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Brugge Style
4畳半のラフマニノフ
夫は子どもの頃からラフマニノフが大大大好きだ。
お目々にお星キラキラ・ロマンティックで、人をやたらとびっくりさせる音の塊の炸裂、わたしも比較的、好きな方。
ゆえに夫はわたしにさまざまなラフマニノフを聴かせる。
クラシック音楽は好きだが、玄人的な聴き方は全く身についていないわたしにとっては、それらはどれも素晴らしく聞こえる(笑)。まあ、プロの生演奏であったり、CDやDVDになっているくらいの演奏であるからして、シロウトには文句がつけようもない技術レベルではあるのだ。もちろん演奏の好き嫌いくらいは身勝手に言えますけどね。
で、ラフマニノフにかかわらず、一般に演奏に対する批判的な言葉として「感情がこもっていない」という常套句がしばしば使われるのが、わたしとしては気になっていて...
まあ便利な言葉ではあるなあ、程度に思っていたのだが。
実は、汚らしい4畳半位の部屋で、19歳の男性がTシャツに短パン姿で演奏するのを聴いてしまった。
(4畳半だから当然だが)オーケストラなしのピアノ・コンチェルト3番。
段ボールが足下に積み重なり、ピアノには薄汚れた化繊のカバーがずれるようにかかり、汚れた窓ガラスからは外の木が枝を揺らしているのが見え、スープにでも使ったのかセロリの匂いがし、演奏の途中で隣の家からドリルで壁に穴を開けているような音が聞こえた...
たしかに彼の演奏はすごかったけれど、感情がこもっているかどうかはわたしにはやっぱり分からなかった。
しかし「汚い4畳半に象徴される人生のすごみ」状況が、聞き手であるわたしに尋常でない感情を吹き込んでしまったと思う(笑)。
こんな人がいるならば、わたしなんかもうピアノはやめようと思ったし、この4畳半に来るのはこれきりにしなくてはヤバいと思った。
でも抜け目なく、もし生まれ変わったらわたしを絶世のピアニストにしてくださいと、すかさず神様に願ってはおいた...
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