ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

取り返しのつかない失敗

2012年10月10日 14時43分08秒 | 雑記
近著『アグルーカの行方』の評判が全然みえてこず、最近、次のような不安に苛まされている。

それにしてもアマゾンにレビューがあがらないし、ブログで取り上げてくれる人もあまりいない。おかげでついつい頻繁にツイッターをチェックしてしまう。ありがたいことに重版が決まったので、売れ行きは順調のようなのだが、いったいどうしたことなのだろう?

全然面白くないのだろうか。

でも、服部さんからは珍しく、すげえ面白かったとのメールがきたし、地平線会議の江本さんからも電話でよかったとのお言葉をいただいた。その他にもわざわざ手紙で肯定的な感想を伝えてくれる方もいて、登山や冒険に理解の深い方からの反応は、これまでの作品以上にいいように感じるのだが……。とはいえ確かに中身はかなり堅い内容だ。それに人間とのやり取りがこれまでより少ないので、女性受けはしないだろうな。そうだ、この本は結局、冒険業界向けの本なのだ。分かる人には分かるのだ。いや、まてよ。ついこの前、自分の本は山岳コーナーにしか置かれていないとブーブー文句を言っていたではないか。言っていることがおかしいぞ。

普段はよく、本を書く時は読者にどう読まれるかなど考えていないし、読者受けするテーマを選んでいるわけでもない。自分が書きたいことを、書きたい表現で書いているだけなのだ、などと偉そうなことを言っているのに、実際に本が出るとこのありさまだ。完全に言行不一致である。滅茶苦茶、読者の視線を気にしているではないか。どういうことなのだ!

ネット社会の弊害ですね。

さて、話は変わり、最近の衝撃からひとつ。

実は八月に自宅を引っ越したのだが、その時のどさくさで、普段、原稿や写真をすべて記録している外付HDのACアダプターが見当たらなくなった。机の引き出しの中をごちょごちょ探していると、それっぽいのがあったので、これかなーなどと思いつつ、安易に接続してみたが、電源が入らない。しょうがないので、ヤマダ電器に持っていってみると、「それはパソコンのアダプターですよ」と言われた。

え、それってまずいんじゃないのか?

やばいと思い、家に帰って、また机の中をひっくり返すと、今度は正真正銘、外付けHDのアダプターが見つかった。ほっと一安心して接続すると、やはり電源がつかない。やはり、壊れてしまったのだろうか……。

慌ててメーカーに相談してみると、修理は無料で行えるという。よかったと一安心したのもつかの間、機械の修理はできるが、その場合、中の記録が消去されてしまうので、無くなって困るようなデータがあるなら、専門業者に依頼してデータを取り出してからでないといけないという。

「いくらぐらいかかるんですかね」と訊くと、
「かなり高いみたいですよ」とのこと。

そしてこの程、その専門業者からの見積もりが来た。結果は恐ろしいことになった。データの取り出しは、ファイルごとに指定して行い、その合計のデータ量で値段が決まるらしいのだが、最低価格、つまりどんなにとり出すデータが少なくても、なんと約15万円もかかるのだという。最大だと55万円である。

なんということだ! 安易にパソコンのアダプターを接続しただけで、車一台買える金額がかかるというのである。

HDの中には、過去の作品の全原稿の他、雑誌に書いたエッセイの原稿、ツアンポーや北極の写真、登山の写真などなど、私のここ3年ほどの活動の記録のすべて入っていた。そして他にバックアップをとっていなかった。

バックアップなしの旅が好きだからといって、何も普段のデータ管理でもそれを実行する必要はなかったのだが……。

まだ結論は下してないが、さすがにそんな金は払えない。
さよなら、ぼくの過去。さよなら、ヤルツアンポーの写真。さよなら、今まで決して人目にさらさなかったいくつかの秘密の文章。さよなら、あといろいろいっぱい。

ツアンポーに関していえば、主要な写真はパソコン本体に残っているので、それでよしとするか。でも、どうしよう。まだ迷ってます。

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