陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

ある台湾人の靖國観

2006-08-25 05:01:57 | 靖國関連
 台湾人の地球物理学者、アンディ・チャン氏(米国在住)が明解な靖國論を展開しておられる。私達が曖昧なままにして来た点も、きっちりと述べている。朝日新聞に対する批判は辛辣である。とても参考になると思うので、著者にお断りをして、全文掲載する。

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[AC通信:No.182] アンディ・チャン
◆ [AC論説]No. 182 靖国と民主国家(2006/08/19)

 小泉首相が念願の8月15日の靖国参拝を果たして、日本国内でも賛成の声が高く、国外からも賞賛の声が上っている。靖国問題の討論はこれまで多くの人が意見を述べてきたが、私は外国人なので評論を控えていた。しかし今回は外国人もいろいろ評論を書いているので、私も少し違った視点、民主主義のあり方から見た靖国問題として考えてみたい。

●国ありてこその民主自由
 日本が民主国家となったので人民には言論の自由がある。右翼・左翼はどうでもよいが、日本が存在しているから言論の自由がある。しかし思い違いをしている人もいる。他人の言行を制限するのは非民主的である。首相が靖国参拝をするのは首相本人の所信に基いてやることである。靖国参拝について賛成、反対を論じるのは自由だが、首相が参拝したことについて抗議するのはおかしい。もっとおかしいのは中国の主張を根拠にすることだ。靖国問題は日本人の立場から論じるべきで、他国の主張を正論のように言うのは愚劣である。靖国参拝の反対理由には三つあって、
(1) 中韓の感情を損ねる、
(2) A級戦犯が祀ってある、
(3) 政教分離の原則の反するということ。
 この三つの理由には小泉首相がすでに反論しているので、ここで言う必要はない。反対論者の問題点は、首相の決断が国の存在を維持するのに対し、反対者は「外国の感情を損ねる」から自己卑下をして外国に阿諛する態度である。
 靖国に参拝すれば「正常な日中関係」を結ぶ事が出来ないと言うのは中国側の言い分で、日本国の首相が自国の英霊に詣でる事さえ中国の思惑を考慮しなければならないなら、両国間に正常関係はない。外国の勝手な言い分は許さない、それが首相の責任である。靖国に祀ってあるのは「護国の英霊」であって「侵略の悪霊」ではない。だから靖国に詣でることの是非を論じる必要はなく、外国人の主張を聞く必要もないのである。

●外交官は国の尖兵
 日本は戦争を放棄したという。戦争を放棄しても敵がいないわけではない。しかし、国の防衛が出来なければ侵略を防ぐことは出来ない。平和になって戦争がなくなったら、外国の侵略は外交官が防ぐのである。つまり外交官とは「戦争を放棄した日本国の尖兵」である。外国の無理な主張を前線で防衛するのが外交官である。
 外務省官僚は国益を優先すべきで、相手国の言い分を自国に報告するダミーであってはならない。日本国は戦争を放棄したから、外交官が相手国の無謀な要求を退ける仕事をするのだ。相手の恫喝に怯えて、敵の要求を受け入れるよう本国に進言する必要はない。「外交とは戦闘行為である」と自覚して命を賭して働くのが外交官の本分である。
 中国や韓国は武器で戦争を仕掛けているのでなく、外交で自国の利益を得ようとしている。日本の外交官は「敵国の利益を理解する、尊重する」ことに汲々として、外国の無体な要求に会えば本国に報告して首相に責任を取らせる。これではいけない。外交官は自国の利益を死守するべきであって、負けたら外交官失格である。
 戦争が終って60年も経った。戦争に負けたから、永久に戦争を放棄したから外交で常に自己批判、自己卑下する必要はない。諸国と対等に付き合うのが日本国のあり方で、交渉するのが外交官である。

●政教分離と政経分離
 首相が靖国参拝をするのは政教分離に反するというので最高裁が最終判決を下した。政経分離はどうか。経済界のリーダーが中国要人の警告を首相伝えるとか、首相に「参拝したら大変な事になる」と警告して参拝に反対するのも政経分離の原則に反している。
 経済活動とは双方の利益になるから成り立つもので、片方が利得でもう一方が不利と言うことはない。中国に製造業を移転するのは中国にとっても有利だから出来ることで、日本側だけが有利なのではない。それなら靖国参拝をすれば日本経済が不利になるという中国側の理屈は通らない。それがわからない経済人は失格である。
もし日本企業の中国進出が一方的に日本側に有利だとしたら、中国人は必ず「日本は中国に経済侵略をした」と主張して損害賠償を求めるだろう。
 日本経済は中国進出で大いに潤ったという。だが日本は中国に対し3兆円に上る「経済援助」、別の言葉で言えば戦争賠償をしてきたのである。日本経済が中国から三兆円の利益を得て、それを日本国民に分配したならよいがそうではない。つまり、経済界は中国援助の名義で国民の税金をばら撒いて利益を得たことになる。しかもこの十年間は日本経済の不況で金利ゼロという状況が何年も続いていた、その責任は経済界のリーダーが負うべきである。

●霊魂に階級はない
 生きている人間が自由で平等の権利を持つというのに、死者の霊魂に等級をつけて差別するのはどういうことか。戦争裁判があり、戦犯は裁かれた。すでに裁きを受けて処刑された霊魂を生きた人間が差別する権利はない。
 以下は渡部亮次郎氏の「頂門の一針」(8月10日)からの抜粋である。

