「うつろふ」とは、此歌にては、「ちる」をいうのです。花も、人のこころと同じように、花を散らさないようにじっと見つめておったのだすが、その思いとは裏腹に自分の意志とは反対に、散ってしまう、そのやるせないこころは人のこころと同じだと云うのです。その散ってしまう寂寥は人も花も同じだと言うのです。花としても“散りてゐぬる事のならぬもののようにおもふは” それが「うつろふ」と云う詞に込められた情であると云うのです 。
ちょっとばかり理屈っぽくはなりましたが、高尚は言います。「歌の心はその歌う人の情が対象のものにまで入り込んで始めていい歌になるのだ」と。