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影が踊る -「白鳥の湖」




ヴァシリエフ(Ivan Vasiliev)がジークフリード王子を踊る...しかもコジョカル(Alina Cojocaru)と...

これはすんばらしいカップルの誕生になるか、それとも。

とにかく見たい、見たい、早く見たいと楽しみにしていたイングリッシュ・ナショナル・バレエの「白鳥の湖」だった。

去年の夏にヴァシリエフがナタリア・オシポヴァ(Natalia Osipova)とSolo for Twoを踊った時は、あの彼が全く飛ばなかったので、今度はあのジャンプを見るのも興...というのもあった。


まず、コジョカル、最高のバレリーナだ。
音楽性あり、正確であり、丁寧、「え? 今、何した?」と観客を惑わすような技術あり、優美優美...

欲を言えば、オデットが王子に一目惚れで深い恋に落ちたようには見えなかったのが残念。あ、相手が悪い(笑)?

年末の「くるみ割り人形」では彼女の踊りを心ゆくまで堪能できなかった(クララの踊りがあまり多くないことと、彼女の次元だけがひとり他と違う孤高感で)ので、余計に酔わされた。
3幕目、オディールを演じている場面で、女官役が貧血かなにかで舞台上でひっそり倒れたのさえ、オディールの魔力が指先からつま先から漂うせいではないのか、と思わされるほどだった。


ヴァシリエフは...素晴らしいダンサーであるにしても、彼はジーグフリード王子の雰囲気ではないのかもしれない。しかしながらわたしが見たのは彼の正真正銘ジーグフリード・デビューの夜だったので、これから日が経つにつれて役を磨いていくかもしれない。そう思いたい。

3幕目でロットバルトに「(オディールに)永遠の愛を誓うか?」と質問されて頭をぶんぶん振って「はい、はい、そりゃもう誓います!」と確認するところなど、とても王子様には見えなかった、あれはバジル(ドン・キホーテ)ですぜ...


それでこの優れたダンサー二人がパ・ド・ドゥを踊るとどうなるかというと...

はい、お互い影と踊っているようだった。舞台が進行するにつれ、温まってきた感じは十分したが、それでもお互いがそこにはいない誰か他の人と踊っているような感じ。

あ、でも「白鳥の湖」の物語的にはそれでいいとは思う。「結婚しろとママにせっつかれているのに、僕、まだ誰とも付き合ったこともない...彼女がいないの、僕だけ...」と悩むジークフリードが見た幻としてのオデット。気が遠くなるほどの時間を、永遠の愛を誓ってくれる王子様だけを待ちながら生きてきたオデットの出会うジークフリード...切羽詰者同士、これが影同士の恋でなくて何なのだ? 「シャレード」ですな。もしもそこまで計算されていたのだとしたらすごいなあ(違うけど)。


この日からもう一週間以上が過ぎてしまったが、もう一度月末までに見に行くつもりなので初日感想を書き留めておく。

他にはCystal Costaという、つい近年、ローザンヌで入賞した男性ダンサーがよかった。


(写真はThe Gurdianより)
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