【昭和21年4月29日の天皇誕生日に合わせて、28人の「A級戦犯」が選ばれた。ABCとは、ドイツを裁いたニュールンベルグ裁判をそのまま適用したもので、「A」は平和に対する罪、「B」は通常の戦争犯罪、「C」は人道に対する罪だが、ACは事後法。戦争を始めた国の、指導者個人の責任を問うものだった。】

 ところが日本の政治家も中国人、韓国人もABC級の戦犯は「犯罪の等級」と誤解しているようである。靖国反対論には必ずA級は最もひどい罪を犯したとしている。戦後60年も経過したのに、生きている人間が「A級戦犯だから靖国に祀るのは反対」と言う権利がはない。

●分祀とは生きている人間の傲慢である
 分祀の問題は生きている人間の誤った観念に他ならない。生きた人間が死者の霊魂を招致して、何年も経ってから、この人たちの霊魂が「合祀されているのは不都だ」と勝手に判断して、「出て行ってくれ、他のところに移ってくれ」と言えると思うのは傲慢無礼、言語道断である。
 この世の人間が死者の霊に対して、来て下さい、出て行って下さい、と言う【権利】があると思うのは傲慢そのものである。こんな主張をする人に魂があるのか、疑問に思う。ましてや中国人(外国人)の煽動を受けて台湾からやってきた高金素梅のグループ、霊魂とは何ら血族関係のない人たちが勝手に「魂を返せ」と言うのは、相手にする必要もない。靖国神社に対する侮辱である、高金素梅に対し訴訟を起すべきである。

●朝日新聞は中国の代弁者?
 私はふつう朝日新聞は読まないが、今回の靖国問題で朝日の報道ぶりを比較するためアサヒ・コムを読んでみた。読んで朝日新聞は日本の敵であると感じた。朝日は日本の言論を代表せず、中国の言論をそのまま掲載することで敵の侵略に加担している。新聞が参拝反対の論陣を張るのは結構だが、敵の文章を善悪の判断もなく新聞に掲載するのは民主自由に甘えている証拠である。
 8月17日のアサヒ・コムは「人民日報」の論評:靖国参拝に見る誤った歴史観(1)をそのまま掲載しているが、中国人が「中国側の厳正な指摘と善意の忠告に少しも耳を貸さず、日本国内の民衆からの強い反対も、国際社会からの厳しい非難も、中日関係発展の大局も顧みず、8月15日という特別な日に公然と靖国神者を参拝したのである。」と書いてある。「厳正な」とか、「善意」とか、「厳しい非難」とか、バカげた形容詞に満ちた中国人の文章をそのまま掲載する朝日の編集者は日本人なのか中国人か?
 私はこの記事を読んで憤慨のあまり笑ってしまった。笑うしかないのだ。中国人の無知と傲慢を容認して日本国民にこれが正論であるかのように報道する朝日新聞は何処の国の新聞なのか。朝日の編集者は善悪の判断力がない売国奴だといいたくなる。中国の人民日報が日本の「正論」の文章を掲載することがあるだろうか?

●政治家の無知と無思慮
 同じくアサヒ・コムから8月15日「与党内から賛否両論、首相の靖国参拝」と題した記事がある。谷垣財務相は「アジア外交がうまく進まなくなったのは靖国(問題)がある」と指摘し、「私が首相になったら参拝しない」と従来の考えを繰り返したと言う。谷垣財務相の所信かもしれないが、外交がうまく行かなくなった責任は首相ではない。靖国問題を使って日本から賠償金を強奪する中国側に問題がある。小泉首相が靖国問題を政治から切り離して参拝できるようにしたのは立派である。これから一切靖国問題を政治問題としないように努力するのが日本の政治家の責務であろう。
 続いてアサヒ・コムは、【公明党の神崎代表は記者団に「私はかねて、首相、外相、官房長官は参拝を自粛すべきだと申し上げてきた。首相にも直接何回も自粛するよう申し上げてきた。8月15日と言う象徴的な日だけに誠に遺憾だ」と不快感を表明した。】と報道している。
 神崎代表は自由の意味を取り違えているのではないか?神崎氏がどのように考えるかは自由だが、小泉首相にも自由に考え、行動する権利がある。神崎氏には首相の参拝を自粛せよと強要する権利はない。首相が参拝したから不快というのは僭越で傲慢である。
 政教分離を主張するなら、靖国参拝は始めから問題ではなかった。それが中曽根元首相の「自粛」で問題化されたのだった。これを解くのが首相の使命である。中国の恫喝に怯えて靖国参拝も出来ない政治家となっても中日関係は改善しない。
 中華思想と覇権主義を撥ねかえすのが政治家の使命である。中日間の国交がうまく行かないのは中国の横暴にある。浅薄な認識しか持たぬ神埼氏が代表になれるなら公明党は国益を無視しているというほかはない。日本外交がうまく行かないのは一部の日本人が自国の尊厳を損なう行為をしている、恫喝に怯えて売国行為をしているからである。
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ご感想をお待ちしています。bunsho@cox.net まで。
バックナンバーはhttp://www.melma.com/backnumber_53999/
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 チャン氏は頻繁に台湾へ戻られるようで、祖国台湾の行く末を心配しているようだ。愛国者であり、国家のアイデンティティを常に問題にされる。そうしたチャン氏の目から見ると、日本のマスコミ報道の不自然さが気になるのであろう。
 自民党総裁候補の谷垣氏にもしっかり読んでもらいたい文章だと思う。
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