伊勢神宮で行われた<式年遷宮>の行事は、10月2日に内宮、そして一昨日の外宮での<遷御の儀>を滞り無く終えて、クライマックスを過ぎた。20年毎のこの行事は、持統天皇の時から数えて今年は62回目、戦国時代の一時期を除き1300年以上も続く貴重な伝統的内容を持つ。
内宮(皇大神宮)の祭神は、天照大御神で伊勢神宮の主神とも言える。外宮の祭神は、豊受大御神で主神への衣食住を司るとされる。参拝者は、まずJR伊勢市駅あるいは近鉄駅から歩いて行ける外宮に参拝し、次いで5km程離れた内宮を参拝する。
私は、6年前の7月に、伊勢市のホテルに2泊してゆっくりと外宮、内宮の順に参拝した。夏休み前の週日であったから、余り混んでいなかった。内宮の参道周辺にある「おかげ横丁」を眺めたり、名物の伊勢うどんなどを楽しんだ。二見ヶ浦まで足を伸ばしてから、近鉄電車で名古屋へ戻った。
当時、内宮に隣接した場所で、式年遷宮の準備が始まっていた。一部の木材が積まれ、新社殿の地割りが行われていた。式年遷宮の準備期間は8年を掛け、装飾品の部分交換もされる。社殿建設に使われる金具や四角状の釘は、全て新潟県三条市の鍛冶職人が作る。飾り紐は、同市の組紐職人へ発注される。こうした形で、建築や建具などの技術保存が営々と行われている。
解体された旧社殿材木は、要望に応じて全国の神社に送られ、鳥居や橋の改修に利用される。それは、昔から実施されていることのようである。
<式年遷宮>に要する費用は約550億円。全て参拝者の浄財と寄付金で賄われるという。伊勢神宮へ参拝する人々は、全国から来ており、年々増えて年間700万人を越す。
何処の神社も静謐で荘厳な佇まいを持ち、参拝者は心落ち着く気持ちになるが、伊勢神宮ではそれに加えて深みのある厳粛さに打たれる。
神社という場所は、宗教施設であるよりも、日本の伝統文化を継承する神域のように私は感じるのである。
内宮10月2日、外宮5日に「遷御の儀」 日本再生の息吹
2013.9.30 11:31
■「20年に一度」生命・活力新たに
伊勢神宮(三重県伊勢市)で20年ぶりに行われる「式年遷宮」が、10月2、5両日に迫った。1300年の歴史を誇る盛儀も、今回で62回目。内宮(ないくう)、外宮(げくう)ともに大方の準備が整い、当日を待つばかりだ。「2020年東京五輪」の開催も決まり、沸き立つ日本をさらに勇気づける神事の成功を、国民挙げて祈りたい。(論説委員 渡部裕明)
◇
◆人気の展示施設 「せんぐう館」
伊勢市宇治館町にある内宮。28日午前、多くの神職が出て「杵築祭(こつきさい)」が行われた。正殿の御敷地を衝(つ)き固めて安泰を祈る、完工式にあたる神事だ。8年前の「山口祭」以来、重ねられた遷宮の諸行事も、残り少なくなった。
クライマックスの「遷御(せんぎょ)の儀」は、天皇陛下によって内宮は10月2日夜、外宮は5日夜と定められた。神職らはこれまでの歩みをかみしめながら、腕をふるうのだ。
平成5年の第61回式年遷宮から20年。できあがった新しい社殿からは、ヒノキの香りが漂う。その隣では、古色を帯びた社殿が落ち着いたたたずまいを見せる。2つの社殿が並び立つのは、この時期ならではの景観である。
内宮、外宮を中心に125ある社の建物や装束、神宝類をすべて同じ規格で造り替えるのが、伊勢神宮の式年遷宮だ。持統天皇4(690)年に内宮で初めて行われ(外宮はその2年後)、一時、中断もあったが現在まで続いている。その意味合いは何なのか。
「祭祀(さいし)に求められる、徹底した清らかさを実現することが大きい」と、清水潔・皇學館大学長(神道史)は話す。20年は、常に若々しい状態を保つためのぎりぎりの年限だというのだ。
20年といえば、ほぼ一世代にあたる。子供が父親、母親となり、親だった世代は老いを生きることになる。そうした年月の経過の中で、新しい「生命」や「活力」を獲得する意味が込められているのだろう。
人間の生涯だけでなく、国家や会社なども同じではないか。日本はバブル経済の崩壊後、デフレが続いて社会の活気がなくなった。「失われた20年」とも呼ばれている。
国家として行うべきことを怠り、あたふたするうちに多くの富が失われ、国民生活は低迷した。アベノミクスによって、ようやく上向きの兆候は出ているが、今後は実体として広げていかねばならない。その意味で、「生命」や「活力」の再生をめざす式年遷宮の成功は、大きな契機となるのではないか。
盛儀には伝統を守る一方で、新しい風も吹いている。かける費用は、前回の約327億円を大きく上回る約550億円。外宮勾玉池(まがたまいけ)のほとりには、遷宮の歴史や意義を目に見えるかたちで示す展示施設「せんぐう館」も開館した。
「式年遷宮への関心は、前回とは比較にならないほど高まっている。私たちもそれに応えていきたい」
式年遷宮の広報本部長をつとめる田中恆清・神社本庁総長(石清水八幡宮宮司)は言う。神社本庁も25日から、伊勢神宮に詰めかける内外からの報道陣に対応するメディアセンターを設けた。初めてのことだ。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130930/trd13093011360007-n1.htm
