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ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

北西航路縦断養成マシン

2011年01月20日 18時27分12秒 | 雑記
よく一緒に山に行く、群馬県のSさんからとんでもない贈り物が、佐川急便の営業所にとどいた。北極徒歩旅行訓練用のタイヤである。年末に塩沢に行った時に、極地探検の訓練にはタイヤひくのがいいみたいですと話したら、本当に送ってくれてしまった! おかげで、本当にタイヤをひいて訓練しなくてはならなくなった……。どうしよう。

本日、戸田橋近くの佐川急便にタイヤを取りに行ってきた。でかい! しかも二つもある。ザックにロープでくくりつけ、荒川河川敷まで、チャリンコに乗って運搬したが、大変だった。ありがたいことに、ハーネスからのロープが通せるように、タイヤに穴を開けてくれている。しかもロープつき。おまけに、上に重りを載せても落ちないように、タイヤの真中にコンパネで作った特製の荷台まで作ってある。

風邪気味ではあるが、Sさんの期待にこたえるため、近くの土嚢をタイヤに載せて、1時間ほどひいてみた。タイヤの自重も合わせて60キロくらいであろうか。横の球場で練習している野球部員たちからの好奇の視線が痛い。最初は尻の筋肉に疲労を感じたが、すぐに要領を覚えて、それほど苦痛を感じずにひけるようになった。次はもっと重量を増やしてひいてみよう。

以前、ノルウェーの有名な極地探検家ボルゲ・オズランドがタイヤをひいてトレーニングしている写真を、ナショジオのホームページで見て、こんな大人にはなりたくないなと思ったものだが……。Sさん、どうもありがとう。
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やっと届いた本

2011年01月18日 14時20分36秒 | 雑記
妻と最期の十日間 (集英社新書)
桃井 和馬
集英社


昨晩は探検部OBの太田さんと、フォトジャーナリストの桃井和馬さんと飲む。桃井さんとお会いしたのは二年半ぶりくらい。今年の開高賞の最終選考で当落が分かれたので、会う前は少し気まずい思いがないでもなかったが、別に桃井さんにもそういうわだかまりはないみたいで、楽しく飲めた。書くことは業であるという言葉が重かった。

桃井さんの本は集英社ノンフィクション新書から発売されている。奥さんを突然亡くされた時の体験をつづったもので、涙を流さずには読めない内容である。

Exploring Polar Frontiers: A Historical Encyclopedia
クリエーター情報なし
ABC-Clio Inc


二日前から風邪気味で、飲み会は早めに撤収。昨日は11時間ほど爆睡する。コンコンというノックで目を覚ました。四か月ほど前にアマゾンで注文していたウィリアム・ジェームズ・ミルズ「エクスプロリング・ポーラー・フロンティアーズ」という洋書がようやく届いたのだ。北極と南極の探検に関する辞典で、上下巻あわせて800ページほど。値段は226ドルなので、二万円近い。今までで購入した本の中で一番高額な本だ。注文しても全然届かないので、何度もクレームを出した経緯がある。

こういう重厚な本は本棚に置いた時の存在感に満足してしまい、二度と手に取らないケースがあるので気をつけたい。注文した時はまだ北極探検について勉強不足だったので重宝しただろうが、今となってはだいぶ理解で進んだので必要ないかもしれない。届かなかった四カ月の間に、本の価値はわたしの中で150ドル近く低下してしまった。

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早川荘

2011年01月12日 16時37分57秒 | 雑記
午前中、NHKラジオの「ラジオビタミン」に出演させていただいた。このブログでも事前に告知しようと思っていたが、すっかり忘れていた。集英社の方から番組を収録したものをメールで送ってくれた。さっそく聴いてみたが、自分の声というのは、まったく聴くに堪えない代物だ。たまらず5分くらいで聴くのをやめてしまった。

