![]() | 3月のライオン (1) (ジェッツコミックス) 価格:¥ 490(税込) 発売日:2008-02-22 |
二階堂を見て瞬時にそのモデルが誰か分かる程度の将棋ファンである(大崎善生『聖の青春』はもちろん読んでいる)。梅田望夫『シリコンバレーから将棋を観る -羽生善治と現代』の感想にも書いたが、将棋は指すことよりもスポーツ観戦のように観ること主体で関心を持っていた。
過去の将棋マンガでは、『月下の棋士』には違和感が強く、『ハチワンダイバー』は未読。将棋の一ファンとして、本書はとても引き込まれる作品だった。
作者の羽海野チカと言えば『ハチミツとクローバー』であるが、以前は興味がなかった。BSマンガ夜話で取り上げられたのを見て以来読みたいと思っていたがこれまで機会が無かった。アニメや実写も見ていない。従って、初めての羽海野チカである。
BSマンガ夜話でマンガ読みとしてのリテラシーが必要な作品と言われていたが、本書を読んで実感できた。特に帯のように横のラインに文字が入る手法はなかなか独特の感覚がある。
ストーリーはまだなんとも言えない。悪役っぽく登場した後藤が悪って感じでもなかったり、島田がいい味出していたりと徐々に大人に魅力的なキャラクターが出てきて、話の幅が膨らんできた。宗谷名人がどんなキャラクターとして登場してくるのかが今後の注目点だろうか。
一方、香子の造形はやや深みに欠ける印象も。重層的なキャラクターのバランスの中でもう少しひねりが欲しいところだ。
読書メーターのコメントにも書いたが、『ヒカルの碁』の続編的な感覚でこの作品を捕らえている。もちろん、多くの違いはあるが、勝負の結果がすぐに見える形で現れる厳しい世界で、支えてくれる人はいても最後には自分ひとりで戦わねばならない生き方を選んだ人の姿を描いている。年齢や性別は問われない。努力が成果として現れるかどうかは分からないが、結果は全て当人の負うところのものだ。羽生名人が以前語っていたが、将棋は他のスポーツと違い天候などに左右されない。運の要素が極めて少ない勝負である。責任転嫁の許されない厳しい勝負だ。そこで高みを目指そうとする姿はそれだけで見る者をしびれさせる。様々な違いはあれど、その厳しさをキチンと描く限り、この二つの作品は繋がっている。
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