陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

小沢民主党代表辞任の波紋

2007-11-05 10:07:22 | 国内政治:議会と政党
 11月1日、テロ特措法期限切れで海自は国際世論に惜しまれながら、インド洋から退場した。そのテロ特措法審議を人質にし、安倍政権退陣に貢献(?)した民主党代表小沢一郎氏は、意気揚々<のほほん>福田首相を相手に、第二回党首会談に臨んだ。

 そこで話し合われたのが、小選挙区制を崩すような自民党と民主党の<大連立構想>である。この大連立構想を最初に持ちかけたのは、福田首相か、あるいは小沢代表か。

 いずれにしても<大連立構想>に乗り気になり、党に持ち帰った小沢氏を待っていたのは、民主党役員会の強烈な反撃であった。ロイターの記事が要領良く事情を伝えている。

小沢民主党代表が辞任表明、連立拒否決定で不信任と判断
2007年11月4日(日)19:11 (ロイター)

 [東京4日 ロイター] 小沢一郎民主党代表は4日午後、緊急の記者会見を開き、鳩山由紀夫幹事長に辞職願いを提出し、進退を委ねたと述べた。その理由として小沢代表は、福田康夫首相との党首会談やその後の展開で政治的な混乱が生じたことに対するけじめを付けるためと説明。合わせて政策の実現のために連立を組むことが得策と判断したが、役員会で支持を得られず、不信任されたことと同じであると受け止めたと語った。

 また、党首会談で話された中身に関連して中傷報道が多い、と発言。代表に留まると党にとってマイナスだと判断した、と述べた。

 <離党するとは言っていない>

 辞任に伴って民主党も離党するかとの質問に対し「離党するとは言っていない」と述べ、離党しない意向を明確にし「今後の政治活動のことは、ゆっくり考える」と語った。さらに「一議員になっても、次の選挙に全力投球することに変わりない」と述べた。

 小沢代表は会見の冒頭で、2日に行われた福田康夫首相との党首会談において、福田首相から要請があった連立政権樹立をめぐって政治的混乱が生じたことのけじめをつけるため、4日に鳩山幹事長に党代表の辞職願いを提出したと語った。

 <連立実現なら給油新法成立にこだわらず、小沢氏が首相発言を紹介> 

 民主党は2日夜の役員会で、小沢代表が党首会談から持ち帰った連立の要請を拒否したが、小沢代表によると、党首会談で福田首相は、安全保障政策について、
1)国際平和協力に関する自衛隊の海外派遣は、国連安全保障理事会もしくは国連総会の決議によって設立、認められた国連の活動に限る、2)新テロ特措法案(給油新法)は、連立が実現するならば成立にこだわらない--ことを確約した。

 これについて小沢代表は「日本のこれまでの無原則の安保政策を根本から転換し、国際平和協力の原則を確立するもの」と評価した上で、「それだけでも政策協議を開始するに値すると判断した」と語った。

 <連立で政権実績、民主党政権への早道と判断>

 さらに小沢代表は、衆院で圧倒的多数を占める自民党と連立することで、先の参院選において国民に約束した政策を実行することが可能になるとの考えを示すとともに、政権の一翼を担って政権運営の実績を示すことが、民主党政権を実現する近道と判断したと述べ、「政権への参加は、悲願である政権交代可能な二大政党制の定着と矛盾しない。むしろ民主党政権実現を早めることで、その定着を実現できる」と力説した。

 ただ、こうした小沢代表の主張が党首会談後の役員会で退けられ、「私が代表として選任した役員から不信任を得たに等しい」ことが辞任の理由と説明。

 最後に小沢代表は、党首会談をめぐる一連の報道の中で、今回の連立政権構想を小沢代表が主導したなどとの論調があることについて「全くの事実無根」と強く否定。報道機関に対して「私を政治的に抹殺し、民主党のイメージを決定的にダウンさせることを意図した誹謗中傷であり、強い憤りを感じる」と非難した。

 参院選で民主党を大勝利に導いた小沢代表の辞任表明で、民主党内が混乱した状況になるのは必至とみられる。当面、民主党執行部は小沢氏の慰留に努めるとみられるが、小沢氏が辞任の意思を撤回しない場合、後継代表を選出することになるが、国会開会中という制約の中でどのような展開になるのか全く不透明な情勢となっている。

 さらに焦点となっている給油新法への対応や、この先の国会運営に関する方針がどうなるのかといった点もわからなくなってきた。小沢代表は4日の会見の中で、大連立の話を含め、政策の実現のために民主党の執行部は今後、どのようにしていくのかと質問され「それは私が話をすることではない」と述べた。
 (ロイター日本語ニュース 伊藤 純夫記者)
http://news.goo.ne.jp/article/reuters/business/JAPAN-287021.html


