環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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日本の20年先を行くスウェーデンの「高レベル放射性廃棄物の処分」の進捗状況

2010-11-21 16:21:23 | 原発/エネルギー/資源
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去る9月19日のブログ「今日はスウェーデンの総選挙、ドイツは原発回帰に猛反発デモ」を、私は次のように結びました。

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この機会に、原発を運転すれば必ず排出される「高レベル放射性廃棄物」に対する処分の現状を示しますので、合わせてご覧ください。米国のオバマ政権が2009年に、前政権が決定していた「高レベル放射性廃棄物処分計画」を適切でないとして計画変更を決めましたので、現時点では、最先端を行くフインランドとスウェーデンにフランス、ドイツが続くという構図となっています。

今後も原発推進を続ける方針を明らかにしている日本は、2009年に日本の資源エネルギー庁が作成した次の資料によれば、皆さんの期待に反して(?)、高レベル放射性廃棄物の処分の分野ではスイスやイギリスと共に、中国の後に位置づけられています。日本政府の原子力担当の行政機関である資源エネルギー庁が作成した最新の広報資料ですので、誤りはないでしょう。
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この事実を朝日新聞は、独自の取材によって検証していますので、ご紹介しておきましょう。先ずは、最近の次の3本の記事をご覧ください。

成功に導いた「スウェーデン方式」に、世界の熱い視線が注がれる。もう一つの候補地だったオスカーシャム市の地下研究施設には毎週、海外の政治家や原子力関係者が見学に訪れる。エストハンマル市幹部も毎週のように海外に招かれる。10月には、SKB社の幹部が経済産業省の招きで来日し、講演した。

転機の原子力 廃棄物処分場② 候補地選び、信頼築く道は 街頭調査やシンポで探る(朝日新聞 2010年11月12日)
今年8月、先行するスウェーデンを訪ねた秋葉悦子委員は「時間をかけ信頼関係を築いていくことが大切ではないか.スウェーデンでも時間がかかった。遠回りに見えるが確実な道だと思う」と話す。

転機の原子力 廃棄物処分場③ 数万年の安全、どう確保、公募、地学的特徴を問わず(2010年11月19日)
自治体の自発性を重視した全国一律の公募方式。新たな応募がない状況に、その限界を指摘する声も専門家の間にはある。「例えば、長期に火山の影響を受けにくい地域はある。本来なら、より安定性の高い地域を科学的に示すべきでは」と高橋正樹日本大教授は話す。

転機の原子力 廃棄物処分場④ (最終回) 千年以上先へ 伝える責任 処分 柔軟な手段も議論 (2010年11月26日)
現世代は半世紀近く原子力発電の恩恵を受けてきた。生じた廃棄物は世代を超え残り続ける。未来世代にかかわることを、どこまで現世代で決められるのか。こうした「世代間倫理」は、資源の枯渇や地球温暖化など原発を取り巻く様々な環境問題に共通する。
(注:2010年11月26日に追加)


ところで、最初の記事に書かれていますように、経済産業省資源エネルギー庁は10月にスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)の社長とSKBインターナショナル社シニアアドバイザー(元SKB社フォルスマルク事務所長)を招き、東京で「地域と共に歩む、地層処分事業~スウェーデンにおける対話の取り組み~」と題するシンポジウムを開催しました。このシンポジウムは原発の運転に伴って排出される「高レベル放射性廃棄物」の処理・処分に関するスウェーデンの取り組みをテーマとするシンポジウムで、主催は経済産業省資源エネルギー庁、後援はスウェーデン大使館でした。

実はこのシンポジウムは昨年10月27日に浜離宮朝日ホール・小ホールで開催されたシンポジウム「地域と共に歩む、地層処分事業~スウェーデンの取組から学ぶ~」(主催:経済産業省資源エネルギー庁、後援:スウェーデン大使館)の続編でした。

今回のシンポジウムのプログラムは次の通りです。



第1部 基調講演
    わが国の地層処分事業について
    苗村公嗣(資源エネルギー庁放射性廃棄物等対策室長)    
    15枚のスライドを用いたプレゼンテーション「高レベル放射性廃棄物と地層処分について」

    サイト選定と理解促進の取り組みにおけるマネージメント戦略
    クラース・テーゲシュトローム(SKB社 社長)
    45枚のスライドを用いたプレゼンテーション

    地域社会における地層処分事業への関心喚起と信頼構築
    カイ・アールボム(SKBインターナショナル社 シニアアドバイザー)
    56枚のスライドを用いたプレゼンテーション

第2部 パネルディスカッション
論点1 信頼の構築

論点2 共生のための対話

論点3 メディアとの対話、反対派との対話


このシンポジウムに参加した私の推定では参加者はおよそ300人、会場は満席でした。私はスウェーデン大使館勤務の時から現在に至るまで35年以上、日本とスウェーデンの原子力行政をウオッチしてきましたので、第1部の基調講演についてはまったく違和感はありませんでした。

ところが、非常に違和感を覚えたのは第2部のパネルディスカッションです。前出の朝日の記事(2010年11月12日)に登場する苗村公嗣さん、秋庭悦子さんらが参加したパネルディスカッションは「論点1 信頼の構築」、「論点2 共生の為の対話」および「論点3 メディアとの対話、反対はとの対話」の3つの論点に沿って粛々と行われ、終始、日本のパネリストが質問を発し、それにスウェーデンのパネリストが答えるという一問一答の形で進められましたので、わかりやすく、それなりに良い成果が得られたと思います。

しかし、私が驚いたのは、パネリストによる日本側とスウェーデン側の質疑応答が終わった後、コーディネーターがフロアーからの質問を求めたのに対し およそ300人の参加者からはまったく質問が無く(ゼロ)、会場が一時しーんとした静寂に包まれたことです。参加者には原子力関係者も相当数いたはずですが、まったく発言がなかったのはどういうことなのでしょうか。このような場面は、私が環境論を講じているマンモス大学では、時々見かける現象ですが、多くが社会人の参加者と見られる今回のシンポジウムはその意味では異様な感じがしました。


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スウェーデンにおける高レベル放射性廃棄物(NUMO)

スウェーデン資料(NUMO)


今日のまとめとして、11月12日の朝日新聞の記事に掲載されていた図「高レベル放射性廃棄物処分の流れ」、このシンポジウムで配付された資料の中から、今日のテーマに関連する図2点「諸外国における放射性廃棄物の地層処分の状況」と「諸外国における高レベル放射性廃棄物処分の進捗状況」を抜き出して、ここに掲載します。





これら3枚の図が示唆していることは、日本の高レベル放射性廃棄物処分の進捗状況が、フィンランドやスウェーデンよりもおよそ20年遅れ 、スイスや英国と共に、中国より後に位置づけれらていることです。 つまり、日本は原発推進には熱心ですが、原発推進の結果必然的に生ずる「高レベル放射性廃棄物の処分」は原発利用国の中で極めて遅れていることです。なお、米国は上の図「諸外国における高レベル放射性廃棄物処分の進捗状況」では、最先端を走っていたようですが、図中の「*5」が示すように、ユッカマウンテン計画を2009年に撤回しました。


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