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恐くて眠れなくなる感染症

2020-05-25 12:50:49 | 日記


先日読んだカミュの「ペスト」と同じ日に買った、
岡田晴恵著「怖くて眠れなくなる感染症」を読み終えました。

このところ、連日テレビに出ずっぱりの岡田晴恵さんの本です。
PHP研究所出版のこの本はシリーズになっていて、
その頭には必ず「怖くて眠れなくなる」が付いています。

と思ったのは間違いで、本当は
「面白くて眠れなくなる・・・」でした。
最初は「怖くて」だとばかり思い込んでいたので、
数学・物理・人体・生物学・・・が、何で怖いの?
とよく見たら「面白くて」だったという訳です。

ただ、この本は「面白くて」ではなく「怖くて」なんです。
23冊中「怖くて」と付くのは、「化学」と、この本の「感染症」だけです。

で、本当に怖くて眠れなくなるのかと言うと、
まさしく本当にそうなります。
人類の歴史と同じだけ感染症は在る訳で、
その死者の数は、世界中の幾多の戦争の死者をはるかに上回ると言ったら、
感染症がいかに恐ろしいか理解できると思います。

と言うか、今まで自分は感染症の網の目をくぐり抜けて、
よく生きてこられたものだとすら思います。
そして、今回やっと、感染症の網に引っかかってしまったのです。
この重大危機を果たしてくぐり抜ける事ができるのかは、
大袈裟に聞こえるかも知れませんが、神のみぞ知るです。

この本は4つの章に分かれています。

➀  近未来に恐ろしい感染症
     エボラ出血熱・・MERS・・ジカウィルス・・デング出血熱・・
     マラリア・・梅毒
➁  世界史を変えた感染症
     ペスト・・コレラ・・黄熱病・・天然痘
➂  よみがえる感染症
     結核・・破傷風・・麻疹(はしか)・・狂犬病
➃  日本で警戒すべき感染症
     風疹・・アタマジラミ・・重症熱血小板減少症・・
     ノロウィルス感染症・・腸管出血性大腸菌O157

全く自然界には何でこんなにも恐ろしいばい菌が存在するのだろうと、
生きてるのがイヤになる気がします。

この4つの中で、最も恐ろしくなるのは、
2番目の世界史を変えた感染症です。
何しろ、それが発生した事によって人がバタバタと死んで行き、
原因が全く分からないのですから、治療法などある筈もなく、
人々はただただ恐れおののき、なすすべなく、
町は死屍累々たる死体の山が築かれ、死臭に覆われ、
全滅する町や村が出る始末。

それが如何に恐ろしいか。
人々は救いを宗教に求めるくらいしか希望を見いだせず、
所が行った先の協会は、牧師が我先に逃げ出して誰も居ないのです。
神にも見放された人々は宗教に絶望し、遂には放棄するのです。

平和な時には牧師は、さもありなんと尤もらしいしかつめ顔で、
人々をある意味、睥睨してエラソーにしてたというのに、
自分の命が危ないとなった途端に手の平を返し、真っ先に逃げ出す。
人々は自暴自棄になり、
宗教はその時点で意味を失い崩壊してしまいました。

540年頃に起こり伝染したトルコのイスタンブールでは、
1日の死者が5000人~1万人に達しました。
また、1348年から1353年までの6年間。
ペストはヨーロッパで大流行しました。
この時のヨーロッパの人口は1億人程度だったらしいのですが、
死者は2500万人~3000万人と言われています。
この流行により、(中世)という時代は終焉を迎えます。

コレラは、インドのガンジス川が発祥で、
6回のパンデミック(世界的大流行)を引き起こし、
全世界で数百万人を殺戮しました。

737年、朝鮮半島に派遣されていた使節団が帰国します。
しかし、彼等は朝鮮に流行していた天然痘を持ち込んでしまいました。
日本でも流行が始まり、それによって奈良藤原氏の4兄弟が死んでしまいます。



この天然痘の悲劇と、国家の安泰を願って、
聖武天皇が747年に建造を始めたのが、奈良の大仏です。

天然痘がどのくらいの人を殺したのか?
少なくとも、人類の10分の1を死亡させたと言われています。
20世紀だけでも3億人が死亡したそうです。
1977年を最後に、天然痘は根絶し世界から無くなりました。
数ある感染症の中で地球上から根絶できた感染症は、
この天然痘だけです。

人類はその進歩と共に未開の地を切り開き、
それ故に、その場だけでとどまっていた菌を掘り起こしてしまい、
過去には無かった新しい感染症が出てきています。

そしてそれらの菌は航空機によって、あっという間に世界に広がり、
昔に比べて広範囲に散らばります。
現代の医療科学は昔とは桁違いに進歩はしていますが、
ワクチンの開発、特効薬の開発となると、
非常に時間のかかる事です。

現在も根絶できずに死者は確実に存在し、
未だに特効薬はなく、これからも新しい感染症はきっと出てくるだろう事を思うと、
人類はパンドラの箱を開けてしまったのかも知れないという恐怖を感じます。




コメント (2)
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