  この辞任ニュースを聞いた町の人達は、戸惑いを隠さない。産経ニュースによると

「無責任」「これからどうなる」 小沢氏辞意に疑問の声
2007.11.4 20:23

 小沢一郎民主党代表の突然の辞任表明に、各地の有権者からは「無責任」「理解できない」と批判が出る一方、政権交代を期待していた支持者からは、民主党の今後を心配する声も上がった。

 東京・銀座に買い物にきていた東京都台東区、無職、根岸誠さん(71)は「小沢さんは参院選で言ったことを実行せずに辞めるのは(有権者に対して)無責任だ」、千葉県柏市、無職、大登正太郎さん(66)も「菅(代表代行)も鳩山(幹事長)も役者が弱いから、これで民主党は政権が取れなくなる」と厳しく意見。

 茨城県牛久市、会社員、臼井克彦さん(44)は「やめなくてもよかったのでは。(代表を続けて)もうちょっと自民党を壊すところを見たかった」と残念がった。

 東京都江戸川区、主婦、若月里絵さん(32)は「安倍(晋三前首相)さんの辞任に比べれば、小沢さんの辞任は(連立失敗の責任を取った)けじめがついていると思う」と理解を示したが、大阪・ミナミを歩いていた大阪市の無職、木下拓二さん(56)は「ようやく参議院で過半数の議席を取ったばかりだったのに。理解できない」と首をひねった。

 小沢代表の地元、岩手県奥州市に住み、長年小沢氏を支持してきたスーパー従業員の女性(54)は「結果が何も出ていない中での辞任は残念だ」と無念そう。同市の主婦(53)は「党をつくっては壊してきた人。今回の辞任もそれと同じ流れ」と手厳しかった。

 7月の参院選で民主党に投票したという名古屋市西区の会社員、山本則幸さん(49)は「自民党に対抗してくれると期待していたのに。一体どこに投票すればいいのか」。

 福岡市の繁華街・天神では同市の小串洋一さん(58)が「混迷する政界の中で、別の政界再編成の考えも隠れているのでは」と推測していた。
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/071104/stt0711042023011-n1.htm

 地方紙・山形新聞も県内の様子を次のように伝える。

県内の民主関係者に衝撃 小沢代表辞任表明
2007年11月4日(日) 22:55 山形新聞

 「党内混乱のけじめをつける」として、4日に辞任を表明した民主党の小沢一郎代表の決断は、県内の民主党関係者に衝撃を与えた。「代表に責任はない」「辞めるべきではない」-。いずれも驚きと困惑の表情を浮かべた。

 同日午後2時ごろ、座談会に向かう途中の車の中で一報が入ったという県連会長の近藤洋介衆院議員は「福田康夫首相からの連立要請の申し出に対し、党として役員会の協議を踏まえて拒否したのは手続き的にも正しく、参院選の民意を踏まえたものだ。小沢代表に責任はない」とコメント。「現段階では、代表の辞表は正式には受理されていない。同僚議員などと打ち合わせが必要だ」とし、急きょ東京に向かった。

 舟山康江参院議員は午後2時半ごろ、テレビのニュース速報で知り、驚いたという。福田首相が連立を申し出たのは政権運営がつまずいたからだと指摘し、「(提案を持ち帰った小沢代表の判断は)あらゆる選択肢を除外すべきではなく、正しい。連立は国民の理解は得られないが、国会が停滞している中、現実的にはあり得るとも感じる。難しい判断だと思う」と説明。「今は、政策実現のために一致団結する時。辞めないで続けてほしい」と繰り返した。

 和嶋未希県連幹事長は「小沢代表の(連立提案持ち帰りなど)一連の行動は間違っていないと思うが、辞任はあまりに唐突。情報も少ないので、今後の推移を見守りたい」と語った。

 一方、自民党の県選出国会議員は4日、小沢氏の辞意表明を「当然だ」などと冷静に受け止めた。

 党県連会長の遠藤利明衆院議員は選挙区内を移動中に一報を得た。「大連立に党で反対された段階で持たないと思った。驚きはなかった」とした。小沢氏の記者会見での説明には、「参院選以降『自民は下野すべし』としていたのに、政権担当能力がないから連立を考えたなどの説明は矛盾に満ちている。ほかに理由があり、マスコミに責任をなすり付けて逃げた印象だ」と批判した。

 加藤紘一衆院議員は鶴岡市内で開かれた農業関係者との会合中、速報に触れた。「当然辞めると思っていた」と語り、予想された結果であると強調。「大連立」をめぐる経過を指して「あんなどでかい話を断らないで党に持ち帰り、結局まとめられなかった。その段階で辞めるしかなかった。そりゃそうですよ」と述べた。

