Ed's Slow Life

人生終盤のゆっくり生活をあれやこれやを書き連ねていきます。

人権侵害では?

2012年09月05日 | Weblog

 

残っている兄弟6人の上から二番目の兄が、この2月から入院したままである、と
他の兄弟から連絡があったのは一月ほど前だった。

早めに見舞いに行きたかったのだけれど、予定が詰まっていてなかなか都合が
つかなかった。昨日ようやく午後から会社を早退して病院へ行った。

川越の勤め先からは車で30分ほどの、志木にある「さくら記念病院」である。既に
見舞いに訪れた弟と姉から、凡その話は聞いていたが、一瞥して何とも怪しげな
病院ではある。

駐車場に車を停め、直ぐの入口から入ったが受付が見当たらない。向こうからくる
職員らしき人に尋ねたら、道路沿いの正面へ回ってくれと云う。受付で兄の病室を
訊いて3階へ上がった。

病室は二人部屋で、奥のベッドに殆ど動きのない年寄が寝ている。兄はEdを見て
すぐに弟だと認識はしたが名前が出てこない。名前を言って「分かるか?」と訊くと
大きく頷き「分るよ!」いう。こちらの質問にも真面に返事が出来るし、話すことも支
離滅裂というわけではない。ただ兄弟の名前などが思い出せなかったり、弟のEd
を自分の子供Aと取り違えて話したり、多少のボケはある。

しかし、先ず第一に驚いたのは、兄の着せられている囚人服のようなツナギと、そ
の服に縫い付けられている頑丈なベルト、そしてベルト両端はベッドに固定されて
しまって兄は半身が起こせるだけで全く自由が奪われているのだ!

ベルトを留めているボタンを外してやろうと」したが、磁石式のロックがかかっている
特殊な留め具で鍵がなければ外しようがないのだ。これでは虐待ではないか!

兄はしきりに自分の家に帰りたがって、すぐ近くだからEdと一緒に帰るという。
兄は
ベッド脇の内線電話を取ってナース・ルームを呼んだ。「弟が来ているので、話した
いことがある」というと「ハイ、今すぐ行きます」と返事だけはするけれど、来る様子が
ない。

2、3度同じことを繰り返したが看護婦はカラ返事だけで誰も姿を見せない。明らか
にボケ老人のたわ言として無視しているのだ。兄は「誰も真剣に俺の話を聴いてく
れない・・・お前が真剣に聴いてくれてうれしいよ」とボソッという。

Edはナース・ルームに行って大声で「誰か来なさい!」と怒鳴った。数人の看護婦
が吃驚して出てきた。「婦長か責任者を318号室へ寄越しなさい!」というと、呼ん
できますといって一人が慌てて部屋を出て行った。

それから5分ほどして、ようやく責任者(室長?)がやってきた。 Edはまず
「何故ベルトで縛り付けているの!これでは人権侵害ではないか!」
「・・・ご家族の同意を得ていますから・・・」
「そういう問題ではない!病院が人間の自由を奪うようなことは許されないぞ!」

「・・・いろいろ経緯がありまして・・当方では患者さんに事故など起きないよう24時
間お世話する必要が・・・」
「何をバカなことを!24時間世話しなくて済むよう縛り付けているクセに!」

「・・・・・・・・」
「とにかく、このベルトを外しなさい!」

Edの剣幕にたじろいだらしく、最初は何だかだ云って外そうとしなかったベルトの
胸のボタンを一つだけ外した。それだけでも兄の自由度は大きく変わった。

とんでもない病院である。どう見ても兄はもうロクなリハビリも受けていないせいか
筋肉が痩せてしまって徘徊も出来そうにないのにベッドに縛り付けておくなんて!
兄の自宅はすぐ近くなので、家人を呼びに行ったのだけれど生憎留守でEdは出
直すことにして引き上げた。

                                    

夜、兄嫁に電話して、すぐ自宅に引き取るように勧めた。しかし彼女は「今すぐと
いう訳には・・・」とノラリクラリ。もう既に半年もあんな状態で放っておきながら!
どうやら問題の本質は家族の冷淡さにあるようである。

これでは兄弟といえども、勝手に彼を退院させる訳にもいかず、ことは簡単では
ない。しつこく兄嫁と同居の子供を説得するしかない。

とんだ身内の恥さらしである。困ったもんだ・・・