酔眼独語 

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田原提訴はゆき過ぎだ

2009-07-17 05:33:29 | Weblog
 拉致被害者・有本恵子さんの安否について、田原総一朗がテレビ番組で「外務省も生きていないことは分かっている」などと述べたことで精神的苦痛を受けたとして、有本さんの両親が田原を相手に慰謝料の支払いを求める裁判を起こした。


 《ジャーナリストの田原総一朗氏(75)が4月のテレビ番組で、拉致被害者の有本恵子さん(失跡当時23)らが「生きていない」と発言したことに精神的な苦痛を受けたとして、有本さんの父、明弘さん(81)と母、嘉代子さん(83)は16日、田原氏に慰謝料計1000万円を求める訴えを神戸地裁に起こした。

 訴状によると、田原氏は4月下旬放送のテレビ朝日の討論番組「朝まで生テレビ!」で、有本さんや横田めぐみさん(同13)について「外務省も生きていないことは分かっている」と発言。夫妻は「外務省高官から聞いたかのような虚偽をテレビで全国に伝えた違法性は高い」と主張している。

 提訴後の記者会見で嘉代子さんは慰謝料目的の提訴でないことを説明した上で「発言の真偽を裁判で明らかにしたい。救出への道筋が見えない中、外務省に(有本さんらが)死んでいると思っている人がいるのなら、北朝鮮としっかり交渉できない」と語気を強めた》=日経NET=

 鵺のような発言を繰り返す田原のいい加減さは目に余る。番組を私物化し、第4の権力の盟主然として振る舞う行為は、もはやジャーナリストなどとは呼べない。上記の「生きていない」発言も、自らの情報通ぶりや取材源の確かさを誇示するためのものだ。「だからどうする」と続けなければ、発言の意図が疑われても仕方がない。

 だが、慰謝料請求訴訟はゆき過ぎだ。言葉には言葉で対抗すべきであって、司法の介在を求めるのは邪道だ。田原と有本さん夫婦では発信力に差がありすぎると考える人もいるに違いない。イコールの立場とは言い切れないが、いまや拉致被害者家族の発言力は相当に高い。田原発言に夫妻が抗議して以来、提訴にいたるまでメディアがフォローしているのはその証左だ。


 「発言の真偽を確かめる」のが訴訟の真意だと有本さんはいう。法廷で真偽が明らかになるのだろうか。事実を把握しているのは北である。田原が情報を得たという外務省筋も「北からそういう話を聞いた」というに過ぎないだろう。

 裁判では「外務省の誰に聞いたのか」なども争点になる。田原もジャーナリストの端くれだから、そんなことをしゃべるはずがない。結局何も明らかにはならないのだ。

 裁判で発言の「真偽」をただすのではなく、直接田原に「真意」をただして追及すべきだ。「外務省も生きていないことは分かっている」…だとしたら、今後の交渉はどう進めるべきなのか。ここが核心だ。

 今回の提訴とは別だが、家族会の一部が右派勢力と関係を深めているのが気になる。蓮池らが離れたのはこうした傾向を嫌気したのではないか。衆院選間近だ。またぞろ被害者や家族会の利用を目論む輩が現れるに違いない。困ったことだ。
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