陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
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コソボ自治州は独立宣言を採択:念願の新共和国が発足へ

2008-02-18 06:36:18 | 欧州関係
 2月17日、セルビア共和国・コソボ自治州議会は、セルビアからの独立宣言を本会議で採択、「コソボ共和国」として独立の道を歩み始めた。暫らくは、棘を踏むような状況が続くであろう。日本政府は、早い時期に新共和国を承認する見通し。毎日新聞によると、

コソボ:議会で独立宣言を採択 旧ユーゴは7カ国に分裂

 【プリシュティナ小谷守彦】国連暫定統治下にあるセルビア共和国南部コソボ自治州の議会は17日、特別本会議を開き、セルビアからの独立宣言を採択した。米国や欧州連合(EU)加盟国の大半が独立を承認する見通しだが、セルビアやロシアは反発。国際社会の対応は割れ、対立が深まる恐れもある。

 サチ自治政府首相は、コソボ独立を容認したアハティサーリ国連事務総長特使の調停案に基づき、「独立民主国家になる」と宣言、新憲法の早期採択を約束。宣言は一方で、近隣諸国との良好な関係構築をうたい、少数派セルビア人の文化・伝統の保護を強調した。

 コソボは98年のアルバニア系住民とセルビア人の民族紛争激化から10年を経て、独立国の歩みを始める。社会主義体制だった旧ユーゴスラビアの解体は最終章を迎え、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア、セルビア、モンテネグロ、コソボの7カ国となる。

 地元紙が入手した新憲法草案によると、新国家名は「コソボ共和国」となる。「多民族国家」と位置付けられ、世俗主義を掲げる一方、信教の自由をうたう。

 コソボには約1万6000人の北大西洋条約機構(NATO)部隊が引き続き駐留し、EUが約2000人の文民支援部隊を派遣する。新政府には国連コソボ暫定統治機構(UNMIK)から警察権などが移譲される見通しだが、ロシアが反発すれば手間取る可能性もある。

 セルビアのタディッチ大統領は17日、「コソボ独立は認めない。外交的、法的手段で応じる」と対抗措置を警告した。コソボ北部のセルビア人居住地域では独自に議会を設置しコソボからの離脱を目指す動きも出ている。

 コソボでは98年、アルバニア系武装組織とセルビア治安部隊の戦闘が激化。NATO軍の空爆(99年)を経て国連暫定統治下に置かれた。セルビアは昨年2月に提示されたアハティサーリ調停案を拒否。米、露、EUの仲介も昨年12月に不調に終わった。

 ◇コソボ自治州議会が17日に採択した独立宣言の骨子は次の通り。

 一、コソボ独立はアハティサーリ国連事務総長特使の調停案に基づく。
 一、コソボは民主的、世俗的な多民族国家となる。
 一、北大西洋条約機構(NATO)部隊駐留と欧州連合(EU)の支援部隊派遣を歓迎する。
 一、コソボは国際的責務を引き受け、近隣諸国との国境を保証し、紛争解決の手段としての暴力を放棄する。
 一、地域の平和と安定に寄与し、近隣諸国と良好な関係を構築する。
 一、文化的、宗教的伝統を保証する。

 【ことば】コソボ セルビア共和国の自治州。人口約200万人で、約9割をアルバニア系が占める。面積は約1万平方キロメートルで、岐阜県とほぼ同じ。

 60年代後半以降、アルバニア系住民(大半がイスラム教)と、セルビア系住民(キリスト教のセルビア正教)との民族対立が続き、98年初めに激化。欧米は、ユーゴスラビア(セルビア)に軍撤退を要求、ユーゴ側が拒否したため、99年3月24日、北大西洋条約機構(NATO)軍は、国連安保理の承認を得ぬまま空爆に踏み切った。同年6月、国連安保理決議に基づき、国連コソボ暫定統治機構(UNMIK)の統治下に置かれた。

 セルビア人は11世紀、コソボを発祥地としてセルビア王国を築いたと主張する。文化遺産が残るコソボをセルビア人は心の故郷と位置づけている。一方、19世紀にはアルバニア人の民族解放運動の拠点となるなど、双方にとって重要な土地となっている。

毎日新聞 2008年2月17日 20時08分 (最終更新時間 2月18日 1時33分)
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20080218k0000m030053000c.html


 直近の問題点は、憲法制定は別として

(1)セルビアが武力を用いても、コソボ制圧に出るか
(2)露西亜がコソボ独立を認めるか
(3)領土内に住むセルビア人(スラブ民族)の処遇がどうなるか

にあると思う。周辺国を含め、100カ国以上がコソボ共和国を承認すれば、セルビアが直接武力行使をするのは難しい。そのような状況になっても、露西亜が反対を続けるのかどうか。自国関連で独立運動が盛んな自治州を抱える露西亜としては、直接の利害は無くても、コソボ独立の波及効果を極度に恐れている。

 また、新共和国領土内に住むセルビア人の処遇を杜撰にし、暴動でも起きれば国際的支援は間違いなく冷え込む。新共和国政府の賢明な判断が期待される。コソボ共和国の国連加盟は、時間を掛けて実現すれば良いのではないか。

 中共の出方に要注意である。同国も、自治領を抱えながら非人道的な強権政治を行っているからだ。コソボ効果が、チベットやウィグル等に波及するのを恐れている。民族自決を自治領から強く主張されると、中共の立場は無くなるだろう。また、台湾問題へコソボ効果が影響することも気になるはずだ。

 我が国は、コソボ自治州の独立に対しては中立の立場を維持し、2001年以降、同州に対してこれまで年間5000万円前後のODAを無償供与して来た。これは、独立を機会に、年次を追って増額していくことを望む。

(参考)

 コソボ自治州の独立宣言が迫る
 
 コソボ独立の前夜
 
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