午後は東京商工会議所のツインアーチという冊子の取材で、大学生の時に住んでいた早稲田の早川荘というアパートに向かう。タテバヤシさんという管理人のおばさんと久方ぶりの再会を果たし、取材スタッフを横で待たせたまま昔話に花を咲かせてしまった。

わたしが住んでいた当時は、早川荘新館という、新館とは名ばかりの四畳半一間のぼろアパートだったが、今ではハヤカワアネックスなる、さらに意味が不明な横文字の、瀟洒な鉄筋コンクリートのマンションに代わっていた。おかげで、わたしの隣の部屋に住んでいた劇団員Mは家賃を払えなくなり、近くの別のぼろアパートに引っ越したという。非常になつかしてく、話がはずんだ。

肝心の取材のほうであるが、東京の思い出の場所について語るという趣旨であったが、よく考えてみると、早川荘に住んでいた時代は、ただアパートと探検部の部室を日々往復していただけなので、特に話すこともなく困ってしまった。大学時代の思い出というのは、その場所でうだうだしていたというのが思い出で、本人にとってはどことなく切ない大事な記憶なのだが、何かが起きていたわけではないので、他人が聞いてもさっぱり面白くないのである。

早川荘ではなく、もう少し別の場所を探すべきだった。
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タワシ

2011年01月06日 22時21分44秒 | 雑記
新年早々、ついていないことが続いている。

まず、ipodを壊してしまった。夜のランニング後、ポケットにipodを入れたのを忘れたまま、ウインドブレーカーを洗濯してしまったのだ。気付いた時は後の祭り。水をしっかりと内部に含み、重さが二倍くらいになっていた。ボタンを押しても反応なし。合掌。

さらに本日、台所のシンクにおいてあるはずのタワシがどこかにいってしまった。タワシがないと三角コーナーの網の目にこびりついた汚い脂分などを落とせない。どこに行ったのか、台所周辺の細かなすき間なども丹念に探したが、どこにも見つからない。どういうことだろうと思い、はっと気がついた。

ひょっとしたら……、ストーカー?

開高賞受賞後、わたしも新聞、週刊誌、ラジオなどのメディアにささやかながら何度か登場させていただいた。その結果、わたしにも幾人かのファンができて、その一部が暴走し、西武池袋線東長崎駅などで密かにわたしを待ち伏せ、追跡し、自宅アパートを突き止め、張り込み、留守時を見計らって侵入、ついには盗みをはたらいた、ということか……。

だが、なぜタワシを狙ったのだろう。確かにわたしの部屋にはこれといって金目のものは見当たらないが、多少努力すれば通帳等もどこかにあるはずで、タワシよりはカネになるだろう。あ、そうか。賊の目的は金銭的価値の高い物品の入手にあるわけではなく、ストーキング、すなわちわたしとのなんらかの触れ合いにあるのだから、銀行通帳よりもタワシのほうが目的に近いということであるのか!

とかなんとか思いながら、朝、三角コーナーの汚い脂分を指でこそぎ落とした。最近、北海道の実家から大量の羊肉が送られてきて、それを毎日食いまくっているので、三角コーナーの脂分は頑固なのである。おまけにわたしのアパートはお湯がでないうえ、冬なので水温も低く、羊の脂分は硬化するので余計落ちにくい。

というわけでタワシが必要なのだが、夜になっても見つからない。どこいったんだろう。

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なにをしにいったのかわからない山行

2010年12月30日 18時23分34秒 | 雑記
28日から三日間の予定で、群馬県のS野さんと南アルプスの塩沢にアイスクライミングに行ってきた。

始発で高崎に行き、S野さんに拾ってもらう。上信越道を走り約3時間、長野の伊那インターを下り、高遠から戸台に向かう道に車を止め、歩き始める直前にわたしがヘッドランプを忘れたことに気がついた。迷った挙句、伊那のホームセンター、コメリまで戻りヘッドランプを購入。そんなこんなしているうちに、この日は予定していた塩沢の二俣まで到達できず、約1キロ手前で幕営した。

