ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

暗渠の宿など

2011年02月15日 10時46分03秒 | 書籍
暗渠の宿 (新潮文庫)
西村 賢太
新潮社


どうで死ぬ身の一踊り (講談社文庫)
西村 賢太
講談社


苦役列車に衝撃を受け、西村賢太を連続読みする。こんなに読んでいてニヤ笑いが止まらない本は、ジョン・クラカワーの「エヴェレストより高い山」以来である。

西村賢太の小説は簡単にまとめると三本仕立て。風俗に行って性欲を処理しつつ本当の彼女が欲しいと嘆く話と、藤澤清造に対する敬慕の話と、滝の川のマンションで同居した女へのDVの話の三つである。実生活のほうは最悪だが、文体が自分を揶揄的に表現したユーモアのある文体なので、一気に読ませる。

特に滝の川の女の話はまったく最悪で、よくこんなこと書けるなと思いつつも、ページをめくる手が止まらない。それぞれの短編の途中でこの女との最終的な破局は示唆されているのだが、女を殴って逃げられてはまた仲直りをするというのを何度も繰り返し、破局をなかなか迎えず、読者を引っ張る展開となっている。一つの短編を読み終わるたびに、おい、まだこの女と続くのか、と思わず突っ込みを入れたくなってしまう。

また、おんなじようなエピソードがいろんな短編の中でちりばめられているので、この話はこの前の話をあのエピソードね、みたいに読んでいて各短編が連環して繋がっていくのも、私小説ならではの面白みである。読んでいくうちのどんどん世界が広がっていくような深みがあるのだ。

ただ世界が広がっていくと言っても、西村賢太の人生について詳しくなるだけで、べつにフェイスブック的な豊かさがもたらされるわけではないので、そこのところは間違えないほうがいい。あと、西村賢太の小説を持ち上げると、全世界の女性を敵に回すような危惧を抱うのは、わたしだけだろうか。
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7 コメント

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西村賢太!? (suzy)
2011-02-15 12:42:11
>西村賢太の小説を持ち上げると、全世界の女性を敵に回すようなリスクを感じるのは、わたしだけだろうか。

そこまでは思わないけどぉ。。。。

同化しないで下さいませ~。。。。
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Unknown ()
2011-02-15 18:22:07
 う~ん、なんだか面白そうですね。
返信する
おとこの愛に対する人間形成 (フクザワ)
2011-02-15 23:00:07
角幡さんの書籍紹介に、ある匂いを感じてきている。

が、コメントは飛びます。

おとこの人間形成に、特に長男ですが、私はある要因を思う事がある。

乳児期・幼少期における母からの愛。
この愛の形は、おとこの形成に大きく関係する。

思い当たるところはありませんか?

異性を誕生させた事で感じるヒト科雌の、その子に対する愛。

女性も百人十色、気も十色。

母となった女性は、男を産んだ時に感じるその気持ちに、私は思ったのです。
男には判りにくいのです。

角幡さんも、失礼、角幡さんは、でしょうか?
彷徨っているように感じてますが、
如何かな?

愛の彷徨い。
愛は求めるものではなく、捧げるもの。

アーメマー!

返信する
Unknown ()
2011-02-16 01:06:47
上の人のコメントを読みながら、女性も百人十色ってえらく限定されるんやな~と思いつつ…。


女も殴られたから逃げたのにまた仲直りしちゃうところが気になりますね。
破局を迎えられないのも苦だなぁ…。
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女に対して天才なのでしょう (suzy)
2011-02-16 02:15:00
西村賢太のような男って、きっと
他人にはわからない「魅力」と、「男としての可愛さ」と「色気」があるのだと思います。

・・・・なんとなくわかります(汗)

殴った女性には謝り方も半端ないし。
※DVの基本みたいな人ですね!

ただ、世の中こんな男性ばかりになったら困りますが、男性は確かに一読されてはいかがでしょう?

常識抜きで、「男性の本能」だけで見れば、
案外、「憧れの対象」かもしれませんよ。
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あっ、あっ、あなたも読んでるんだぁぁぁぁ (フクザワ)
2011-02-16 22:16:18
私は知らなかった西村健太。

角幡さんを知った以上、西村健太も読むべきと思った。

公立図書館に所蔵しているんだろうか???
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また、やっちゃいました。ごめんなさい。 (フクザワ)
2011-02-16 22:32:48
正:西村賢太

賢い方の賢太で、

健やかの方の健太では無かった。

私の市の図書館の蔵書を確認したので、予約!
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