。
そして、哲也は、
「さあ。先生。歩いて下さい」
と、京子に命じた。
京子は、
「ああっ。いいわっ。哲也くん。もっと、いじめて」
と、叫びながら、辛そうに、股間の縄の綱渡り、をした。
そうして、三日が過ぎた。
「先生。もう、夏休みも、終わりますね。先生も、二学期からの、教師の仕事があるでしょう。僕も、先生を監禁して、先生を、辱めて、いじめたい、という、欲求を堪能させていただきました。先生を、この地下室から、解放します。写真は、僕だけの物として、とっておきます。ネットでは、公開しません」
哲也が言った。
「有難う。哲也くん。でも・・・」
と、言って、京子は、言いためらった。
「でも、また、監禁されたくなったら、来てもいいですか?」
京子が聞いた。
「ええ。いいですとも。大歓迎です」
「嬉しい」
「ところで、京子さん。世間では、映画、「コレクター」、とか、「完全なる飼育」、とか、を、変質者のように、言っていますが。もちろん僕は、変質者と呼ばれて一向にかまいません。しかし、僕は、自分を正当化するつもりは、全くありませんが、僕は、世間の人間の方が、「完全なる飼育」、をしている、狂気の変質者だと思っています」
哲也が言った。
「どういうことですか?」
京子が聞き返した。
「つまり。世間の人間は、大人なら、妻、や、子供、を、自分の、思い通りに、する権利がある、と、思っています。なので、自分の言うことを聞かないと、妻を虐待して、ドメスティックバイオレンス、で、結婚しても、3人に1人は、離婚しています。子供に対する、虐待や、体罰の暴力も、ものすごい数で、後を絶ちません。これは、親、や、大人が、子供の人格を認めず、人間あつかいしないで、親が、子供を自分の思い通りの人間にする権利があると、思っているからです。それを、世間の大人は、実際に、実行しています。しかし、この、(監禁SMプレイ)、は、あくまで、本気ではなく、遊び、です。だから、世間の人間の方が、狂気の、「完全なる飼育」、をしている、と僕は、思っています」
と、哲也は言った。
「なるほど。確かに、そうかもしれませんね」
京子が言った。
こうして、翌日、京子は、解放された。
しかし、完全に自由になっても、時々、京子は、哲也に、「哲也くん。監禁して、いじめてくれませんか?」、というメールを送った。
そして、哲也は、「ええ。いいですとも」、と言って、京子が、「監禁して」、と言ってきた時には、監禁して、京子に、SMプレイをした。
哲也は、翌年、無事、東大理科三類に合格した。
京子は、合格祝いに、哲也の家に行った。
「よかったわね。哲也くん」
「ええ。有難うございます」
「ところで。先生。実は、僕は、もう一つ、先生を監禁するにあたって、計画していたことが、あるんです」
と、哲也が言った。
「何ですか。それは?」
京子が聞いた。
「先生が監禁されて、SMプレイをされている、映像は、すべて、録画してあります。これを、映画会社に、見せてみたいと思うんです。もしかすると、(完全なる飼育、パート9)、として、制作してくれるかもしれないと思うんです。どうでしょうか?」
哲也が聞いた。
京子は、少し、考えた後、
「いいわよ。私と哲也くん、の、ラブゲームが、映画になったら、面白いものね」
京子は、ニコッと、笑って言った。
京子は、哲也にSMプレイを受けているうちに、度胸がついていた。
「有難うございます」
数日後、哲也は、映画製作所に、今までの、映像を持って、京子と、一緒に行った。
映画製作所では、もう、映像も、撮ってあるうえに、「これなら、ヒットする」、可能性を認め、少し、足りない部分の、撮影をして、映画を完成させ、(完全なる飼育、パート9)、として、完成させた。
そして、その映画は、数か月後に、上映された。
案の定、映画は、大ヒットした。
それが、きっかけで、京子は、芸能プロダクションから、オファーが来て、女優業もやるようになった。
しかし、京子の強い願望で、教師の仕事も続けた。
そして、京子は、時々、「哲也くん。監禁して、いじめてくれませんか?」、というメールを送って、世間には、秘密で、監禁SMプレイを続けた。
京子の、SМ写真、や、SМ動画も、出版されて、それは、飛ぶように、売れ、京子は、人気女優になった。



2019年4月2日(火)擱筆







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