ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

北海道新聞「ひと」欄

2010年08月20日 16時56分29秒 | 雑記
本日の北海道新聞朝刊の「ひと」欄で紹介していただきました。どうもありがとうございます。それはそれとして、その後昼ごろになり、取材してくれた記者の方から電話がかかってきた。なにやら神妙な声色である。何があったのだろうか。

記者の方は記事の中で、私が探検したのは「1998年に米の探検隊が踏破するまで空白部分として残っていた約8キロ」と書いた。ところが、これを読んだ読者の方から、この部分に関して、「1998年の米の探検隊はその8キロをすべて踏破しておらず、角幡が探検した時にはまだ空白地帯として残っていたはずだ」という、超マニアックな指摘があったのだという。記者としては、もしその指摘が正しいのであれば記事が間違っていることになるから、いったいどうなのか確認したいということだった。

「それは踏破という単語の意味の捉え方しだいですね」と私は答えた。「米の探検隊は滝を発見しているので、空白部分には入っていますが、全部は行ってない。厳密に言えば、踏破したというのは間違いなのかもしれませんが、まあ、そんな細かいことは、気にしなくていいんじゃないですか(自分でもそんな細部には気がつかなかったし……)。」

それにしても、私の知らない、ツアンポー峡谷の探検史マニアが北海道にいたとは驚きだ。これは、単行本化の際に、さらなるマニアックな指摘をしてくるかもしれないので、心しなければならん!とがぜん身が引き締まった。そして、一応、敵を知り己を知らば、という言葉もあるので、記者の方に「その人は、そんなにうるさいクレーマーなんですか……」と恐る恐る聞いてみると、「いや、実は芦別のご実家のお父様からご指摘がありまして……」。

おやじかよ!(なんで、そんな細かい内容まで知ってるんだ!)「あーそうですか、私のほうから、(先走った行動はとらないように)言っておきます」と笑いあって話は終わった。私に匹敵するツアンポー峡谷探検マニアがいると思い、少しうれしかったのだが、そういうわけではなかった。

親の愛情というやつでしょうか。笑い話にかわり、一件落着。

コメント (3)
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