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夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

7月6日は

2016-07-07 22:53:17 | 短歌
今週の文学の授業(短歌講座)の初めに、
「7月7日は七夕だけど、7月6日は何の日か知ってる?」
という話題から入り、

  「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

の歌を紹介した。

歌人・俵万智さんの登場は、当時高校生だった私にとって衝撃だった話もした。
ある朝、新聞を読んでいたら、『サラダ記念日』の発売の広告があり、先の歌と、

  ハンバーガーショップの席を立ち上がるように男を捨ててしまおう

の歌が載っていた。

その時の私は、何かの宣伝文句かと思いながらそのまま新聞紙をめくろうとして、
(あれ、これって五七五七七になってないか?)
と読み返して初めてそれが短歌であることに気づいた。

こんなに易しい言葉で身近な内容を読んで、それが短歌になるんだ、と思ったときの驚きは今もよく覚えている。


4月から学生に短歌講座をしていて、なるべく色々な歌人を取り上げるようにしているが、学生たちがいちばん共感しやすいというのは石川啄木と俵万智である。
この二人は口語短歌で親しみやすく、愛誦される歌が多いので、私もついつい授業で取り上げてしまう。

それにしても、私の青春時代に夢中になった歌人に、今の学生が共感し親近感を覚えてくれるのはやはり嬉しい。

穴埋め短歌

2016-05-20 23:34:47 | 短歌
先日の文学の授業(短歌講座)のとき、学生に短歌の穴埋め問題をやらせたら、いろいろな解答があって面白かった。

これは創作短歌へのステップとして行ったもので、『穴うめ短歌でボキャブラリー・トレーニング』(産業編集センター編)に出ている問題を数問、そのまま使わせてもらった。

解答例をいくつか紹介すると、

①友がみな われよりえらく 見ゆる日よ ■■■買ひ来て 妻としたしむ
 (石川啄木)
元の歌では「花を」

学生の解答
・菓子を
・酒を
・土産
・シャンパン
・清酒
・ビール
・ワイン
・パセリ
・セロリ

「花を」の正解が2つあった。
啄木は、憂さ晴らしのための酒を買ったと理解する者が多かったのは、仕方ないか。
「パセリ」「セロリ」は、かなりいい線いっているような気がする。

②ウミウシに 話しかけたら ■■■■■ ような気がする からやめておく
 (村上きわみ)
元の歌では「長くなる」

学生の解答
・無視される
・溶けてゆく
・返事する
・逃げられる
・きりがない
・食べられる
・笑われる
・追ってくる
・溺死する
・不審者の

どの答えも秀逸だが、最後の答えが一番笑えた。

③幼き日 パン買いに行きし 店先の ■■■■■■■ いまも忘れず
 (萩原朔太郎)
元の歌では「額のイエスを」

学生の解答
・古き看板
・黒い番犬
・茉莉花(ジャスミン)の香を
・子どもの泣き声
・可愛い女子を
・くすんだガラス
・店員(売り子)の笑顔

「子どもの泣き声」は、「買ってよー!!」という泣き叫び声だろうか。

穴埋め短歌は、その歌の詠まれた状況や背景を、作者の立場になって想像・理解することにつながり、言語の運用能力のトレーニングにもなっていると思う。
私の行っている短歌講座では、学生が自らの心情や感動を創作短歌で表現できるようになることが目標だが、そのための準備段階として、短歌の穴埋め問題に取り組ませるのは、はなかなか有効な方法だと思った。

続 月次の会・三月

2016-04-01 23:20:25 | 短歌
今回も月次の会には、詠草のみの参加。

  ①(提出歌)
   風ぬるむ彼岸となりて大山の高嶺に見なれし雪も消えゆく
  →(添削後)
  風ぬるき彼岸となりて大山の嶺の見なれし雪も消えゆく

  ②(提出歌)
    春の夕べ雪はつかなる大山に望月ちかき月は照りつつ
  →(添削後)
    春の夜の雪わづかなる大山に望月ちかき月が照りゐつ


先日、3月中には雪が消えてしまいそうだと書いた大山だが、実は4月に入ってもまだ少し残っている。
数日来の春の陽気にも、解けきらないで持ちこたえているのが、なんだか健気に見える。

今回の他の出席者の方の歌では、

  あんなこと言つてしまつてと又悔やむ正しい言葉には後から気づき

が印象に残った。
私もこんな感じの、後から気づく「ああ言っておけばよかった」出来事がたくさんある。

  言ひ直すこともできぬがもどかしき後に悔やむはむなしかりけり

松江歌会 (その6)

2016-03-04 23:28:41 | 短歌

今回の歌は、先日米子の中心部・湊山公園で、梅の花を見たときの印象を詠んだもの。

  咲き初めし白梅香る湊山冬もやうやく遠ざかるなり

  白と紅と梅の花咲く中海のほとりに鳥の声の響かふ

出席者の方々のご意見を容れて直し、まずまずの歌になった。

こちらでは今が梅の花盛り、長い冬に耐えてようやく愛らしい花を咲かせている様子に、いっそうの可憐さを感じる。

続 月次の会・二月

2016-03-02 22:44:14 | 短歌
今回の月次の会も、詠草のみの参加。
それでも、後日、担当の方に送っていただいた皆さんのお歌や、先生の添削を見ていると、歌会の情景が眼前に浮かんでくるような気がするから不思議である。

私が今回提出したのは、次の二首。


 ①(提出歌)
   白梅はほころび初(そ)めぬ遠方(をちかた)の大山はまだ雪いただけど
  →(添削後)
  白梅がほころび初めぬ大山の頂はまだ雪に白けれど

 ②(提出歌)
   吹く風はまだ頬させどのどかなる空のけしきに春は見えけり
  →(添削後)
   吹く風はいまだ刺すごと寒けれど空のけしきに春は見えをり

一首目は、春を迎えたとはいえまだ半ば雪に覆われた大山を背景に、咲き始めた梅を眺めて詠んだ歌。米子では11月下旬からもう冬という感じで、積もるほどの降雪は少ないものの、晴れる日は月に数回で、本当に冬が長く感じた。それだけに、待ちかねた梅の花がようやく咲き始めたのを見つけたときの喜びはひとしおであった。

二首目は、早春の午後、校内を歩きながら、頰に受ける風は冷たく刺さるようなのに、日射しや空の様子にはっきり春が感じられた印象を詠んだ。
先生の添削のように、「空のけしきに春は見えをり」とするだけで、「のどかなる」は言わなくても分かる。読者の想像力をもっと信じなければと思った。

今回、歌会に出された歌の中に、

  向ひあひ父と柚子茶をすすりをり今日も話を切り出せぬまま

という作があった。これを読んだ読者は、切り出せない話とはどんな話か、父と娘(息子と父で柚子茶は飲まないだろう)の年齢や日頃の様子にまで思いをはせることになるだろう。
自分の見たもの感じたことをただ詠むだけでなく、その先に、読者にどう伝えるかについての手立てを真剣に考えなければならないと思った。

今年の二月で、短歌を学び初めてから二年が経ったが、同じような所にとどまっていて、四季の風物をスケッチする程度のものしかできない。それでも、今しか詠めないものをその都度大事にしながら歌作を続けていこうと思う。