小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

林芙美子論

2009-01-29 00:15:11 | Weblog
林芙美子論

最近、林芙美子をよく読んだ。「論」などと言うとちょっと大げさである。
一言でいうと、男好きで、転んでもタダでは起きない逞しい詩人とでも言おうか。
さすが元、詩人だけあって、小説の中でも、詩的な風景描写の文が多く文章が美しい。この詩的な文章は谷崎潤一郎とも佐藤春夫とも違う。谷崎は、もちろん名文家であるが、いささか粘り気がありすぎて、もちろん嫌いではなく、凄いなと思うが、詩的な美しさに人工美と感じる事もある。第一、谷崎は詩を書いていない。それに対し、佐藤春夫は本当の詩人であるが、詩的な美しさに過度に引っ張られてしまう。その点、林芙美子の文章は、さっぱりした美しさ、とでも言おうか、肩が凝らないのである。作品では私としては、「水仙」という母親と子供が喧嘩している短編が好きである。最も林芙美子としては、本当に子供を嫌って書いているが、また嫌な子のように表現しようとして、読者に嫌って欲しいと思って書いているが、私にはどうしても不良の子供がかわいく感じてしまうのである。著者が表現したいと思っている事が、読者には逆に感じとられてしまうということは、結構あるのだ。
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