翌日、さらに衝撃的忘れものに気がついた。テントを出発し、新雪の積もった、えらい歩きにくい川原を苦労しながら登り、二俣にその日に泊るテントを張る。それから塩沢左俣を登り始めたのだが、F1手前の小さな滝でアイゼンをつけようとしたら、どこかおかしい。靴のコバにアイゼンをひっかけようとしたのだが、ひっかからない。

あれ、このアイゼン、何か足りねえなあ……。あ! よく見ると、靴の前側のコバにひっかける金属の部品(あれ、何て言うんだろう?)が、ない! よく考えてみると、わたしはあの部品を、雪稜登攀用の横爪アイゼンと共用しており、そういえば春に鹿島槍に言った時に、その金属の部品を横爪アイゼンにつけたままだった……。横爪アイゼンに付けた時、絶対におれは次にアイスで縦爪アイゼンを使う時、この金属の部品を忘れることになるんだろうなあ、などと思い至ったことを思い出し、実際、その通りになってしまったことを、南アルプス塩沢左俣F1手前で、よし今シーズン最初のアイスクライミングをするぞ、と群馬県からはるばる車を運転してやって来たS野さんの目の前で知ったのだった。

当然、アイゼンをつけることができなければ、アイスクライミングはできない。ああ、どうしよう、どうしよう。でも、どうしようもねえや。

わたしは現状をS野さんに余すところなく報告。S野さんも、そりゃどうしようもねえなあと笑い飛ばしたので、当面の問題は無事解決とあいなった。ダメもとでダイニーマスリグを切断し、アイゼンにひも状にして縛ってみると、一応、靴に取りつけることができたので、F2まで登り、翌日、下山した。


こんな感じです。リードもしたけど外れなかった。

何をしに行ったのか、さっぱり分からない山行だった。こんなことが二度と起こらないように、今から横爪アイゼンから金属の部品を取り外し、縦爪アイゼンに付け替える所存であるが、でもそうしたら、次に雪稜に登りに行く時、金属の部品がついていない横爪アイゼンをもっていくことになりはしないか心配である。

まあ、金属の部品を買い足せばいいだけの話なのだが。


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夢の女(雪男捜索隊の日記より)

2010年12月22日 19時40分08秒 | 雑記
雪男本のリライト作業のため、雪男捜索隊の時に書いた日記に目を通していたら、「最高の夢を見た」との記述を発見。爆笑した。

夢の中でわたしはどこかの大学のパソコン教室に通っているらしく、そこでミヤザキさんなる女性と知り合った。日記によると、「目が大きく、華奢で、胸と尻の小さな女性」だった。髪は黒くて長く、身長は155センチ程度。「木村佳乃に似ていた。似ているというよりそのものだった」

要はそのミヤザキさんなる女性と、ある日の夕方、突然、恋に落ちるという設定なのだが、その過程がボーイズビーを読んだ時みたいに恥ずかしい。赤裸々にこのブログに書いて読者に笑ってもらおうかと思ったが、やばすぎるので控えておこう。ちなみに木村佳乃は全然わたしの好みではない。

幸せな気持ちのまま夢から目が覚めると、隣に寝ていたのはミヤザキさんではなく、8000メートル峰を三つも登った猛者、ヒゲもじゃのM隊員だった。現実の厳しさに打ちのめされながらも、わたしは「最高の夢を見ました」と彼に報告した。

「どんな夢だ」とM隊員。
「ミヤザキさんという女性とつきあったんです」
「何歳の女だ?」
「28です」
「年齢まで知っているのか!」
「ええ、結婚しましたから」
「下の名前は?」
「わかりません」
「結婚までしたのにか!?」

ヒマラヤまで雪男を探しに行って、なんというアホな会話をしていたのだろう。思わず本の中にこのエピソードを盛り込もうと思ったが、さすがにやめることにした。当たり前か。


