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感想:『ウェブはバカと暇人のもの 現場からのネット敗北宣言』

2010年01月12日 19時21分01秒 | 本と雑誌
ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)
価格:¥ 798(税込)
発売日:2009-04-17


本書の内容は大きく二つに分けられる。
一つは現在の日本のウェブの現状報告である。ニュースサイトの編集長の立場から「バカと暇人」のものとなってしまったウェブのありのままの姿を描いてみせている。まさに現場からのリアルな声といっていいだろう。
もう一つは元博報堂社員としての経験を踏まえた広報におけるネットのあり方といった側面だ。企業が考えるネット戦略とネットの現状とのズレを示した。

ディープなネットユーザーとしては、前者は興味深く読んだものの後者はほとんど興味がなかった。後者を説得力あるものとして描くために前者が描かれているため、企業の広報担当者など以外にとってはそれほど価値のある本とは言い難くなってしまっている。ネットの現状報告としては優れていても、そこから何かが提言されているわけではない。ネットユーザーの視点からは、「それで?」としか言い様がない。

従って、本としての価値はさほど高くない。それでも、リアルなウェブの現場の声としては一読の価値はあるだろう。この本を紹介していたのは、2ちゃんねる系を除けばFF11の最大のコミュニティサイトである「えふめも」管理人氏である。私はしたらばの「ジョブ戦略攻略板」の自治スレも興味深く読んでいるが、これらコミュニティ掲示板の管理の大変さは筆舌に尽くし難いだろう。

私のネットデビューは1997年頃。とはいえほとんどROMだった。コミュニティと積極的に関わるようになったのは2000年から。翌年サイトを立ち上げ、交流サイトとしてそれなりに活況を呈したが1年ちょっとで下火になった。管理人たる私がFF11にのめり込んだのが最大の理由だが、元となったゲームの人気がネタ切れとなったのも原因だった。その後、MMORPGであるFF11を幾度かの離脱はあったものの現在まで続けている。一方、2005年からこのブログをスタートし、主にその更新がネット活動のメインとなった。
小規模ながらも管理人経験は得がたい経験となった。当時と今とではネットの雰囲気は大きく異なり、幸せなウェブ体験だったし、管理人としてのストレスもほとんどなかったものの、反省の想いは今も残る。

ゼロ年代を通してウェブは変貌し、「バカと暇人」のものとなってしまった。良くも悪くも「2ちゃんねる」が国民性と合致しその影響が日本のウェブ全体に拡散と浸透を果たしたといった感がある。スタージョンの法則に、どんなものも90%はカスとあるが、ウェブの場合その比率は更に高まり99.9%はカスと言っても過言ではないだろう。ただそれが悪いわけではない。文化とは大量のカスの上に真の傑作を生み出す作業でもある。
問題は日本のネット界がカスの再生産に血道を上げている現状への不満だろう。ネットというツールによってもっと他の何かを生み出せるのではないかという期待が昔からあるが、残念ながら目立って成功した事例はほとんどない。

本書でも、Web2.0など頭のいい人たちのウェブの展望とリアルなウェブの実感との隔絶を指摘しているが、では、リアルな現場から見たウェブの展望はないのか?と思う。リアルの側がネットリテラシーをキチンと身につければ、現状のウェブはカスばかりでもそう悪いものでもないだろう。気持ち悪い「バカと暇人」が多いのは確かだが、その害はたかが知れている。
ウェブの現状は昔夢見たものとは程遠いものとなっている。それは仕方がないのだろう。その質は進化というより退化というべきなのかもしれない。それでもなおネットの可能性はあると私は信じている。本書を読んでもそれは揺るがない。少なくとも揺るがすほどの内容ではなかった。(☆☆☆)


感想:『天涯の砦』

2010年01月12日 18時15分04秒 | 小川一水
天涯の砦 (ハヤカワ文庫JA)天涯の砦 (ハヤカワ文庫JA)
価格:¥ 777(税込)
発売日:2009-01-24


小川一水はストーリーテラーとしては一流である。だが、一方である種の「古さ」を感じてしまう。

時代が変わっても人は変わらないという見方がある。時代の変化によって人も変わるという見方もある。もちろん、どちらも真実であり、変わる部分、変わらない部分があるという話である。
小川一水のキャラクターは「変わらない」。対称的なのが山本弘で、変わりゆく部分の描き方が印象的な作家だ。小川一水の場合、異世界的な舞台であればその変わらなさは有効に働く。ストーリーテラーとしての本領がそれによってますます発揮される。
しかし、現代と地続きの未来が舞台である場合、それが違和感に変わってしまう。テクノロジーの進化が人の精神面に及ぼす影響を一切無視したようなキャラクターばかりが登場するため近未来という印象を受けない。それが「古さ」を感じる原因である。

ストーリーテラーとしては一流である。だが、キャラクターの弱さが弱点ともなっている。そして、近未来舞台でのこの「古さ」はよりその弱点を強化してしまっている。

本書でもう一つ気になったのは、救援の遅れに対する説明が納得できなかった点にある。人類にとって初めて接した宇宙構造物の大災害で、こう簡単に救助の手を止めたりはしないだろう。宇宙での救援の困難さなど他の理由を提示すべきだったのではないか。

本書は小川一水の魅力が感じられないわけではないが、むしろ欠点が目に付く作品となってしまった印象だ。一気に読ませる手腕はさすがだか、それ以上の何かが伝わってこなかった。やはり小川一水にはワクワクするような冒険譚が似合っている。(☆☆☆)




これまでに読んだ小川一水の本の感想。(☆は評価/最大☆10個)

復活の地』(☆☆☆☆☆☆)
天冥の標I メニー・メニー・シープ 上・下』(☆☆☆☆☆☆☆)
時砂の王』(☆☆☆☆☆)
老ヴォールの惑星』(☆☆☆☆)
第六大陸』(☆☆☆☆)


アニメ感想:おまもりひまり 第1話「猫と少女とアレルギー」

2010年01月12日 17時45分57秒 | 2010冬アニメ
幼馴染の美少女が朝起こしてくれるお約束のシチュエーション。襲ってくる妖から守ってくれる美少女の登場。ハーレム系美少女アニメの典型である。
これほどベタな展開でも最後まで見れたのはテンポの良さがあったから。ヒロインの凛子のメリハリのある性格が作品全体を引き締めている。
ただ主人公の声が合っていない感じがした。また、あくまでもベタな内容で新味はほとんどなく、わざわざ見たいと思うほどの魅力があるかどうかは微妙だ。

おまもりひまり 限定版 第1巻 [DVD]おまもりひまり 限定版 第1巻 [DVD]
価格:¥ 8,190(税込)
発売日:2010-03-26



アニメ感想:聖痕のクェイサー 第1話「震える夜」

2010年01月12日 17時34分36秒 | 2010冬アニメ
最初の5分でギヴアップしたくなった苦痛アニメ。典型的なキャラクター、荒唐無稽な設定、薄っぺらな演出、余りにもお約束過ぎてツッコミをする気力すら粉砕する展開。主人公のサーシャが登場してようやくお遊び的な要素が表れたが、奇を衒った台詞で惹き込もうという狙いはTVアニメの演出としては正道とは言い難い。
今期はエロ主導の作品が多く、この作品もその例に漏れないが、第1話はそれほど刺激的な描写はなかった。エロに頼らなければ差別化できないと思わせるアニメ界の現状だが、こうエロ主導の作品が増えると、その差別化も容易ではない。本作は作品の質は低いが、サーシャの個性でどこまで健闘できるかといったところだろう。

ErrandErrand
価格:¥ 1,200(税込)
発売日:2010-01-27