ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

ピルグリメージ・メソッド

2010年10月24日 18時05分08秒 | 雑記
北極に行って死にたくないので、最近、週末は下半身のトレーニングにあてている(変な意味ではない。足腰のという意味である)。荻田君によると、北極では100キロ以上の重さのソリをひいて、1日20キロ平均の距離をスキーで歩くという。それがどれだけつらいのか、まったく想像がつかないので、とりあえず今日は重い荷物を持って長い距離を歩くことにした。

チャリンコで皇居に向かい、ザックを水で満タンにし、朝9時半ごろから55キロくらいの荷物を背負って、てくてく歩き始めた。東京市民ランナーが無数に横を走る抜けるなか、ぶよぶよの荷物を背負い、ブタみたいにぜいぜい言いながら歩くさまは、さぞかし不気味だったに違いない。途中で昼飯を食べる、昼寝するなどし、なんとか本日の目標である20キロの距離を歩いた。

山ではそんなに長い距離を歩かないので、実に疲れた。足腰が疲れたのもあるが、重さが集中する腰や肩のあたりが痛い。それに加え、15キロを過ぎたあたりから足の豆がきつかった。私は足の形が変なのか、山でもすぐ靴ずれするほうである。下手したら、今日、サードマンが見られるかなと思ったが、さすがにそれはなかった。よしんば見ていたとしても、まわりにはテンスマンかイレブンスマンくらいのランナーであふれていたので、サードマンごときでは気づかなかったに違いない。

訓練としては非常に効果的だ。山に行くよりも、極地への訓練としては、ただ歩く方が向いているのではないだろうか。とりあえず体を鍛えたい多くの人に推奨しておこう。ただ、こうした身体鍛練法は、従来より「ボッカ」と呼びならわされ、日本の多くの冒険家・登山家により肉体強化および精神修養の手段として採用されてきたものの、そんな泥臭い名前では、シトラスミントの香り漂う最近のトレンドには合わない。ということで、これからは「ピルグリメージ・メソッド」と呼ぶことにしたい。「巡礼者的手法」とでもいった意味で、まさに苦行のようなこの身体鍛練法にはぴったりのネーミングだが、そんなことはどうでもいい。横文字であることが重要なのだ。これなら若い女性の方々も受け入れやすいし、ターザンの縦見出しになって、コンビニで売られていても違和感はない。


「こないだ、ピルグリメージ・メソッド試してみたけど、インナーマッスルがしっかりと引き締まるから、基礎代謝率が高まってシェイプアップ効果抜群だよ」
「ほんと、あたしもやってみる」
「じゃあ、日曜朝八時に和気清麻呂像前に集合ね」

そんな会話が丸の内のOLの間で飛び交うことも、そう遠くはないだろう。
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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (けんじり)
2010-10-25 12:28:35
「ほんと、ぼくもやってみる」
北極は今シーズンいくんですか?
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Unknown (かくはた)
2010-10-25 14:04:18
3月に行こうかなと思ってます。
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Unknown (けんじり)
2010-10-28 23:34:32
応援してます。
返信する

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