コキュートスの記憶

日々の出来事とか戦果(買い物)とか。
主にガンダムを中心にしています。

ヘルメス夢幻 part8

2014年04月22日 | ゲームブック
前回は、サザダーンから何とか抜け出す方法を探して来ました。
今回は、やっとサザダーンから脱出いたします。

102:
タラップの角度は急だったが、無重力なのでそれ程気にならない。問
題なのはその狭さだった。こういう場合は重力がある方が体の制御が
簡単でいい。着いた先は拾い通路の一角だった。
タラップの踊り場にナオミを座らせる。
・周囲を見回したキミは、あるドアのプレートに目を止めた:027

027:
─艦内情報検索室?
その時、ドアが開いてひとりの兵士が出て来た。
ドアが閉まり、横にロックOKのサインが出た。
考えるより先に体が動いた。壁を蹴って宙を飛び、後ろから兵士に体
当たりを喰らわす。慣性で流れて行きそうになるのを壁の出っ張りに
爪先をかけて止めながら、右腕を兵士の首に巻きつけ、声を出せない
程度に締め上げる。
「大人しくしろ。今オマエが出て来た部屋に用があるんだ、中のヤツ
にドアを開けさせな」
兵士の耳に口を押し当てるようにして囁きながら、キミは通路の先に
目を走らせる。誰かが来たらお終いだ。
キョトンとしているナオミを左手で招き、兵士をドアの前に立たせる。
右腕を少し締めてやると、兵士は震える手でドアの横のキーを叩いた。
「誰だ?」
眠そうな声がスピーカーから聞こえる。
「オレだ…」
ドアがさっと横に開いた。中に滑り込み、後ろ手にキーを叩いてドア
を閉じる。
「やけに早いじゃ…」
コンピューター端末の前から振り向いた男がキミを見て息を飲んだ。
「妙なマネをするなよ、相棒の首がポッキリいくぜ…ナオミ、適当な
モンでアイツを縛っとけ」
返事がなかった。ナオミがいない。
「アレ?」
もう一度開閉キーを押す。ドアが開いてナオミが転がり込んで来た。
「どうして!」
「ゴメン、その…」
キミは言葉を切った。端末の前に座った男がソロリとコンソールの下
に手を伸ばす。
捕らえた兵士を突き飛ばし、その首筋に手刀を叩き込んで気絶させる。
警報装置を作動させようとした兵士を椅子から引き摺り降ろし、頭を
床にぶつけてやる。3回目でソイツも大人しくなった。
一息ついて振り向くと、ナオミがキミを睨みつけていた。
「もう少しで鼻の先挟まれるところだったんだから!」
仕方ないというように大きく息を吐いたナオミは、大小のディスプレ
イで一杯の部屋をグルリと見回した。
キミは気絶している2人の軍服を脱がせた。
ナオミは端末の前に座り、キーボードを叩き始めた。
「おいっ、メインコンピューターに繋がってるんだぞ!下手に弄ると
CICやブリッジが気づくぞ」
「上手く弄るから大丈夫よ…第3主配電室の復旧は30分後の見込み、
ですって」
自慢気にナオミがキーボードを叩くと、ディスプレイの文字がかなり
の速度で流れた。キミの頭の中で何かが閃いた。危険だが、ここまで
は上手くいった。ツキがあると思ってやってみよう。
「モビルスーツデッキのスケジュール、出せるか?」
数秒とかからず、ディスプレイは新しい文字で一杯になった。
「1415時、TFS125…1530時、TFS195…これは上
空警戒のヤツだな」
「乗って逃げるの?」
「これだ…。1600時、AMX003T…1機─DE368新型バ
リュート試験のための降下」
「どうして、これなの?」
「ナンバーにTってついてるだろ?複座の練習機だよ。バリュートの
試験って言うから多分、加速時計だの何だのを教官席に積むんだろ」
「予定時間を早い時間に書き換えれば?パイロットの振りをして…」
「出来るのか?」
「出来ると思う。仕事先の領事館でね、やったことがあるの」
「じゃ、1530時にしといてくれ。ついでにこっちにこの艦と積ん
でるモビルスーツのデータを出して…」
キーボードを叩いて先ず艦の状況をチェックする。
このサザダーンは現在減速中で、42分後の1504時に高度21万
の地球周回軌道に入る。1530時に発進、普通に減速して行けば、
ユーラシア大陸のどこかには降りられそうだ。
艦内状況に目を移したキミは眉を顰める。
「停電の原因は事故?オレたちの脱走を報告していないのか?」