内宮(皇大神宮)の祭神は、天照大御神で伊勢神宮の主神とも言える。外宮の祭神は、豊受大御神で主神への衣食住を司るとされる。参拝者は、まずJR伊勢市駅あるいは近鉄駅から歩いて行ける外宮に参拝し、次いで5km程離れた内宮を参拝する。
私は、6年前の7月に、伊勢市のホテルに2泊してゆっくりと外宮、内宮の順に参拝した。夏休み前の週日であったから、余り混んでいなかった。内宮の参道周辺にある「おかげ横丁」を眺めたり、名物の伊勢うどんなどを楽しんだ。二見ヶ浦まで足を伸ばしてから、近鉄電車で名古屋へ戻った。
当時、内宮に隣接した場所で、式年遷宮の準備が始まっていた。一部の木材が積まれ、新社殿の地割りが行われていた。式年遷宮の準備期間は8年を掛け、装飾品の部分交換もされる。社殿建設に使われる金具や四角状の釘は、全て新潟県三条市の鍛冶職人が作る。飾り紐は、同市の組紐職人へ発注される。こうした形で、建築や建具などの技術保存が営々と行われている。
解体された旧社殿材木は、要望に応じて全国の神社に送られ、鳥居や橋の改修に利用される。それは、昔から実施されていることのようである。
<式年遷宮>に要する費用は約550億円。全て参拝者の浄財と寄付金で賄われるという。伊勢神宮へ参拝する人々は、全国から来ており、年々増えて年間700万人を越す。
何処の神社も静謐で荘厳な佇まいを持ち、参拝者は心落ち着く気持ちになるが、伊勢神宮ではそれに加えて深みのある厳粛さに打たれる。
神社という場所は、宗教施設であるよりも、日本の伝統文化を継承する神域のように私は感じるのである。
内宮10月2日、外宮5日に「遷御の儀」 日本再生の息吹
2013.9.30 11:31
■「20年に一度」生命・活力新たに
伊勢神宮(三重県伊勢市)で20年ぶりに行われる「式年遷宮」が、10月2、5両日に迫った。1300年の歴史を誇る盛儀も、今回で62回目。内宮(ないくう)、外宮(げくう)ともに大方の準備が整い、当日を待つばかりだ。「2020年東京五輪」の開催も決まり、沸き立つ日本をさらに勇気づける神事の成功を、国民挙げて祈りたい。(論説委員 渡部裕明)
◇
◆人気の展示施設 「せんぐう館」
伊勢市宇治館町にある内宮。28日午前、多くの神職が出て「杵築祭(こつきさい)」が行われた。正殿の御敷地を衝(つ)き固めて安泰を祈る、完工式にあたる神事だ。8年前の「山口祭」以来、重ねられた遷宮の諸行事も、残り少なくなった。
クライマックスの「遷御(せんぎょ)の儀」は、天皇陛下によって内宮は10月2日夜、外宮は5日夜と定められた。神職らはこれまでの歩みをかみしめながら、腕をふるうのだ。
平成5年の第61回式年遷宮から20年。できあがった新しい社殿からは、ヒノキの香りが漂う。その隣では、古色を帯びた社殿が落ち着いたたたずまいを見せる。2つの社殿が並び立つのは、この時期ならではの景観である。
内宮、外宮を中心に125ある社の建物や装束、神宝類をすべて同じ規格で造り替えるのが、伊勢神宮の式年遷宮だ。持統天皇4(690)年に内宮で初めて行われ(外宮はその2年後)、一時、中断もあったが現在まで続いている。その意味合いは何なのか。
「祭祀(さいし)に求められる、徹底した清らかさを実現することが大きい」と、清水潔・皇學館大学長(神道史)は話す。20年は、常に若々しい状態を保つためのぎりぎりの年限だというのだ。
20年といえば、ほぼ一世代にあたる。子供が父親、母親となり、親だった世代は老いを生きることになる。そうした年月の経過の中で、新しい「生命」や「活力」を獲得する意味が込められているのだろう。
人間の生涯だけでなく、国家や会社なども同じではないか。日本はバブル経済の崩壊後、デフレが続いて社会の活気がなくなった。「失われた20年」とも呼ばれている。
国家として行うべきことを怠り、あたふたするうちに多くの富が失われ、国民生活は低迷した。アベノミクスによって、ようやく上向きの兆候は出ているが、今後は実体として広げていかねばならない。その意味で、「生命」や「活力」の再生をめざす式年遷宮の成功は、大きな契機となるのではないか。
盛儀には伝統を守る一方で、新しい風も吹いている。かける費用は、前回の約327億円を大きく上回る約550億円。外宮勾玉池(まがたまいけ)のほとりには、遷宮の歴史や意義を目に見えるかたちで示す展示施設「せんぐう館」も開館した。
「式年遷宮への関心は、前回とは比較にならないほど高まっている。私たちもそれに応えていきたい」
式年遷宮の広報本部長をつとめる田中恆清・神社本庁総長(石清水八幡宮宮司)は言う。神社本庁も25日から、伊勢神宮に詰めかける内外からの報道陣に対応するメディアセンターを設けた。初めてのことだ。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130930/trd13093011360007-n1.htm
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