コキュートスの記憶

日々の出来事とか戦果(買い物)とか。
主にガンダムを中心にしています。

ヘルメス夢幻 part6

2014年04月08日 | ゲームブック
前回はVガンダムをMS形態に変形させたとこで終わり、
今回はその続きなのですが、その白昼夢は中断されます。

206:
ビームサーベルのロックを解除した途端、警報が鳴った。
「何だ?」
マルチモードディスプレイで赤い表示が点滅している。
「白兵戦オートプログラム入力不完全?」
咄嗟に右腕のオート回路を閉じ、マニュアル操作で腰のラックから飛
び出したサーベルを握る。全周囲モニターが灰色の闇に閉ざされた。
雲に入ったのだ。赤外レーザーが周囲を掃くように照射され、パッシ
ブセンサーも作動を始める。
「ビームサーベルが使えないじゃないか!」
「マニュアルでやれば何とか…」
プログラムを呼び出すと、マルチモードディスプレイをリストが流れ
た。完全ではないが、基本的な動作なら何とかなりそうだ。
再び警報が鳴り、リストがパッと消えた。代わりに接近して来るリッ
クディアスの方位と速度が表示される。
─後ろか!
ビームサーベルを構えたリックディアスが背中に斬りかかって来た。
・マニュアル操作でビームサーベルを使う:101
・オートにして不完全なプログラムに頼る:050
・前にジャンプして逃げ、ビームライフルを構える:116

101:
オートのメインスイッチを切った。これで総ての動作はマニュアルで
操作される。前にジャンプしながら空中で振り向く。
膝をついて姿勢を低くし、リックディアスの両腕をビームサーベルで
掬い上げる。リックディアスの両腕は肘関節より少し前で切断された。
後退しようとするリックディアスに追いすがり、胸部にビームサーベ
ルを突き立てる。
・爆発が起こり、大量の塵を再び巻き上げた:182

182:
ホッと息をつき、スティックから手を放してシートに凭れる。後ろか
らリエがソッとキミの首に腕を絡めて体を寄せて来た。
「暫く眠ろうよ…」
「眠る?そうすれば現実に戻れるのか?」
キミは胸の上のリエの手に自分の手を重ねた。
「ナオミが…待ってるもんな」
「お願い」
リエの手がギュッと握り締められた。
酷く親しい暖かさだった。キミはその暖かさが誰のものか知っていた。
「オマエはリエじゃない…オマエは」
キミは振り返った。リエは泣いていた。
しかし、涙に濡れたその瞳は、リエの瞳ではなかった。ナオミの瞳だ。
・キミはその瞳を呆然と見詰めた:157

157:
ナオミはリエの姿を借り、総てを忘れろと囁いている。
「何故…どうして忘れなきゃならないんだ?」
「アナタがリエを殺したから」
その瞬間キミは見た。ナオミの見たリエの死を。弱々しく呻く血塗れ
のリエに駆け寄ろうとするナオミの頬をT・Tの連中が打つ。抑え込
まれ泣き叫ぶナオミの前で、リエに向けられた自動小銃が火を吹く…。
「アナタが来なければ、リエは死なずに済んだ筈なのに…アナタはリ
エを助けることだって出来た筈なのに…」
誰も覗くことは許されない、ナオミ本人でさえ知らないであろう彼女
の意識の底─
キミへの想いとリエの死という現実の間で藻掻く葛藤する姿を。
傷ついたリエを見捨て、結果的に死に追いやったキミ─しかし、ナオ
ミに取ってキミはまたただひとりの大切な存在だった。
総てを忘れて欲しい─それはナオミの想い、意識下の葛藤が生んだ悲
しい叫び…。
ナオミがキミから身を離した。パッと背を向けて走り去る。
「ナオミ!」
ナオミが振り向いた。その顔がパッと明るくなる。
「気がついたのね!」
キミの前に膝をついたナオミが心配そうに覗き込む。
キミはやっと、ここがサイド6であることを意識した。ジオン兵の追
跡が続行中であることも。
─そうだ…こんなことやってる場合じゃない。
下へ降りる階段の前にカセムがいた。
様子がおかしかった。拳銃を持った右腕をダランと垂らし、荒い息を
ついている。体は小刻みに震え、意識不明の呻き声を漏らしていた。
「カセム…」
キミの声にカセムはビクッと体を震わせた。キミがそこにいるのに初
めて気づいたような目をして後退りした。
「来るな…オマエは…」
怯えた声を上げながらキミに拳銃を向けようとした。しかし、右腕は
大きく震えるだけで持ち上げることすら出来ない。
自分の腕を相手に格闘を始めたカセムを見たキミは、彼の狂気の正体
を悟った。
─禁断症状だ…薬を打たれたんだな。
キミは思わずカセムに向け、一歩踏み出した。その脚にカセムがしが
みついてくる。
「オマエが…オマエが!」
両手を首にかけて絞めようとするが、本人の必死な形相にも関わらず、
ただ震えるだけで力が入らない。いきなり誰かがカセムの肩に手をか
けた。カセムがキミから荒々しく引き離される。カセムの体重から解
放されてホッと息をついたキミの鼻先に短機関銃が突きつけられた。
両手を上げながら目を上げると、ジオン兵が立っていた。
「2人一度に捕獲できるとはな。手間が省けて助かった、礼を言うよ」
後ろで鎮静剤を打たれたらしく、グッタリとなったカセムが拘束衣を
着せられていた。
両脇をジオン兵に挟まれたナオミが階段を降りて来た。不安そうな目
でキミを見る。彼女に笑って見せたキミは、下からさらに1個分隊程
の兵隊が上がって来るのを見て肩を竦めた。

