陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

「テロ対策特措法」の延長審議はどうなるか

2007-08-08 02:02:55 | 国内政治:議会と政党
 既に3回延長されていた「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」(2001年11月2日制定・公布;当初2年間のみ)は、今年11月1日で合計6年間の施行期限が切れる。これは、昨年10月安倍政権が1年間延長したもので、現在その再延長が話題になっている。

 この長い名前の法律は、小泉政権時代に制定され、通常は「テロ対策特措法」と呼ばれているが、安倍政権は今秋これを延長する構えであった。一方、小沢民主党は一昨年から延長絶対反対を言い続けてきた。今度の参議院の勢力逆転で、従来通りの延長審議が難しくなった。

 米国としては、この法律に基きインド洋沖に展開して不審船の監視及び洋上補給を続ける海上自衛隊に引き上げられては大いに困る。米国のみならず、NATO諸国艦船が海自の燃料補給に強く依存しているのだ。それで、シーファー駐日大使は小沢一郎民主党代表を説得しようと躍起になっている。

 自民党の中にも、民主党が妥協しやすいように改訂法案を考えた人もいる。だが、4月の日米首脳会談における了解事項であり、国際貢献に関係する内容でもあるから、予定通り安倍内閣は延長法案を衆議院に出せば良いと私は思う。米国に侮辱され、裏切られてはいるが、ここでは少し辛抱したい。衆議院審議で特措法延長を大いに議論して、これを可決、直ちに参議院へ送る。参議院では、当然反対多数でこれを否決するだろう。

 安倍首相は、「民主党の反対で、国際貢献が出来なくなる可能性が生まれたのは、実に遺憾である。再度、衆議院審議において2/3の賛成が得られるよう全力を尽くす」と、特に米国へ向けて強くアナウンスする。慰安婦下院決議に対する報復を小沢民主党が考えたのかと米国政府が想像するのは、彼らの勝手である。その間、六者協議での<拉致問題>取り上げについて、米国の態度が明瞭に見えてくるはずだから、これを睨みながら衆議院再審議を通じて米国の<拉致問題>支持へ揺さぶりを掛ける。こうして結果的には小沢民主党を大いに利用するのだ。

 この問題を切掛けに、安全保障論議を小沢民主党へ突きつけ、憲法改正の是非へ議論を誘導し、それを争点として衆議院解散をする方策が考えられる。小沢民主党は、恐らく憲法9条問題で旧経世会グループ旧社会党グループで意見が分裂するだろう。そうなれば、小沢氏の狭心症持病と相俟って、新たな政界再編が視野に入って来る。この議論を争点として、いざ解散となれば、安倍首相は郵政選挙で離党した自民党有力候補を全て復帰させながら、本格的に憲法改正について国民の審判を求めたら良いと考える。

 ここで安倍首相がぶれると、国内の支持者は勿論、米国からも完全に見放されるであろう。
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2 コメント

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曲り角 (ysbee)
2007-08-11 10:00:43
茶絽主さん、こんにちは。
ちょっとコメントを入れるのが遅くなりましたが、改めまして。
この特措法は、おっしゃるとおり、日本にとって非常に重要な転機だと思います。

イラク戦争は「ブッシュの戦争」かも知れませんが、
ことテロ対策は、米国はもちろん、西欧・アジアにいたるまで
自由主義国家であればすべてリスクを負っている
グローバルな「共通の敵」との闘いだと思います。

私のブログでもひんぱんにテロや戦争の話題を取り上げていますが
それは、一般市民の平和を脅かすこういった人類の敵である
テロリストを撲滅して、1日も早く、
子供たちが安心して将来に希望を持てる社会を
取り戻してほしいからに他なりません。

アメリカは当事国ですから人一倍神経質にならざるを得ませんが、
バリやスペインのテロを挙げるまでもなく、
彼らは罪もない一般市民の命を奪う許せない存在です。

外部から見ると、日本はそういったガードが甘く
テロリストが事を起こそうと思ったら、どこでもフリーパスに見えます。
米国ではどんな小規模な会合であっても、
入場者の身分証明証を提出してチェックします。
小沢氏を始めとする民主党は、
そのへんの国家段階でのセキュアリティに関して余りにも甘過ぎます。

党義や派閥をはるか越えた次元に、この特措法の問題が存在しています。
真に日本の将来を考えるならば、歴史の四つ辻に立っているような現在
間違っても誤った方向へターンして、
国際社会での四面楚歌に陥らないように願うばかりです。

(なかなかコメントが残せませんでしたが、
書き出したら長くなってしまいました。ご容赦ください。)
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テロ撲滅には協力すべき (茶絽主)
2007-08-13 01:40:51
ysbee 様
コメントとTBを有難うございます。
小沢一郎氏は何か勘違いをしていると思いますね。アフガンとイラクでは、国際世論の支持が違うと思います。この問題は、手間は掛かりますけれど、衆議院の再審議で通すべきです。米国は、日本の只今の政治状況に危惧していますが、それなら「慰安婦」決議をさせるべきでなかった。
テロ特措法延長を扱う次の国会は、安保論議も絡んで極めて重要ですね。
アフガンのタリバン勢力に関連して、貴ブログでも取り上げておられたパキスタン情勢、例のモスク問題も絡み、もしタリバン勢力がパキスタンを支配するようになったら、核兵器を持つことになって、実に危険。
米国はそれまでに何とかするのかもしれませんが、パキスタンからインドや中共へ核ミサイルが誤射されれば、大変なことになりましょう。
また、ご教示下さい。
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