陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

口蹄疫で家畜を殺処分している現場の悲哀

2010-05-17 23:26:01 | 国内政治:内閣
 政府は鳩山首相を本部長とする口蹄疫対策本部を今日発足させた。何とも生温い対応に思える。殺処分される家畜の補償金として、国は1000億円を予備費から出すようだが、カネだけでは済まない問題もある。

 宮崎県は、黒毛和牛の生産地として有名だが、今回の事件で一部の貴重な種牛までが殺処分されている。長い年月を掛けて工夫改良した和牛が絶滅しないことを祈るだけだ。何故、突然に宮崎県にこの厄災が降りかかったのか?感染経路の問題はどうなのか?

 仮に、口蹄疫ウィルスが外国から意図的に持ち込まれたとしたなら、これは一種のバイオ・テロである。

 西日本新聞の社説から、事件の経過概要を知ることが出来る。


「口蹄疫」被害 基幹産業失う恐れすらも
2010年5月14日 10:25

 10年前と何が違うのか。宮崎県内で家畜伝染病の口(こう)蹄(てい)疫(えき)の感染が食い止められない。被害は雲泥の差になった。

 宮崎県の基幹産業である畜産業は大丈夫か。そんな不安も脳裏をかすめる。

 いまから10年前の2000年3月、宮崎市の1戸の農家で口蹄疫に感染した疑いのある牛が見つかった。検査の結果、国内では92年ぶりの発生が確認された。

 翌4月、隣接する高岡町(現宮崎市)の農家2戸で相次いで感染牛が出た。

 なお警戒は続いたが、これ以上の感染は出なかった。10年前は、この3戸で感染をくい止めたのだ。それでも、終息を宣言するまでほぼ50日間を要した。

 今回はどうか。都農町で口蹄疫に感染した疑いのある牛が確認されたのは、先月20日だった。

 翌21日、都農町の南側に接する川(かわ)南(みなみ)町でも感染の疑いがある牛が見つかった。その後も連日のように感染が疑われる事例の報告が続き、今月12日現在で76例に達し、9割が川南町に集中している。

 被害を大きくしたのは、牛に続いて豚にも感染が広がったことがある。養豚農家などの被害は30例余りを数える。

 畜産農家は規模拡大で生き残りを図ってきた。国も県もそれを奨励した。

 農家1戸当たり平均規模は鶏が最多で、豚、牛と続く。宮崎県では豚の平均飼養頭数は2000年の842頭から07年には1386頭に大幅に増えている。

 これも裏目に出た。1頭でも感染の疑いが持たれれば同じ農場の牛や豚はすべて殺処分しなければならない。

 被害が集中する川南町では、豚1万5千頭規模のほか、8千―3千頭など大型農場で疑い事例が出て、合計7万頭超の豚を処分しなければならなくなった。

 人には感染しないし、万が一、感染した肉を食べても人体には影響はない。家畜間の感染拡大を阻止するためだが、生産者は身を切られる思いだろう。

 川南町は「畜産王国」を自負する。

 町のホームページには「(畜産の)歴史は古く、藩政時代から続く。そんな伝統が川南の畜産技術を高めてきたのであろう。高品質、安定供給には定評があり、横の連帯感も強い」などとある。

 05年度の統計では372戸の畜産農家で粗生産額は152億円だった。

 町の基幹産業が壊滅的な打撃を受けている。まずは口蹄疫を完全に封じ込めることに全力を挙げるしかない。終息のめどを付け、休止中の家畜市場など流通を一日も早く再開する必要がある。

 そして、失意の底にある生産者に再建に向けて立ち上がってもらわなければならない。国の手厚い措置も必要だ。もっと広く励ましや支援の手が差し伸べられることも有効ではなかろうか。

 女子プロゴルフの横峯さくら選手が賞金1200万円全額を宮崎県に寄付するという。誰でもできることではないが、畜産王国・宮崎を支えるため、物心両面からの幅広い支援を一層強めていく時だ。
=2010/05/14付 西日本新聞朝刊=
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/171540