キミとナオミ、そして、カセムは軍の特別車に乗せられ、ベイブロッ
クに連れて行かれた。そこでシャトルに乗り換え、宇宙に出る。
そのままかなり長い時間が経った。サイド6の領空はもうとっくに出
ているだろう。
─カセムとオレは部隊も違っていた。ネオジオンがオレたちに共通の
目的を見出すとすれば…強化処理しかない。
しかし、それをナオミに告げる勇気はなかった。
まだ距離はあったが、その独特な丸味を帯びたフォルムでネオジオン
の艦であることは一目で判る。しかし、キミが港で二、三度見かけた
巡洋艦ではなかった。二回り程サイズが大きく、左右にエンジンナセ
ルらしきモノがついている。
シャトルはその艦にグングンと接近し、後部デッキに着艦した。
不安そうな顔をしているナオミを残し、キミはシャトルを降ろされた。
やたら広い艦内を歩きに歩いた末に小さなキャビンに閉じ込められる。
「サザダーンへようこそ」
2人の警備兵に挟まれて立っている派手な軍装の女性兵を見たキミは、
少なからず驚いた。どう見ても16、7の少女だ。
「今後の処遇は、我々ネオジオンに対するオマエの誠実さ如何で…」
「やめなさい」
少女の静かな声に、警備兵が戸惑ったように口を噤んだ。
「ホーソンさま…」
「私ひとりで十分です。2人は外で待っていなさい」
警備兵が出て行くと、少女は小さなソファに腰を降ろした。
「─キミは偉いんだな」
「強化人間に関する連邦の研究資料を収集する責任者だからね」
「オレもその研究資料とやらの一部って訳だ。で、オレをどうする?
カセムみたいに薬漬けにしてポイか?」
「私はね、アナタに興味を持ってるの。アナタはアノ大男とは違う…
そうじゃない?F008さん」
「FISTのメンバーに与えられるFナンバー…かろうじて消却を逃
れ、押収できたムラサメ研の書類の中に番号を見つけた時、正直言っ
てガックリ来たわ。だって一桁のFナンバーを持った男がまだ生きて
いるなんて信じられなかったもの。だから、パンドラを持ってネオジ
オンを翻弄したヘルメスがF008らしいって情報が入った時は本当
に嬉しかったわ」
「アナタは連邦の強化処理の唯一の成功例…カセムや他の失敗作のよ
うな精神異常者とは違うわ」
「カセムは、サイド2で発見した時、既に分裂症的な症状を呈してい
たのよ。薬剤投与や暗示で何とかしようとしたけどダメだったわ」
「ねえ…、アナタの本当の名前を教えて」
「忘れちまったな…キミは何て言うんだ?」
「ミディ…ミディ=ホーソン」
「アナタは人が自らの手で己を進化させることのできた第1号…最強
の戦士…これがどういうことか判る?」
「アナタは人類がニュータイプとして進化するための鍵…」
「私はアナタを離さない…誰にも渡さない…例えネオジオンにだって」
「お誘いは嬉しいけど、オレには先約があってね。それに…」
ミディが去った後、キミはキャビンの中を調べにかかった。しかし、
小一時間隅から隅迄調べても脱出の取っかかりすら掴めない。その時、
いきなり照明が消えて何も見えなくなった。
暫くしてやっとオレンジの非常灯が点く。同時に外で銃声が響いた。
ドアがこじ開けられ、短機関銃を構えたナオミが姿を見せる。
キミがドアの隙間を潜った途端、廊下の向こう側に2人の警備兵が現
れた。ナオミが短機関銃を乱射した。
暫く走ると、左から来た通路が交わった角に来た。丁字の縦棒がぶつ
かった所にエレベーターがあり、今は動いていないそれに代わって横
の壁が開き、上下に急なタラップが続いている。
その時、右の通路をこっちに走って来る足音が聞こえた。慌てて体を
引っ込めたが遅かったようだ。
「いたぞ!」
・左の通路を走って逃げる:010
・丁字の縦棒の通路を走って逃げる:019
・タラップを上に昇る:054
・タラップを下に降る:095
ピンチになったとこで、次週に続きます。
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