これだけ大きな艦には様々な任務を帯びたたくさんのグループが一緒
くたに詰め込まれている。キミを捕らえるだけが目的ではない訳で、
現にHLVの投下や新型バリュートの試験もやっている。恐らくもっ
とたくさんの任務がある筈だ。
その管轄官の関係というのは必ずしも上手く行くモノではない。捕虜
を逃がしたという不面目をあのミディが身内で解決しようとしたとし
ても不思議はない。
「ねぇ…」
ナオミが声をかけてきた。
「モビルスーツのことはよく知らないけど、このデータだと上空警戒
とかに飛んでいるのはガ・ゾウム、AMX008ってタイプなの」
「私たちが乗るAMX003T、003と008。ひょっとしたら、
こっちは物凄く旧式なんじゃないの?」
AMX003T、ガザC複座練習機(ガザT)のデータを呼び出した。
胸部に教官用のコクピットが増設されている他は、ガザCと諸元は同
一だ。ちゃんと武装もしている。
次にこの艦に搭載してあるモビルスーツのリストを出す。
様々なタイプがあったが、だいたい2種類に大別できた。ガ・ゾウム
やズサと言った、大出力ビームやミサイルを主兵装とする長距離支援
向きの機体と、機動性の高い格闘戦用の機体だ。
後者に当たるバウと言う機体も、キミの知らないタイプだった。元は
上半身とか半身が分離する特殊なタイプらしいが、この艦に積んでい
る機体は分離機能を廃したAMX107bis、バウbisとかいう
普及版のようだ。
ガ・ゾウムだのズサだのが距離を開けて撃って来る分には何とかなる
が…このバウbisは要注意だな。腕を組んだキミは、リストの最後
にあった機体に目を止めた。
サイコミュ搭載モビルスーツ?ドーベンウルフ…HLVによって地上
輸送予定…。キミはミディの顔を思い浮かべた。
30分後、キミはノーマルスーツを着てエアロックを潜り、真空のカ
タパルトデッキに出た。短機関銃を持った警備兵が肩に手をかける。
「どこへ行く?」
「バリュートの試験ですよ。DE368号機」
IDカードを警備兵に渡す。そろそろ発見されるであろう検索室の2
人が持っていたヤツを、ナオミが書き換えたモノだ。
警備兵がカードを手持ちのリーダーに差し込んだ。小さなディスプレ
イにカードに記録されている情報が表示される。
「30分後には地球か。ウラヤマしいよ」
暫くすると、ガザTがエレベーターで運ばれて来た。
胸部の教官席のハッチを開くと案の定、中は測定機器で一杯だった。
「おい!技術屋はどうして来ないんだ?」
下で怒鳴る警備兵を無視して頭のコクピットに飛び込む。ハッチを閉
じてデッキを見回すと、一段高い通路のエアロックからナオミが走り
出て来るところだった。
右手でナオミを拾い上げながら、バスターランチャーのセーフティを
解除し、エレベーターの辺り目がけて発射した。広がる爆煙から逃げ
るように、ガザTがカタパルトも使わずに発進した。
「ナオミ、乗ったか?」
「ジャマな機械退けたところ…うん、ベルトも締めたわ」
突然、目の前の宇宙が消えた。
キミは砂丘の間に沈む太陽を見た。砂は夕陽で赤く染まり、燃えるよ
うな空の色と境もなく続いている。それは涙が出る程に美しかった。
一瞬だった。キミが我に返った時、モニターには地球が輝いていた。
─何だ?今のは…
『助けて!』
キミは頭を振った。
「何か言った?」
─またか!いつもいつも肝心な時に…
キミは軌道計算に意識を集中しようとした。現在の高度は21万メー
トル、ここから徐々に減速して行って高度を下げなければ…。
減速が不足すると、バリュートを開いても燃え尽きてしまう。
やたらにモビルスーツ戦をやれば、減速のための推進剤が不足し、無
事に地球に降りることは不可能になる。
モニターには2機のガ・ゾウムが映っていた。2機共まだこちらが敵
機だとは思っていないようだ。
─ならば、逃げる!
減速を開始しようとした時、真上のガ・ゾウムが突っ込んで来た。
・構わずに減速する:046
・ビームサーベルを抜く:035
・ナックルバスターで狙撃する:201
追っ手がかかったとこで、次回に続きます。
コメント (2)
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