夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

映画「痛み」観ました。

2012-04-07 22:48:54 | 映画
主演のクォン・サンウとチョン・リョウォンが目当てで観に行った。

クォン・サンウは『悲しみよりもっと悲しい物語』(2009)・『戦火の中へ』(2010)、チョン・リョウォンは『彼と私の漂流日記』(2010)の演技がとてもよかった覚えがある。

今回の映画も、この二人の演技に関してはすばらしいの一言だった。

ナムスン(クォン・サンウ)は、幼い頃家族と共に交通事故に遭い、姉に守られて命は助かるが、(おそらくそのトラウマで)無痛覚症になる。今は、少年院時代に知り合った「兄貴」と組んで闇金の取り立てをしているが、暴力をふるうのではなく、痛みを全く感じない体質を利用して、負債者の前でわざと殴られてみせたり、自傷行為に及んだりして、恐怖に駆られた負債者に借金を返済させるなど、殴られ屋のようなことをしている。

ドンヒョン(チョン・リョウォン)は、血友病患者で、両親を病気で失い、彼らが残した多額の治療費の借金を抱えながら、夜の街で露店を出し、創作アクセサリーを売って生活している。

二人が出会うのも、最初は借金の取り立てがきっかけだったが、ドンヒョンが別の借金取りにつかまり、売り飛ばされそうになるのをナムスンが助けたところから、彼らの同居生活が始まり、やがて互いに愛しあうようになる。

難病と孤独を抱えた二人が出会い、引かれ合うようになる特異な状況を、クォン・サンウとチョン・リョウォンがよく演じていた。映像や音楽も美しく、笑いどころもあったりして、とてもよい感じで話が進んでいった。

それだけに、結末にはかなり残念な印象が残った。監督としては、美しい悲恋のつもりなのかもしれないが、あまりの救いのなさに、正直やりきれない後味の悪さが残ってしまった。

生い立ちも不幸で、闇の中を歩くような「今」を生きる二人が出会って、ようやく明るい兆しが見えていただけに、もう少し違ったラストを用意してほしかったように感じた。