陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

先行き不明の米国財政状況

2013-10-09 05:36:36 | 米国関係
 オバマ大統領は、国民皆保険を指向するオバマ・ケアを2014年度から開始するために、政府予算案の議会承認を求めて、一歩も譲ろうとしない。下院(共和党主導)は、オバマ・ケア予算を除いた政府暫定予算を承認して上院(民主党主導)へ送ったが、否決されて暫定予算さえ通らぬ有り様だ。

 10月1日から3.8兆ドルに及ぶ政府歳出予算が執行停止のため、連邦政府の一部職員70万人は自宅待機となり(国防総省文民職員40万人は後に解除)、国民生活に影響を与えている。そのような非常事態を迎えているにも拘わらず、米国民は大きな反発デモを起こすわけでもなく、じっと事態の推移を見守っているようで、何とも不思議に感じる。

 一方、2年前に決定を先延ばしした累積赤字債務上限額16.4兆ドルへ更に上積みする案も、下院はこれを認めないとしてオバマ大統領と激しく対立し、今月17日には財務省のやりくりが不可能になるデフォルト前段階を迎える。

 アイスランドがデフォルトになって、他国からの借金(ソブリン債)を踏み倒したが、依然として国家は存続している。同じように米国がデフォルトになっても、国家は存続する。しかし、米国債券の発行残高12兆ドルは著しく毀損し、1兆2000億ドルの米国債券を持つシナ・中共、1兆1300億ドルを保有する日本は大損害を被ることになる。

 当然ドル価値に対する信任は低下し、米国内では異常インフレが進行、失業率は跳ね上がる。日本では1ドル=50円などと急激な円高が襲うことになろう。

 世界経済への全般的影響として、ブルームバーグ紙が伝えるところによると


米国デフォルトはリーマン以上に予想つかない-エラリアン氏

10月8日(ブルームバーグ):パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のモハメド・エラリアン最高経営責任者(CEO)は米国がデフォルト(債務不履行)に陥れば、金融市場への影響はリーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破綻以上に予想のつかないものになるだろうとの見方を示した。

同CEOはブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「何よりも恐ろしいのは世界の金融システムの配管系統に何が起こるかだ」として、「連鎖的な破綻と多数のデフォルトが起こるだろう。担保としての米国債は交換しにくくなり人々はただ後ずさりするだろう。リーマンの時と同じようだが、もっと予想がつかない」と語った。

米国債の発行残高 12兆ドル(約1160兆円)に比べれば破綻時のリーマン債務5170億ドルも色あせる。リーマンの破綻はサブプライム住宅ローン市場で始まった金融危機を一挙に深刻化させた。世界の信用市場がほぼ凍結状態となり、米連邦準備制度と米政府がそろって異例の措置を講じなければならなかった。

米政府がデフォルトする可能性は「極めて微小」とPIMCOはみているものの、借り入れ手段が尽きると財務省が指摘している17日が近付くにつれ市場のボラティリティは高まるだろうとエラリアン氏は述べた。

債務上限引き上げをめぐるオバマ米大統領と共和党指導部との応酬が対立色を強める中で、議員らはようやく解決法を模索し始めている。

エラリアン氏は「債務上限が引き上げられず米国がデフォルトすれば、世界経済がリセッション(景気後退)に陥ることについて私は何の疑念も持たない」とした上で、「皮肉なのは、これは米国の支払い能力の問題ではなく支払う意思の問題だということだ。そして、われわれは自分たちの名誉だけではなく世界の金融システムも賭けてロシアンルーレットをしている」と語った。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MUCSN36TTDSP01.html

 こうしたデフォルト状態に至る前に、オバマ大統領と下院(共和党)の<チキン・レース>は妥協で終結されることを期待するが、就任以来毎年約1兆ドルの赤字予算を組むオバマ政権は、あと3年続くから債務上限は最終的に20兆ドルに達する可能性がある。

 デフォルトに至る具体的なシナリオをロイター通信が伝えている。

シナリオ:米国初のデフォルトはどう起こるか
2013年 10月 4日 18:22 JST

[ワシントン 4日 ロイター] - 米議会が債務上限引き上げで合意しなければ、米債務は17日にも16兆7000億ドルの上限に到達する見通し。財務省の日々の収支がどうなるのか正確には分からないため、デフォルト(債務不履行)がいつ、どのように発生するのか予測するのは難しい。