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超時代錯誤人間かくはた

2010年12月14日 20時44分59秒 | 雑記
北極に行く前に、雪男本の原稿を仕上げることになり、現在、リライト中。今日は資料を改めて調べるため、国会図書館に行ってきた。ヒマラヤ探検史を調べると必ず名前が出てくる古典、ローレンス・ワッデルの「アマング・ザ・ヒマラヤ」を読み直しているうちに、面白いことに気がついた。

ワッデルのこの本はシッキムのヒマラヤを探検したもので、雪男の足跡の話を世界で初めて紹介したことで有名だ。彼が足跡を発見したくだりを読んでいると、実はワッデルがこの時、一緒にいたガイドが、キントゥプであることに気がついた。わたしの「空白の五マイル」を読んだ人は知っていると思うが、キントゥプはツアンポー峡谷に大滝があるとの噂を世の中にもたらした伝説的探検家だ。

キントゥプのツアンポー探検報告の中には大滝の話があり、それがきっかけで当時の探検家たちはこの滝をさがすことに夢中になった。ワッデルは別の雑誌の中で、ツアンポー峡谷の滝の伝説について書いており、この記事もツアンポーの滝伝説が事実であることを示す補強材料になった(実際には事実ではなかった)。そしてその後、この二人はコンビを組みシッキムを探検、その最中に雪男の足跡を見つけたわけだ。

簡単にいうと、ツアンポー峡谷に大滝があるという伝説を広めたのはキントゥプとワッデル。ヒマラヤに雪男がいると広めたのも、キントゥプとワッデル。そしてわたしはツアンポー峡谷に滝をさがしに行って、それを本にし、さらにネパールに雪男をさがしに行って、それも本にしようとしている……。

百年前の人間と同じことをしている自分に気づき唖然。つくづく自分は1870年くらいに生まれてくるべきだったと痛感した。
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目標80キロ

2010年12月14日 02時42分30秒 | 雑記
日曜は探検部後輩A井につき合ってもらい、藤坂ロックガーデンでアイゼントレ。Ⅲ級、Ⅳ級、Ⅳ級+、Ⅴ級、5・10a(とグレーディングされているが、どう控えめに見積もっても5・8)の各ルートを計8本リードし、満足感を覚える。今週末は八ヶ岳でアイスと思っていたが、錫杖岳で岩登りに変更かな。

月曜は日経ナショジオの伊藤社長の紹介で、BMWジャパンのクルーガー社長と会う。クルーガーさんはドイツ人で初めて南極点に徒歩で到達した冒険家でもあり、極地探検についていろいろと助言してくださった。

「一番重要なポイントは」とクルーガーさん。「もっと太ることだ。そんな細い体じゃあ、すぐにばててしまう。チョコレートとピーナッツバターをがんがん食べた方がいい。わたしは現在85キロだが、南極に行った時は105キロまで増やした。女性の目は気にするな。帰ってきたらもっとやせている」とのこと。

「何かトレーニングはしているのか?」
「1日20キロ走ってます。酔っぱらってない時に限りますが」
「ランニングはみんなやるけど、あまり意味がない。一番いい訓練は、タイヤを引っ張ることだ。北海道に帰って、これから毎日タイヤを三つ、引っ張った方がいい」

説得力のある助言だったが、仕事があるので北海道に帰るわけにもいかないし、東京でタイヤを引っ張ったら、完全に不審者だ。ピルグリメージメソッドも相当あやしいが、皇居でタイヤを引っ張って歩くよりはましなので、時間を見つけて、60キロの荷物を担いで歩くことにする。

午後はマーモットの金さんと打ち合わせ。商品を提供する代わりに広報媒体で露出して欲しいとのこと。自分の活動や執筆になんら影響なさそうなので、引き受けることにした。

クルーガーさんのアドバイスを受けて、夕食の後、寝るまでの間に、チョコレートとリンゴと辛ラーメンを食べる。現在72キロなので、80キロまではなんとかいきたい。
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しんこうえんじの会(仮称)

