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感想:『魔法少女を忘れない』

2010年01月02日 18時02分02秒 | 本と雑誌
魔法少女を忘れない (集英社スーパーダッシュ文庫)魔法少女を忘れない (集英社スーパーダッシュ文庫)
価格:¥ 620(税込)
発売日:2009-06


しなな泰之の単発ライトノベル。高校生の少年のもとに、元・魔法少女が妹としてやって来て暮らし始める。その切なさはよく描けている。ただそれが限界という印象も受ける作品だった。
アイディアが斬新というわけでもなく、ストーリーはベタ。切なさを正面から描き切ってはいるが、深みは感じない。

物語を作る際にストーリーが先かキャラクターが先かを感じさせる時点で完成度が高いとは言えないが、本書は明らかに切ない物語を作るためのキャラクターという印象が強い。主人公の男子高校生はゼロ年代男性主人公の典型とまでは言わないが、恋愛への鈍さがいかにもストーリーのための性格付けで、ライトノベルにありがちな安直さが気になった。

本書に描かれた元・魔法少女たちが暮らす施設。一般の人々からは危険視されながら、短い生をただ安らかに過ごすためだけの施設。その設定は、登場した元・魔法少女のキャラクターと共に面白く感じた。その、何も起きないような世界を舞台とした物語を読んでみたいと思ったが、それを描くには相応の力量が必要だろう。