 病気に掛かった家畜は、牛が約1万頭、豚が7万4000頭であるが、大量殺処分を行う現場には悲哀が漂う。


「ごめんね」頭さすり薬剤注射 豚7万4000頭処分 宮崎・川南町ルポ
2010年5月17日 01:23

 宮崎県で猛威を振るう家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」。感染、または感染が疑われる施設は100カ所を超え、殺処分の対象は牛と豚で計約8万2千頭に及ぶ。手塩にかけた家畜を目の前で処分し、忍び寄るウイルスの影におびえる‐。被害が集中する川南町は、豚だけで約7万4千頭が処分対象となり、農家の間に絶望的な空気も広がっている。胸を裂く叫びを聞いた。

   ■   ■

 子豚が吸い付くと、周りの水泡がつぶれて乳房が黒く染まる。痛いはずだが、それでも母豚は、つめがはがれた足で立とうとし、乳を飲ませようとする‐。

 「もう、こんなつらい光景は見たくない」。養豚場経営者(63)は、感染した母豚の様子がまぶたに焼きついている。

 最初は小さな異変だった。鼻と足から血を流している母豚2頭を見つけ、家畜保健衛生所に連絡した。そこから爆発的な速さで広がった。抵抗力が弱い授乳中の子豚は、前日の元気がうそのように翌朝はあちこちに転がっていた。

 数日後に殺処分される豚たちに手渡しでえさをやり、腹いっぱい食べさせた。処分が始まるまでの8日間をとても長く感じた。約700頭がいた豚舎は今、骨組みだけが残る。

 「疲れた。今後のことも考えんといかんが、今は希望が持てない」

   ■   ■

 「畜産は人の命をつなぐために動物の命を奪う仕事。でもこんな形はいやだ」。別の養豚場経営者(61)は、数日前に約600頭を処分した。

 殺処分は鎮静剤、薬剤の順番で注射する。若くて経験の浅い獣医師は、針が血管にうまく入らず「ごめんね、ごめんね」と豚の頭をさすりながら2本目を打った。眠るようにしゃがみ込み、息絶える豚を見ていて、涙が止まらなかった。

 「これでもうウイルスを出す心配はない。迷惑を掛けんですむ」。すべてが終わり、悲しみと奇妙な安堵(あんど)を感じた。埋めた場所は自宅から歩ける距離。しばらくは毎日、お参りに行くという。

   ■   ■

 「きょうも何とか生き延びたか」。豚約7千頭を飼育する遠藤威宣さん(56)は毎朝の観察結果を聞き、こんな思いを繰り返す。「あの農場が検査に出したそうだ」。感染疑いを調べる遺伝子検査の情報が入るたびに身を削られるようだ。

 遠藤さんは町内のJA尾鈴(おすず)の養豚部会長。世話役として動き回る立場上、ウイルスを持ち帰る危険があり、自分は農場に立ち入れない。子豚は乳を飲んでいるか、熱はないか…。観察を任せた長男の太郎さん(33)が日ごとに憔悴(しょうすい)していくのが分かる。もし感染した場合に、従業員8人をどう処遇するかも悩む。

 遠藤さんは、振り絞るように言った。「今一番大切なのは農家を安心させること。私たちは『早く終息させるためにこうする』という国や県の方針を聞きたいんだ」

=2010/05/17付 西日本新聞朝刊=
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/172037


 私も僅かながら、宮崎県へ義捐金を送ろうと思う。それから、宮崎県産品(焼酎など)をなるべく多く購入し、間接的協力に努めたい。



(参考)

 口蹄疫被害が拡大しつつある
http://blog.goo.ne.jp/charotm/e/6479024133af0458ab5b4f629fe3d2d7

 宮崎県の口蹄疫流行(追記あり)
http://blog.goo.ne.jp/charotm/e/99403178dfa8a74793b3cf9fd05d4aff

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