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現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

10月5日(水)のつぶやき

2016-10-06 08:05:54 | ツイッター
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皿海達哉「さいごの草野球」野口くんの勉強部屋所収

2016-10-05 08:19:34 | 作品論
 連作短編集の最終作品です。
 いよいよ卒業の日が近づいたころ、ぼくは野口くんが長野県のおばさんの家にもらわれていく夢を見ます。
 夢の中で、ぼくや野口くんも含めて草野球仲間みんなが、別れを惜しんで泣いていました。
 翌日、ぼくは池袋のサンシャイン60(当時は日本一の高さの建物で、今でいえば東京スカイツリーのように人気がありました)にのぼりにでかけます。
 途中の電車でぼくは高校生の不良にからまれますが、どういう偶然か(主人公は最近予知能力を持っている気になっています)電車に乗り合わせていた野口くんが機転を利かして不良高校生に仕返しをしてくれます。
 ぼくは野口くんと妹のミサエちゃんと一緒に、サンシャイン60ではなく、無料でのぼれる新宿の高層ビルへ行きます。
 ぼくと野口くんは、高層ビルの展望室から近くのグラウンドで草野球をやっている子どもたちを発見します。
 守っているチームがあまりに下手で、なかなかアウトが取れないのにしびれをきらしたぼくはビルから降りて行って、監督に頼んで飛び入りで守備につきます。
 ぼくが参加すると、不思議なことに好プレーが続いてあっという間にチェンジになってしまいます。
 家へ帰ろうとしていたぼくと野口くんは、監督のはからいでバッティングもやらせてもらいました。
 帰りの電車の中で、野口くんの家の改築は、おかあさんが新しく始める仕事の作業場を作るためだったということがわかります。
 草野球仲間と手作りした野口くんの勉強部屋は、いまだに健在だったのです(「野口くんの勉強部屋」の記事を参照してください)。
 ラストシーンで、小学校を卒業して中学へ行ってからも、草野球仲間は仲良くやっていけることを予感させてくれます。
 いい意味でも悪い意味でも、三十年以上前の古き良き時代の男の子たちを描いた作品です。
 作中で、両親を含めて大人はほとんど登場しません。
 戦争、飢餓、貧困などの近代的不幸を克服し、日本が経済的に最も安定していた時代なので、草野球仲間に深刻な家庭の問題を抱えた子どもはいません。
 たしかに野口くんの家は母親だけなので、他の仲間たちの家より貧しくて、塾へは通えません。
 でも、それも努力次第で克服できる問題、いやむしろ発奮の材料として描かれています。
 残念ながら、現在は、野口くんたち草野球仲間が過ごしたような良い時代ではありません。
 私の息子たちは、1990年代後半から2000年代前半に少年時代を送ったのですが、そのころでも息子の友だちの中には家庭崩壊などに苦しむ子どもたちがたくさんいました。
 そして、彼らは、今でも就職難や経済格差や世代間格差に苦しめられています。
 そんな時代の子どもたちや若者たちに、児童文学者としてどんなことができるのかを、常に考えていかねばならないと思っています。

野口くんの勉強べや (偕成社の創作)
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偕成社

 
 
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10月4日(火)のつぶやき

2016-10-05 07:33:02 | ツイッター
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佐藤宗子「<脱成長>時代の児童文学(第三回)「読書」形態の危うさ」日本児童文学2015年5・6月号所収

