小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

芸は身を助く

2008-12-22 20:11:16 | 医学・病気
芸は身を助く

去年の春頃、医事新報で、ある割のいい医者の仕事のバイトがあったので、応募した。しかし行ったら何か、応募の内容と実際が違う。しかもどんな仕事なのか説明しようとしない。なので私がしつこく聞くと、やっと説明した。こういう手口は私だけでなく、誰でも嫌うだろう。そして、たかがバイト程度なのに、面接で根掘り葉掘り質問する。面接というより、取調べという感じだった。私は医師免許のコピーと履歴書を持っていったのに、医師免許の原本を持ってきてほしい、と言った。こんな経験は初めてである。常勤の採用の面接でも、医師免許はコピーだけで十分なのである。医療界では医師の就職では、医師免許=医師免許のコピーなのである。第一、ニセ医者だったら、医学知識が無いから、すぐわかるじゃないか。一言、「バビンスキーの反射って何」と言えば、済むことじゃないか。その人の経歴はすごい。××大学、東京大学、××大学医学部という三つの国立大学を出ている。しかも、二度目の東京大学を出てから、ある医療法人の事業を立ち上げたのである。それで、医師免許の必要性を感して、××大学医学部に入ったのである。しかも、氏は学費はアルバイトをして自活して、医学部を卒業したのである。氏は医師というより実業家という感じである。これほどの学歴を持った人は日本に二人といないだろう。もっとも氏は変な学歴マニアではなく、人生の軌道修正から必要があって、大学に入り直したのである。氏はともかくバイタリティーのある人間である。内向的な人間を嫌っていて、高圧的な態度だった。しかし私が哲学や文学をよく知っているので、今時、めずらしい人だと、だんだん見直しだした。決定打は、その人は仏教や輪廻転生に非常に強い関心を強く持っていて、私が般若心経を諳んじてみせたら、驚いたことによる。それで、二ヵ月後位に、採用の知らせが来た。だが、私は氏の人格にあまり好感を持てなかった。偽りの求人広告でだまして募集するような事。医者という感じが全くせず、金儲けのためだけに医師免許を取った事。実際、それは保険のきかない自由診療の仕事である。仏教に関心を持ちながら全くの現実家で宗教的なものが全く感じられない事。説明会で同業者をあからさまに非難している事。氏は自分がお山の大将でないと気がすまず、私まで洗脳しようとした。しかも、実業家なのに先を読む目がない。ある学会で、その人に不利な条項が決まってしまった。それは、簡単に予測できるはずの事態である。ワンマンで超多忙だから、ヨットを持ってても乗る時間もないだろう。毎日、50人以上、手術しなくてはならないのである。しかし、先行投資で高額な先端機器を買ったり、熱心に勉強したり、と度胸や誠実さもある面もある。保険の利かないあまり医療らしくないものなので、クレームを言いに来て喧嘩腰で文句を言った患者もいた。手術が失敗して、苦しげな説明もしていた。私は、合わないと感じたので、5回くらいで辞めた。
医者なら、どんな悪い医者でも患者の治療に真剣だし、病気を治したいと思っている。それは、純粋に患者をかわいそうだと思い、何とか治したいと思う気持ちと、患者を治せれば、自分が有能な医者になれるからである。前者は患者の利益のためであり、後者は医者の利益のためである。
医学部にいく人は、金儲けのためだけにいく人は、まず無いだろう。
もっとも、勉強が出来るからといって医学部に行く人は全然、世間知らずである。
もし大学に残って研究職につこうと思っている人なら、医者の給料がどれだけ低いか、よく調べてから決めた方がいい。私の時は、私立の研修医は給料、月5万だったぞ。勤務医にしても医者の仕事が激務で、医者は、ほっちゃれ、だという事を調べてから考えた方がいい。私の大学でも私の後に卒業した人で、もう8人も過労死で死んでいるぞ。
もっとも、医師免許だけは理系の最強の国家資格なので、不況には強い。
彼はあまりにも、わりきり過ぎていて、いささかうんざりした。
私が耳鼻科や皮膚科だったら、絶対ピアスなんかしない。
ピアスとか美容整形は保険の利かない自由診療だから儲かるのである。
しかし、ピアスも美容整形も、とうぜん完全に安全なものではない。
失敗や後遺症はある。
少なくとも私は美容整形なんか全く興味ない。
どんなツラでも私の顔は神様が私のために選んでくれた顔なのだから。
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