ボイシー日記

手がふさがっていては、新しいものは掴めない。

遠い日を憶う、木山捷平「うけとり」。

2014-06-17 15:28:55 | 
久々に胸がきゅんとなる短編を読んだ。
それは小学生の恋情を題材にした
木山捷平の「うけとり」という短編。

 * * *

貧しい家の小学生たちは、学校が終わってから
家の手伝いをしなければやっていけない。
草刈り、桑摘み、縄綯いなど、
季節などによっていろんな仕事を
子供たちに引き受けさせる。
それが「うけとり」といわれている。

岩助の家は貧しく、母から松葉を籠いっぱいに
集めることを言い渡され、
学校から帰ると山の中へ入って松葉集めをする。
ある日、岩助はいつもの山ではなく、
別の山椒谷という場所へ松葉を集めに行くことを思いつく。

松葉集めをしていると雨が降ってくる。
木陰で雨宿りをしていると、
谷の上から密かに思いを寄せている
一学年下の女生徒セイが下りてくる。
セイもまた松葉集めをしていたところだった。

セイとは、学校でキャッチボールを
しているときにボールが逸れて、
セイの体にあたってしまったことがあった。
その事件以来、学校で出会うと
彼女は恥ずかしそうに肩をすぼめたり、
小走りに駆け出したりした。
岩助は、そんな仕草を見るのが、無上の喜びになっていく。

そして、山椒谷での偶然の出会いのあと、
二人は、また一緒に松葉集めをしようと約束する。
岩助は俄然、松葉を集めることにやる気を出す。
そして二人は山で会って、
グミの実を噛んだり、空豆を食べたりして
あたりが暗くなるまで時のたつのも忘れて過ごした。

そんなことがあって二週間ぐらいしたら
二人の噂が学校に広まってしまった。
誰にも見られてはいないはずなのに。。
そしてセイは山椒谷へ来なくなったばかりか、
学校で会ってもわざと彼から瞳を避けたりした。

そんなもやもやした日が続いたある日、
偶然通りかかったお寺の白壁に
二人に関する落書きが書かれており、
セイがその落書きを消しているところだった。
岩助はセイに代わって落書きを消したが、
そんなことがあってしばらくして、学校の先生から、
お寺の落書きは岩助がしたのではと詰問される。

先生はどんな落書きが書かれていたかを知らないので
それを消していた岩助が犯人だと決めつける。
放課後のことだったから、岩助は早く帰りたいばかりに
自分がやったと言ってしまうが、
激しい憤りがわいてきて、
夢中になって帰り道を歩いていると
寺の白壁のところまで来ていた。

そして岩助は何か書きたい衝動を覚え、
自分を犯人と決めつけた先生と
赴任してきたばかりの若い女教師が
唱歌室のオルガンの影で
ひそひそ話をしていたのを思い出し、
そのことについて落書きをすると一目散に駆け出した。

 * * *

小学生の小さな胸に起こるさまざまなことが
切なく、またどこか懐かしい。

好きな子がいても、なかなか言えなかったり、
二人が仲良くしていると、冷やかされたり。。
みんな、そんなことをして
大人になっていくんだなぁと、感じた。
そして先生への落書きも、やはりわかるよなぁ。
コメント
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