アカデミー賞(作品賞)受賞作というのもあるが、先月、映画館で予告編を何回も見ていて、好印象だったので、ぜひ観に行こうと決めていた。
1927年、サイレント映画の大スター、ジョージ・ヴァレンティンは、映画の舞台挨拶で、女優志望のペピー・ミラーと知り合い、彼女が世に出るきっかけを作ってやる。
2年後、所属するキノグラフ社(映画製作会社)がサイレント映画の製作を中止したことを新聞で知る。ジョージは社長に談判に行くが、「大衆は声を求めている」と言われ、「君はトーキーを作れ、僕は自力で名作を作る」と袂を分かってしまう。
ジョージは、銀行に借金を重ねて映画を完成させるが、映画は不入り、妻にも去られてしまう。一方、ペピーは、キノグラフ社のトーキー映画第一作に主演し、一躍人気女優になる。
さらに2年後、ジョージは酒浸りの日々を送っており、あるとき衝動に駆られ、昔の自分のサイレント映画のフィルムを全て焼き払おうとして火事を起こしてしまう。幸い、愛犬が警官を呼びに行き、火事から救い出され、一命はとりとめる。
新聞で事件を知って病院に駆けつけたペピーは、ジョージが一本の映画のフィルムだけは大事に抱え込んでいたことを知る。それは、ジョージが初めてペピーと共演した映画だった。ペピーはジョージを自分の家に看護婦ごと引き取る。ようやく意識を回復したジョージは、つき添ってくれていたペピーと抱き合う。
ペピーは次の主演作にジョージとの共演を望み、社長を脅迫して了解を取り付け、脚本を渡すが、ジョージはプライドが許さない。また、破産した自分がオークションで手放した私物も、ペピーがすべて買い戻していたことを知って、ジョージは衝撃を受け、ペピーの家を飛び出す。以前火事を起こした自宅に戻り、拳銃を手にするが、なかなか引き金を引けないでいるところに、ペピーが馴れない車を運転して慌てて飛び込んでくる。泣き笑い、二人は抱き合う。
ペピーは改めて映画の共演を頼むが、ジョージは「過去の男の声なんて、誰も聞きたがらないさ」。ペピーは、「名案があるの。私を信じて」。
名案が何だったかは、見てのお楽しみとさせていただくが、文句なしのハッピーエンドで、脚本の素晴らしさを感じた。また、全編を通して映像も音楽も美しく、作品賞を受賞したのもむべなるかな、と納得の出来映えであった。
ただ残念だったのは、こんなにいい映画だったのに観客が少なかったことで、450席もあるシアターなのに、私の他には1人しかいなかった…。もっと多くの人に観てもらいたい。犬も可愛いし、これだけでも得した気分になる。