 地元・米沢入りしている遠藤武彦衆院議員には午後1時半すぎ、東京事務所の秘書から一報が伝えられたという。本人はコメントしなかった。

 岸宏一参院議員は「真相は分からないが、党首会談は国民と国益を考えた行動という、小沢氏の本意が民主の皆さんに理解されなかったのかなと思う」とした。

 「何でも反対する党では駄目だという小沢氏と、ほかの党幹部との意見が合わなかったのだろう。当然の結果」とは、自民と連立を組む公明党の寒河江政好県本部代表。さらに、後藤太刀味共産党県委員長は「先の参院選で、自民と民主は互いに激しい批判を行った。ほとぼりも冷めないうちの『大連立構想』は国民の声を足げにする民意無視の極みであり、小沢氏の責任は大きい。辞任は当然だろう」との談話を発表。広谷五郎左エ門社民党県連代表は「小沢氏は地方に思いをはせる政治家と思っていたので残念。外交防衛問題の論議は必要だ。『大連立』は初めから受けないだろうと考えていたので、民主に不信感はない」と話した。
http://www.yamagata-np.jp/newhp/kiji_2/200711/04/news20071104_0056.php

同じく、地方紙・新潟日報は新潟県民の意見を次のように報道。

小沢氏に県民から驚き・批判

 民主党の小沢一郎代表が4日、福田首相との連立協議をめぐる問題で辞意を表明したことに、県民からは驚きや説明不足と批判する声が上がった。

 弥彦村矢作の大学生、菅野みかりさん(18)は「辞任に驚いている。身勝手だなと思う。けじめと言っているけど、辞めればいいとは思わない」と厳しい。

 上越市清里区の団体役員、梨本隆さん(67)は「党首会談の内容をもっとオープンにするべきだ」と注文をつけ、「民主党は自民党とは相いれない政策で参院選を勝った。(連立模索は)有権者を裏切ることになるのではないか」と批判した。

 同市下源入の看護師、小池香織さん(23)も「ライバル同士が連立政権を組み、同じ方向に進んでいけるのか」と疑問を呈し、「次の選挙に向けイメージが悪くなる。本当に今辞める必要があるのか」と話した。

 新潟市江南区亀田東本町2の会社員、冨樫亜紀さん(33)は「民主党内をまとめられる人が、小沢さんのほかにいるのか。次の選挙では、今回の参院選のようには勝てないのではないか」と淡々と話した。

 一方、長岡市美沢1の司法書士、長谷川弘さん(65)は「小沢さんは最初から覚悟を持って党首会談に臨んだと思うから、潔い責任の取り方だ」と納得した様子。同市(栃尾)山口、会社員石丸淳さん(56)は「民主党の追求で、年金問題の議論が活発になって良かったが、民主党の代表が替わっても生活に影響する訳じゃない。安倍前首相の辞任ほど、騒ぎにならないだろう」と冷めた表情だった。
新潟日報2007年11月4日
http://www.niigata-nippo.co.jp/pref/index.asp?cateNo=1&newsNo=7675


 上記多くの人達同様に、正直言って私も小沢氏の辞任表明には驚いたが、7月参議院選の勝利で小沢代表は我の能力を過信し、党内意見を軽視するようになっていたのだろう。だから福田首相には<大連立構想>を承諾、党内で説得すると伝え、役員会での反発など考えてもいなかった。それが自分の選任した役員達に否定されたものだから、衝撃は大きかった。

 こうなると小沢氏の性格からして、代表職を退くより他は無くなった。民主党内でも小沢氏に対する若手議員の反発は大きいようで、辞任撤回の可能性は少ない。これを機会に、小沢氏が民主党参議院議員を20人ほど連れて離党し、新党を結成して自民党と連立すれば、ねじれ国会の現象は解消するわけで、その選択肢は当然考えられる。

 <大連立構想>は、読売新聞社の渡邊恒雄会長(82)のシナリオに乗って新五人組みが仕掛けたとの話が流れているが、大いにあり得る内容だ。総選挙を行っても、民主党単独過半数には達しないと先読みした小沢氏がそれに乗って首相の座を狙ったと考えられる。その場合、小選挙区のままであると候補者の調整は大変な困難を招くから、中選挙区制度に戻す議論が出る。戻せば、2世、3世議員が増えて、国政は停滞するのは自明だ。

 現在の小選挙区制は、小沢氏らが中心になって進め、これを1994年に実現したものである(1996年の総選挙から適用された)。それを自ら壊すような大連立に乗っては、民主党員ならずとも多くの有権者は戸惑うであろう。

 日本では、まだ欧米流の二大政党スタイルが馴染まないのかもしれない。それは雰囲気に飲まれる有権者が多いことや、政治に無関心な有権者が多いことと関係がある。有権者の質が低ければ、候補者もおかしなのが増える。普通選挙法が施行されたのが1925年(大正14年)であるから、選挙に対する民意の成熟度を増すためには、なお時間が必要と見るがどうであろうか。そのためには、捏造をしない、しかも他国の影響を受けないマスコミが育たないと愚民化は進む一方である。

(参考)

 流行歌「傷だらけの人生」:唸る小沢一郎氏の心

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