2016-10-04 08:22:15 | 参考文献
 現在の児童文学の状況を議論する場で、子どもの読書量は減っていないがその読書の質が問題であることが指摘されてるとしていますが、それはその通りだと思います。
 子どもたちの読書は、かつてのような知的好奇心を満足させるような読書(それを教養と呼べるかもしれません)ではなく、安易な感動を与える読書(エンターテインメント偏重と言えるでしょう)に変質しています。
 また、それは子どもだけの問題でなく、児童文学の媒介者たち(両親、教師、図書館の司書、書店員など)の読書自体がもっと大きく変質していると指摘しています。
 さらに、このような大人たちを生み出しているのが、皮肉にも、質よりも量を重視したり、感想文を強制する読書運動にあるとの指摘も重要です。
 このような佐藤の指摘自体は非常に重要なのですが、後半に示された現状打破のため解決策(というよりは佐藤自身の願いといった方がいいかもしれません)は残念ながら貧困です。
 解決策を書籍のディジタル化に求めるのは方向性としてはいいのですが、それに対する具体例は、本人が認めているように自身の乏しい経験(しかも研究者としてのそれであり児童文学そのものではありません)に限られており、具体的な提案はほとんど書かれていません。
 この点に関して私見を述べれば、以下のようになります。
 まず、英語圏よりはるかに遅れている一般書と比べてさえ、児童書の出版社のディジタル化への取り組みは非常に遅れています。
 すでに小学校高学年までにスマホが普及している現状を考えるとその対応スピードは遅すぎるので、むしろ業界外部からの児童書の電子書籍化ビジネスへの参入の方が期待できるかもしれません。
 次に、児童文学者及びそれらの団体(日本児童文学者協会、日本児童文芸家協会、日本児童文学学会など)に、ディジタル化に対応できる人材が払底していることも挙げられます。
 もともと文系の人たちの集団ですし高齢化も進んでいるので、ここは外部のITの知識を持った団体なり業者なりの協力を得ないと、ディジタル化の波には対応できないでしょう。
 さらに、現在日本における電子書籍の普及を阻んでいる最大の壁は、テキストをディジタル化することではなく(ほとんどの作家がパソコンで原稿を書いています)、電子書籍の企画不統一と、読者にどのような本が電子書籍で読めるかあるいは読むべきかが紙の本以上に分かりにくい点にあります。
 規格の統一は業界に頑張ってもらうとして、我々ができることとしては、現状の安易なセールスランキングではなく、識者による適切な電子書籍紹介(新刊に限らず既刊の本も含めて)などの地道な活動が、回り道なようでも一番確実な方法だと思われます。
 これらは、出版社や業界団体全体で取り組むべき喫緊の課題です。

「現代児童文学」をふりかえる (日本児童文化史叢書)
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10月3日(月)のつぶやき

2016-10-04 08:15:02 | ツイッター
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10月1日(土)のつぶやき

2016-10-02 08:36:11 | ツイッター
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私をスキーに連れてって

2016-10-01 16:55:55 | 映画
 当時アイドルだった原田知世が主演した1987年の映画です。
 ストーリー自体は他愛のない青春映画なのですが、作ったのが当時若者文化を発信していたホイチョイ・プロダクションなので、一種の若者風俗映画と考えるとなかなか興味深いです。
 当時の日本(特に東京)はバブル時代真っ盛りで、今の若い世代から見ると考えられないほど若者文化は派手でした。
 メインテーマであるスキーを中心に、カーライフ、ファッション、アフター5の過ごし方など、当時の風俗(やや誇張されている面はあるかもしれません)がふんだんに登場し、彼らはいかにも楽しそうです。
 しかし、スマホやSNSでつながり、親しい友人たちと手作りの鍋パーティやバーベキューで楽しんでいる一見地味な現代の若者たちと、どちらがより幸せなのかはわかりませんが。

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津村記久子「ワーカーズ・ダイジェスト」ワーカーズ・ダイジェスト所収

