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don quixote at "ballet in de cinema"




2年前位からだったろうか、近所の映画館で "Ballet in de Cinema” というのを上映している。
バレエシーズン中に、ボリショイ劇場やパリオペラ座などの公演を映画館でライブ中継するのである。


わたしがバレエ好きになったきっかけの一つは、6、7歳の頃、ヌレエフとフォンティーンの白鳥の湖を映画館で見たからなのだが、大人になった今、「生」でないというそれだけの理由で "Ballet in de Cinema” には全く興味を持っていなかった。

ところが、先週鑑賞した某バレエ「生」公演にわたしが非常にがっかりしていたため、夫が無理にでも行くようにあらかじめチケットを買っておいてくれたのである。
わたしは「映画館で見るバレエに20ユーロ?たかっ!」(ちなみに一般の映画は9ユーロ)などと可愛いくないことを言っていた...


始まるやいなや...こんなことを書くのは恥ずかしいけれど書く。お嬢さん、年をとると涙もろくなるというのは本当ですよ。わたしみたいにドライな人間でも。

音楽や踊り手のストレートな美しさに圧倒されて、だけでなく、

輝くような美しさや
絶え間ない努力や
精神的な強さや
プロフェッショナルであることや
芸術への理解や

そんな美徳とは無縁で生きてきた自分自身の無念の涙であり、かつ、己に欠けている美徳を備えた人々に対する畏敬の念からである。
わたしがバレエを心から好きなのは自分が麓にたどり着くことさえできなかった人間の美をかいま見することができるからなのだ。


主役の二人は Ivan Vasiliev と Natalia Osipova。
Natalia Osipova は、Svetlana Zakharova らに継ぐ、というだけの修辞を越えていると思う。特に「明るい世界」に属している女(キトリやスワニルダやオーロラ姫)を踊ったらぴか一だ。彼女の「見得」の切り方も好き。
Ivan Vasiliev は初見。ケンタウルスのようなプロポーションに違和感を覚えたものの、すごかったです。豪華な跳躍力。また彼のピルエットはAngel Corellaを思い出させた。


結局、"Ballet in de Cinema” にははまってしまいそうだ。
「生」で見るのとは違うアングルや倍率で楽しむことができるから。安価だし。近所だし。

人生を楽しむコツはあまり条件をもうけないことですよね。
バレエのドンキホーテもそういう人生の喜びにあふれている。
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