ボイシー日記

手がふさがっていては、新しいものは掴めない。

五味川純平「人間の條件」。

2010-08-11 13:34:39 | 
五味川純平の「人間の條件〈第一部~第六部〉」を読んだ。
なんでも当時1.300万部を超えるベストセラーだったとか。
読みやすく、主人公とともに歩み生きているような感覚で読めた。
戦争という極限状況で、どこまでが人間でありえて、
どこからが人間以下(?)となってしまうのか。
誰もが戦争下では、人間性を失ってしまう。人間でなくなってしまう。
そんな戦争の愚かさがわかる一冊だ。

主人公の梶は、招集免除という条件で、
満州の鉱山で中国人たちの労務管理をする仕事に就く。
現場では中国人に対して理不尽なことが数多く行われるなか、
ヒューマニストとまわりからみられている梶が
ひとり正義を貫こうとするが、組織の中で正義を貫き通すことは厳しい。
そして、中国人たちの逃亡に加担したとして、
招集免除は反故にされ軍隊へ招集されていく。

軍隊では、初等兵としていじめられ、しごきを受け
白いものも、上官が黒といえば黒となる不条理な世界で生きていく。
途中、演習中などに仲間が逃走したり自殺したりする。
やがてソ連国境からソ連軍が攻撃を開始し、部隊は全滅するも
梶をはじめとする数人は、敗残兵として南満州をめざして逃走する。
その途中では、梶も生きていくために、殺人などさまざまなことをしてしまう。

そして、ソ連軍の捕虜となり使役につくも、
かつて妻美千子と暮らした鉱山の町へ、
妻が待っているだろうという思いだけで逃走をする。
帰巣本能ならぬ帰妻本能か。
死が間近にせまったとき、
その先に愛する人が待っているということだけで、
人間はなお生きていける力をもらえる。

最後の解説には、梶が教えているのは
「ほんのちょっとした勇気をもつ」ことだとある。
これはおかしい、どこか変だと思った時、
すぐに行動に移すことは、とてもむずかしい。
長いものに巻かれることが、ときにラクなこともある。
しかし、そこで勇気を持って一言発する、
行動を起こすことが、少しでも大切なのかもしれない。
これは、戦時下でも、平和な現代でも、同じことなんだと思った。

上海リル/川畑文子
http://www.youtube.com/watch?v=tg17u_l9gY8
コメント
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