しかし、財務省の過去の同時期の銀行との取引明細書を見れば、今後どのぐらいのペースで資金が枯渇していくのか推測することは可能。以下、財務省の2012年10─11月の取引明細書を基にデフォルト前後に予想される展開をまとめた。

<10月17日>

財務省は借り入れを上限以下に抑えるための手段を使い果たし、債券の新規発行が一切できなくなる。この日は67億5000万ドルの税収が見込まれるが、社会保障関連で109億ドルの支出がある。こうした収支の結果、最終的な手元資金は275億ドル程度になる見通しだ。

<10月18─29日>

この時期、財務省の手元資金は急激に減少する。支出1ドルに対して収入70セントとなり、差額を賄うための新規債券発行もできない。

22日には収入が支出を35億ドル上回る見通しで、状況は一時的に好転する。ただそれも長くは続かず、24日には再び資金繰りが厳しくなる。財務省はこの日、軍事関連の下請け業者への支払いが18億ドル、メディケア(高齢者医療保険)に基づく医師・病院への支払いが22億ドル、社会保障関連で111億ドルの支払いが見込まれている。これに対して、税収・その他の収入はわずか96億ドルと見込まれる。

この時点で、米債券への信頼感が失われる可能性がある。政府はもはや債券を発行することはできないが、償還を迎えた債券を借り換えることは可能。投資家は毎週、1000億ドルの米債券をキャッシュアウトする機会があるが、再投資を選択することが多い。デフォルトへの警戒感から再投資が敬遠されれば、財務省の資金繰りは一挙に崩壊する。

<10月30日>

デフォルト発生。政府は70億ドルの支払いが履行できない状況に陥る。
財務省は、どの支払いを履行するか選択することはできないとしている。同様の事態に直面した2011年、財務省はすべての支払いを履行するだけの資金を確保するまで支払いを実施しない計画を立てたとされる。

そのような措置を今回もとった場合、学校向けの6億8000万ドル、福祉関連の5億5300万ドル、防衛関連の9億7200万ドルの支払いが履行されないことになる。
政府を主要顧客とする企業が受ける打撃は大きい。

デフォルトが続くに伴い支払い遅延が長期化し、数日間で数十億ドルの経済損失となる。

<10月31日>

今年のハロウィーンは、60億ドルの国債利払い日でもある。

利払いができなければ、米国債投資にはリスクがないという前提が揺らぐ。これまで確実に償還されてきたことから、世界で最も低いレベルに抑えられてきた金利は上昇することがほぼ確実。株式市場は急落し、消費者の財布のひもは固くなり、景気は一段と悪化する。

この日から財務省は厳しい決断を下し始めることになる。中国の債券保有者に支払うか、それともアフガニスタンに駐留する軍に資金を提供するのか。オバマ政権は優先順位は付けられないとしているが、アナリストは、政権が少なくとも優先順位付けを試みるとみている。

この分析に協力してくれたシンクタンク、超党派政策センターのアナリスト、ブライアン・コリンズ氏は「期日に利払いできないのは、他の支払いができないことよりも深刻な事態」と指摘した。

<11月1日>

この日をもって、米政府は未踏の領域に入る。
理論上、政府はいつまでも債券保有者が損失を被らない状態にしておくことが可能。利払いをしても余りある税収があり、財務省は他の債務と別のシステムを通じて債券保有者に支払いができるからだ。

ただそれは、債券以外の支払いがより遅れることを意味する。米軍は賃借料を払えず、年金生活者は日々の買い物にも困る可能性がある。

一方、もし財務省がハロウィーンの利払いを履行せず、政権与党と野党の対立が解消されない場合、米国の信用力低下につながる。米ドル、アジアでの銀行融資、イリノイ州の農作物保険コストなど、あらゆる金融商品の価値に疑問符が付く。
財務省は3日に公表した報告書で「デフォルトすれば前代未聞で壊滅的な打撃となる可能性がある」とし、「負の波及効果が世界に広がる可能性がある」と指摘した。

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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE99305X20131004/?sp=true
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