2016-10-01 08:47:10 | 参考文献
 作品論ではありませんが、簡単にあらすじを説明しておきます。
 仕事の話で一度だけ出会った奈加子と重信は、名字が同じ佐藤で誕生日もまったく同じで、来月の1月4日に32歳になることがわかります。
 奈加子はデザイン事務所に勤めていて、副業で飲食店や映画を紹介するフリーライターをやっています。
 といっても、事務所の給料は安いので、両方の収入でようやく人並だと思っています。
 10年付き合った恋人と別れたばかりで、社内の女性や大学時代からの女性友だちとの人間関係にも行き詰まりを感じています。
 さらに、仕事の発注先から執拗な要求を受けて、ひどく消耗します。
 重信は、マンションなどを建てる工務店に勤めています。
 社内の事情で、東京に行ったり大阪に戻ったりを繰り返させられています。
 担当のマンションの建築現場の隣に住む男(小中学校で重信の同級生らしい)から執拗にクレームをつけられて、担当からはずされてしまいます。
 いろいろなストレスが重なったせいか、まだ若いのに生え際の後退とED(勃起不全)に悩まされています。
 奈加子と重信は、一年後の33歳の誕生日に偶然再会します。
 といっても、これはありがちな二人のラブストーリーではありません。
 なにしろ、再会した途端にお話は終わるのですから。
 特に、どちらかがどちらかに好意を寄せているわけでもありません。
 仕事でしんどい時に、(今頃もう一人の同い年の佐藤さんも頑張っているかなあ)と、思うことがあるだけです。
 題名通りに、二人の男女がそれぞれ苦労しながらも、何とか働いていく様子を並行して描いた作品です。
 津村は「ポトスライムの舟」で芥川賞を受賞した後も長く会社勤めを続けていた(純文学の作家の家計は、エンターテインメント系以外の児童文学作家と同様に大変なのでしょう)こともあって、彼女の書く職場にはこの作品に限らず非常にリアリティがあります。
 最近、私は全くテレビドラマを見なくなってしまいました。
 その大きな理由の一つに、ドラマの中で描かれる職場の様子や人間関係があまりにリアリティがない事があげられます。
 「このドラマの原作者や脚本家や演出者は、普通の会社で働いた経験がまったくないのだろうなあ。それならば、きちんと取材すればいいのに」と思うと、ドラマ自体を見る気がしなくなってしまうのです。
 昔の山田太一や倉本聰が書いたドラマでは、職場の場面にもっとリアリティがありました。
 さて、児童文学でも、父親なり母親なりが働く場面をリアリティを持って描いた作品は、非常に少ないでしょう。
 あったとしても、それは農家だったり商店だったりして、実際は仕事の大多数である会社や工場などに努める両親の姿を描いた作品はほとんどありません。
 学校生活で苦悩する子どもたちが描かれることはありますが、私自身の経験やまわりの人たちの様子では、組織の中で働くことはそれよりももっとたいへんなことなのです。
 私が入社した時に、当時の副社長が言った言葉が思い出されます。
「働くということは楽しいことではありません。だから、お金がもらえるのです」
 自分の会社生活を振り返ってみると、働いていて楽しいことや充実感が得られたことも、もちろんたくさんありました。
 でも、苦しいことや理不尽な目に合わされたことも、それ以上にたくさんありました。
 「ワーカーズ・ダイジェスト」の奈加子と重信も、会社生活でいろいろな理不尽なことに遭遇します。
 でも、なんとか、乗り越えるとまではいかないまでも、それらと折り合って生きていく彼らの姿を描くことは、大人だけでなく、子どもの読者にとっても意味のあることのように思えます。
 私自身の創作体験でも、家庭での両親を描いたものはありますが、働いているシーンを描いたことはまったくと言っていいほどありませんでした。
 どちらかというと、子どもだけで閉じた世界を描くことが多かったと思います。
 初めは自分自身の子どもの時の体験をもとに書いていて、子どもたちが生まれてからは彼らの周辺に取材した作品が増えていきました。
 自分の子どもたちが高校生や大学生になったころに初めて、大人と子どもとの共生を描きたいと思うようになりました。
 しかし、結果からいうと、それはあまりうまくいきませんでした。
 例えば、リストラされた父親と少年野球のキャプテンを任されて苦労する小学六年生の男の子をからめて書こうとした時は、いたずらにエピソードが増えて作品が長くなり、なかなか両者がからまっていかないままで未完に終わりました。
 また、うつ病になって病気休職中の父親と学校で周囲からシカトされている中学三年生の男の子を書いた時は、作品は完成しましたが父親の視点で書いたせいもあっていわゆる「児童文学」にはなりませんでした。
 今回「ワーカーズ・ダイジェスト」を読み直してみて、大人と子どもとの共生についての書き方のヒントが得られたような気がしました。
 この作品では、奈加子と重信の視点で交互に書いていくことによって、二人の間にお互い苦労して働いている同士のシンパシーのような感情が芽生えていきます。
 これと同じ手法で、親と子の視点で交互に描いていけば、ともに現実を生きている者同士の共生をもっとうまく描くことができるような気がしています。
 
ワーカーズ・ダイジェスト
クリエーター情報なし
集英社


 
 
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9月30日(金)のつぶやき

2016-10-01 08:33:55 | ツイッター
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