ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

神話の力

2010年08月26日 10時06分41秒 | 書籍
神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
ジョーゼフ キャンベル,ビル モイヤーズ
早川書房

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ジョーゼフ・キャンベルの「神話の力」(ビル・モイヤーズとの対談)を読んだ。非常に中身の濃い内容に圧倒された。書いてあることは、死によって与えられる生の意味、またそれによって秩序だてられた社会の原動力、真理といったものは、神話を読むことによって読み説くことができるということ、かな。

小説と評論とジャンルは違うが、最近、傾倒していたコ―マック・マッカーシーの世界観と極めて近いような気がする。やっぱりマッカーシーが一連の作品で描いていたのは、極めて神話的な世界であったということが分かった。アメリカ先住民の話が頻出することも共通している。

冒頭のモイヤーズの序文に紹介された極北カナダのイヌイットの言葉に、とりあえず一発頬をぶたれた気がした。「唯一の正しい知恵は人類から遠く離れたところ、はるか遠くの大いなる孤独のなかに住んでおり、人は苦しみを通じてのみそこに到達することができる。貧困と苦しみだけが、他者には隠されているすべてのものを開いて、人の心に見せてくれるのだ」

私がツアンポー峡谷の無人地帯でうっすらと感じたことは、イヌイットの偉いシャーマンと同じだったらしい。さらにいえば、キャンベルは昔の民話や本を読みまくることで、同じような境地に達したという。

キャンベルは、本を読みまくらなかったら生きている意味など分からないと何度も言っているが、その通りかも。まったく、山の中で死にそうな目に会うくらいなら、神話を読んだほうがよっぽどマシである。


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