2010年12月11日 09時53分20秒 | 雑記
朝日新聞近藤記者の音頭で、開高賞を祝うささやかな会を開いていただく。会場は登山家大蔵喜福さんが新高円寺に開いているレストラン「自然食」。集まったメンバーがすごい。九里徳泰さん、竹内洋岳さん、谷口けいさん、廣川まさきさん、朝日、読売各新聞を代表する美人記者YとMなどなど。日本の冒険界を代表する皆さま方を前に主役を張らせていただき、大変、はばかる。未明まで飲み、しこたま酔った。

世界で女性初のピオレドール受賞者谷口けいさんとは初めてお会いした。ピオレドールはその年に最も素晴らしいクライミングをした登山家に与えられるフランスの賞で、ノーベル登山賞みたいなものである。クライミングの内容が素晴らしいだけでなく、地平線通信でいかにも女性らしい、感受性豊かな素敵な文章を書いているので、ファンだった。

会ってみると思った通りの人だったので、絶対に本を書いたほうがいいと強く勧めておいた。基本的に本というのは女性のほうが読む人が多い。山野井泰史やギリギリボーイズや服部文祥が本を書いても、今の山ガールブーム的な大衆心理とは断絶しているが、谷口さんはつながっている。後ろに大きな市場があるので、明らかに売れる気がする。

近藤さんと大蔵さんは、今後、定期的に若手登山家、冒険家を招いて会を開いていくつもりらしい。会の名称をどうしようかという話になったが、全然まとまらず、大蔵さんが「しんこうえんじの会」という、身も蓋もない名前をノートに記していた。


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重版決定

2010年12月09日 11時54分51秒 | 雑記
昨日、朝にラジオの収録、昼に「プレジデント」、夕方に日刊工業新聞の著者インタビューを受け、夜に開高健記念会主催のヴォジョレーヌーボーの会に出席し、2次会、3次会と顔を出し、しこたま酔って帰宅。週に一度くらい、こういう忙しい日がある。

プレジデントの著者インタビューは、ノンフィクション作家でライターの稲泉連君が担当。さすが大宅賞最年少受賞者だけあって、おそろしく本質をついた質問をしてくる。そうそう、その通りと相槌を打つだけで答えとしては十分だったが、それでは記事にならないだろうから、一生懸命補足説明させていただいた。うれしかったのは、今回の冒険をどのように文章化したのかを訊いてくれたこと。変わったことをやっても、それがすぐ文章表現になるわけではないということを、よく知っている。



本の雑誌2011年1月号が届く。北上次郎さんが新刊めったくたガイドのコーナーで「空白の五マイル」を激賞してくれている。特に武井義隆さんの章を気に入ってくれたようだ。見開き2ページのうち、3分の2くらいを、この本の書評に費やしている。「探検記の傑作」との言葉に、思わず家ではばかった。ちなみに同号の「2010年度 わたしのベスト3」のコーナーでは、わたしも「哲学者とオオカミ」「狩猟サバイバル」「ロストシティZ」の3冊をあげさせてもらっている。


「空白の五マイル」の重版が決定。今月下旬に第二刷が発行予定とのこと。ご購入してくださった方々、ありがとうございます。
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魂が引き裂かれそうな苦しみ

2010年12月07日 15時23分27秒 | 雑記
まったく最近ときたら、町を歩けばAKB、テレビをつければAKB、ラジオをひねればAKB、どこにもかしこにもAKBという、いささか不穏な世の中になってきた。もちろんわたしは、AKBなんぞというチャラチャラしたガキどもには元来さらさら興味はなく、AKBかわいいよねなどとバカなことをいう知人に対しては、オレにはわからんと言い続ける側の人間であった。

