友人が、この(フィルモ)という16ミリカメラを持っていました。
私はてっきり(アイモ)だと思っていたが、それは35ミリカメラの事らしく、
彼のカメラは(フィルモ)だと知りました。
アイモというカメラは当時のニュースカメラマンは、ほぼこのカメラであり、
知る人ぞ知るという有名なカメラでした。
レンズは3本ターレットで、1本のズームレンズではないので、
広角・標準・望遠とその度にターレットを回転させてレンズを切り替えます。
3本のレンズというのは、1本だけのズームレンズに比べて、
レンズを切り替える度に(発色)が変わってしまうという欠点があります。
しかし、彼の撮った映画は実に綺麗な色で惚れ惚れとしたものです。
勿論、映写機も8ミリと違ってとても大きな映写機です。
また、彼は写真とかデザインとかのセンスがとても良く、
彼のデザインが横浜市・瀬谷区の区のマークに採用され、
現在もその区章が使われているくらいですから映画撮りも上手だったのです。
彼の16ミリに刺激され、私も動画撮影を始めました。
と言っても、とても高価な16ミリカメラなどが買える筈もなく、
私が買ったのは、16ミリの半分の8ミリカメラ。
16ミリ・8ミリというのは、フィルムの幅のサイズで、
その当時の劇場映画は35ミリでした。
それが、写真カメラのフィルムになった訳です。
さて、私が買ったカメラは、エルモ・スーパー8
6倍ズームレンズ付きの使い易いカメラでした。
その頃、私は登山に目覚め、北アルプスなどに青春をぶつけていたのです。
そして、山岳映画を撮りたいとなり、
8ミリカメラを持って行ったのが、表銀座縦走コース。
北アルプスの入門コースと言うべき代表的なコースでした。
しかし、新宿から乗った(特急あずさ)でトンデモナイ事が起こりました。
カメラが故障したのです。
私は折角買った指定席券を廃棄して、あずさを降り、エルモ社のある銀座に向かいました。
これすなわち(表銀座縦走)でしたね(泣)
エルモ社で代替えカメラを貸してもらい、再び北アルプスへ・・・
その頃の8ミリフィルムは、一本で3分20秒しか撮れませんでした。
私は25本だったかを持っていったのですが、
それでも83分間しか撮れなかったのです。
25本分のフィルムがどれだけザックの中を占めていたか・・ウンザリする位でした。
憧れの北アルプスを、三脚を使って映画を撮るのは、実にワクワク・ドキドキしました。
しかし、帰宅して現像してみると、
カメラを回すモーターの音が少なからず入っていたり、
シャッターを押す時のカメラ振れが気になる、不完全な映画となっていました。
今でも、その映画は私の家のどこかに有る筈です。
そういった映画を撮ると、なおの事、欲しくなるのが16ミリカメラでした。
特に私が憧れたのが(ボリュー)でした。
良く売れているのは、多分ボレックス、
だったと思いますが、私は何故かボリューが好きでした。
そのカメラで、三脚とか重い物は助手に持たせて北アルプスを撮るのが、まさに「夢」でした。
いつだったか北アルプスの山小屋の玄関口に、
三脚に乗ったボレックスが置いてありました。
一体どんな人がこの3000メートルの山まで、この重いカメラを担いで来て、
どんな映画を撮るのだろうと、気にかかると共に「羨ましい」と心底思いました。
現在では、カメラはデジタルとなり、撮影できる時間は驚異的に伸び、
一本のフィルムで3分20秒なんて、まるで過去の笑い話になってしまいました。
カメラも小さく軽くなり、過去のカメラなど本当に時代遅れになりましたね。
でも、私はあの16ミリカメラで北アルプスを撮りたかったんですね。