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奇跡




あれは8、9歳の頃。

バレエの発表会でデンドラビウムの花束をもらって以来、蘭の花がわたしの世界に入り込んできた。


それまでわたしにとっての「花」といえば、美しくもわかりやすい「薔薇」だったのだが(反対に百合やチューリップは嫌いだった)蘭の花の動物的な(?)大人っぽい魅力に圧倒されてしまったことを今でも覚えている。



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さて、胡蝶蘭は育てやすく(値段的にもかわいらしい)、ワタクシにでも同じ株から何度も花を咲かせることができる。


夫が先日、屋根裏部屋で胡蝶蘭を発見した。

なぜそんな場所に置き去りにしたか全く覚えていないのだが、掃除か何かの時にまぎれたのだろう、おそらく2年近くも暗く乾燥したところで忘れ去られていたようである。

からからに乾燥していたので、もうダメかと思いながらも、とりあえず水を与え、茎を節で切り、日当たりのいい場所に置いた。


そうしたら2週間としないうちに新しい枝がのび、つぼみが4つもつき、真っ白な花を咲かせたのである。
花の専門家に言わせたらあたりまえなのかもしれないが、わたしにとっては奇跡である。

日もあたらないところで完全に存在を忘れ去られ、適当な栄養もなくすごした生き物が、一瞬のうちに生き返る。

森羅万象がすべてその根源と繋がっているという、Theエネルギーの充実を感じずにはいられない。


人間もきっと同じ。

苦しい時、辛い時、この世の終わりと思われる時、しかし明けない夜も、春の来ない冬も、扉のない暗黒の部屋も、決してないのである....


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