しかし洗脳とは恐ろしいもので、町でヘビーローテーションを聞いたと思ったら、口では知らず知らずのうちに会いたかったあ、会いたかったあと口ずさみ、コンビニに入れば高橋みなみの「たかみな」なるムックが目に入る、などというふしだらな生活を続けているうち、いつのまにかわたしは、稚内の旅館でFNS歌謡祭なる番組に出演しているAKBをポワーンとした顔で見るような人間に変わっていた。

「かくはたさん、完全に今、顔がうっとりとしてましたよ」と西田君。
「でも、だってほら、48人、勢ぞろいだよ」

あげくの果てには、「やっぱ、大島優子が一番いいよな」と言い出す始末で、西田君に「あんなのどこにでもいるじゃないですか」と言われ、「いねえよ!」と向きになって反論し、「大島優子ならまだ、あっちゃんのほうがましですよ」とかいう会話を交わすまでになっていた。なんでおれたち、こんなにメンバーの名前知ってんだ!?

本日も東長崎駅前のツタヤで中島美嘉様のCDを借りたら、支払いの時、背後のモニターでAKBのプロモーションビデオが流れていた。そして、あー見たい、後ろを見てみたい、とてもふり返りたい、と思っている自分がおり、我ながらその不気味さに戦慄を覚えた。そして、くそ、こんな物量投入によるハリウッド型大衆扇動式宣伝戦略に負けてなるものか、それにモニターを注視することでレジの店員に、あ、この人もAKB好きなんだと思われるのも恥ずかしい、などと歯を食いしばり、魂が引き裂かれそうな苦しみを覚えつつ、なんとかモニターを見ずに家に帰って来た。

AKBは家電量販店と同じで、甲高い声でテンポの良い曲を歌うので、脳に残りやすいという特徴がある。いずれにしても、現代のこのAKB現象は、もしかしたら江戸時代末期に起きた「ええじゃないか」のような大衆運動と同じで、実はわたしたちが時代の末法的雰囲気を敏感に感じ取った結果なのかもしれない。大衆がこぞって富士山に向かうのも、江戸時代末期と共通しているし……。

そんなわけないか。どうでもいい話でした。

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北海道の最北端

2010年12月05日 19時18分31秒 | 雑記
山岳写真家の中では若手ナンバーワンだという西田君に同行し、某雑誌の取材で北海道の名峰利尻山へ行ってきた。

ここ最近、利尻山のライブカメラばかり眺めて日々すごしてきたという西田君によると、利尻山はとにかく天気が悪く、写真撮影の必須条件である晴天に恵まれることはほとんどないらしい。わたしたちが北海道に上陸した11月29日は寒気の影響で海が荒れ、フェリーは欠航。先が思いやられたが、12月2日、奇跡的に快晴に恵まれ、撮影も無事終了し、西田君の数日来の不安も取り除かれた。



利尻山北峰とローソク岩

同日中にフェリーで稚内に戻った後、台風並みに発達した低気圧が北海道に上陸した。飛行機の予約が入っていたのが5日だったので、わたしたちは3日間、稚内で足止めを食らった。暇なので暴風雨の中、観光旅行を決行し、最北端の地、宗谷岬を訪れた。


ℂShozo Nishida

写真は暴風雨の宗谷岬。最果て感たっぷりである。当然だが、この後、風にあおられて傘はぶっこわれた。旅館で借りた傘だったのだが……。信じられないことに、こんな天気の中、しかも平日にもかかわらず、わたしたちの他にも観光客が6、7人いた。いったい何を考えているんだろう? わざわざ鹿児島から来たという夫婦もいて、非常に同情した。



本日、朝日新聞の「ひと」欄に取りあげていただいた。アマゾンで「空白の五マイル」のランキングが急上昇! ノンフィクション部門だと、もはや上にはマイケル・サンデルしかいない。恐るべし、朝日新聞。





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今日から利尻

2010年11月29日 01時31分34秒 | 雑記
昨日、28日のスライドトークは予想以上の40数人の方々に来ていただき、大変、盛況でした。どうもありがとうございます。本も40数冊売れました。どうもありがとうございます。

今日から1週間、北海道の利尻山に取材におとずれるので、ブログのほうはお休みさせていただきます。
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いま子供たちは

2010年11月28日 10時36分12秒 | 雑記
朝日新聞の一面、社会面で「今こどもたちは」という連載が始まった。一回目の「つながる」は、子供の読者モデルと、同じく子供であるそのファンとのつながりに焦点を当てている。わたしたちには分からない、現在の子供たちの世界を垣間見られて、非常に面白かった。

不気味だったのは、ファンの子がインターネットの仮想空間で、憧れの読者モデルと対面するシーン。読者モデルの分身「アバター」が登場すると、待ちに待ったファンの分身から歓声があがり、仮想交流が始まる。こういう感覚って、今の子供たちにとっては普通なのだろうか。ヴァーチャル社会が進展し、質感の伴う人間関係や手触り感のある肉的体験には価値がおかれず、今の社会では数字に変換可能な言語で日常を語ることが当たり前になりつつある。おそらく、幼少期から携帯電話、メール、ネットが当たり前の環境で育ってきた子供たちと、わたしたちとの間には、世界の認識の仕方に断絶がある。彼らは携帯メールの件数やブログのアクセス数というデジタルデータで人間の価値を決めるらしい。

こんな人間ばかりが増えたら、将来ろくなことにならないと思うので、誰かにぜひ、アナログ革命を起こして、情報過疎社会を築いてもらいたい。とは思っているものの、こうした意見をブログなどというケシカラン媒体に書いているところが、わたしのダメなところである。昨日はブログのアクセス数が突然減り、ショックを受けた。

さてと、ぼくの本はアマゾンで何位になったかな~♪
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マルタイ棒ラーメン

2010年11月25日 02時15分59秒 | 雑記
最近、知り合いから、ブログ読んでるよ、と言われることがたまにある。一番反響が多いのが永谷園煮込みラーメンのことで、おいしかったとか、今度食べてみるとかの連絡が絶えない。わたしとしては複雑な気持ちだ。岩登りの話とか、読んだ本のこととか頑張って書いているのに、わたしがやっていることはあまり興味を惹かず、読者が気になるのは煮込みラーメンのことばかりであるらしい。

最悪だったのは探検部の後輩M上で、「かくはたさんのブログで一番影響を受けたのが煮込みラーメンですが、あまりにも期待しすぎたため、思ったほどおいしくなかったです」と言われた。彼には、まず一度、ニンニクと唐辛子を加えて豚肉を炒め、焦げ目がついたところで野菜を加え、しんなりしたら、お湯を入れて麺をゆでて、最後に酢とコショウ、七味を加えたほうがいいと忠告しておいた。M上のように、思ったほどおいしくなかった人は、上記の方法で調理してもらいたい。

というわけで、煮込みラーメンのことは、もう二度と書かない。

代わりに、マルタイ棒ラーメン(しょうゆ味)のおいしい作り方を紹介しよう。お湯を少なめにして、麺をかためにゆでる。刻んだネギとおろしニンニク、ごま油、酢を加え、コショウ、七味を少々ふりかけると、あら不思議。そのへんのラーメン屋よりも、よっぽどうまいラーメンができあがる。夜食に最適である。北極に向けて、今日から夜のランニングの距離を10キロから20キロに伸ばしたが、走行後の棒ラーメンは実にうまかった。

棒ラーメンはかさばらないので、山の食料で持っていく人が多い。家でも食べているというと、バカじゃないかという視線で見られるが、麺にはコシがあり、スープの味もしっかりしていて、インスタント麺としては秀逸だと思う。

お気づきの方もいると思うが、わたしはすべてのインスタント麺に同じ調味料を加える(いや、すべての料理と言っても、過言ではない)。その結果、自分好みの味になるが、全部似たような味になり、それが克服できずに困ってもいる。
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